ラグビーリパブリック

アルゼンチンラグビーのいま ハグアレスの将来は…

2020.06.12

2016年からスーパーラグビーに参戦してきたアルゼンチンのハグアレス。将来は不透明に(Photo: Getty Images)


 新型コロナウイルスの影響で、国内線含む全ての航空便の離発着が9月まで原則禁止されているアルゼンチン。さらに6月に入り、アルベルト・フェルナンデス大統領は外出制限を6月28日まで延長すると発表した。

 体系的な育成システムにも支えられ、ハグアレス(ジャガーズ)は2019年のスーパーラグビーで参戦4年目にして決勝進出、準優勝と大きく存在感を示した。
 しかし、ハグアレスのメンバーを軸としたアルゼンチン代表“ロス・プーマス”がワールドカップ日本大会ではプールステージ突破すら叶わず、アルゼンチンラグビー協会は今後の強化の見直しを必要とされている。

 ニュージーランドやオーストラリアで各国内版スーパーラグビーの開催が決まる中、不透明な状況が続くハグアレスの今後なども含め、アルゼンチン協会会長のマルセロ・ロドリゲスと代表ヘッドコーチのマリオ・レデスマが国内メディア向けにオンラインで会見を開いた。

 ロドリゲス会長が「アルゼンチンのラグビー界は現在、史上最大の困難の中にある」と表現するほど、試合や練習のオプションが限られている。近年は強化のプラットフォームとして、ラグビーチャンピオンシップ(南半球4か国対抗戦)、スーパーラグビー、そして今年から南米のスーペルリーガなど、国内で完結しない大会を主としており、国境の移動が難しくなる今般のウイルスの蔓延で一層の打撃を受ける。

 アルゼンチン代表の活動についてレデスマ ヘッドコーチは、「もちろん政府の方針にも左右されるが、まずはラグビーチャンピオンシップを何らかの形で開催すること、その日程を暫定で構わないから決めること、これらが近々の代表活動のスタート地点となる」とコメント。先日発表した59人のワイドスコッドの選手たちは、神経科学と、スポーツ心理学のワークショップに参加していることを明かし、「昨年のワールドカップで期待に応えられなかったことを受け、プレッシャーのマネジメントも含めて、心身両面から、特にこのような時期は心理的なアプローチでレベルアップを図っている」という。また、「フィジカルに関しては、運動できる庭の有無やマンションで暮らしているなど、トレーニング環境が選手によって異なるため一様には管理できないが、各自がベストを尽くしている」と語り、探りつつ霧中を進んでいることを説明した。

 スーパーラグビーに関しては、従来のような国境の往来を伴う形式では開催が見込めず、アルゼンチン協会の理事とハグアレスの運営を兼任するフェルナンド・リッチ氏が「新型コロナウイルスの感染拡大前の時点ではSANZAAR(スーパーラグビーを運営する南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリア、アルゼンチンの合同組織)との間でハグアレスの2030年までの参戦延長の案が進んでいたが、それも全て一旦無に帰した。現在は、まず2021年の1年間に参加する大会や、具体的な活動の有無まで立ち返ってさまざまな可能性を精査している」と語るように、長期的な参加が見込まれていたものの、足場がぐらつく。

 再開のめどが立たないことから、チームから選手へ、他チームからのオファーを受けることをためらわず、プレーの場を求めていいと通達がいくなど、異例の事態となっている。
 選手に先立ち、ハグアレス躍進の立役者であるゴンサロ・ケサーダ ヘッドコーチは退任し、選手、コーチの両方で長く在籍したフレンチクラブのステッド・フランセと契約したことが発表された。
 FBエミリアーノ・ボフェリやHOフリアン・モントーヤら経験を積んだチームの核への欧州からの興味も報じられる。

 チーム解体というワーストケースをいかに回避するか、正念場を迎えている。

 昔からワールドカップなど大舞台での勝負強さを誇ってきたアルゼンチン。ここ数年で、ハグアレスを含め、代表強化により一層力を入れ結果もついてきている。
 昨年こそ日本での爆発はならなかったが、南米の雄は、プーマのように、ジャガーのように、鋭い目で混沌の先の栄光を見つめる。

Exit mobile version