新型コロナウイルスの影響により神戸製鋼コベルコスティーラーズでのラストシーズンが不完全燃焼に終わっていた世界的スーパースターのダン・カーターが、母国ニュージーランドで現役続行することを決めた。古巣のクルセイダーズへ復帰ではなく、現在、家族とともに住むオークランドを本拠地とするチーム、ブルーズに加入することが6月4日に発表された。
同日、ブルーズのトレーニングに参加したカーターは、地元メディアの取材に対し、新型コロナウイルスの世界的大流行によるロックダウン期間中に2つのことに気づいたと語った。
「家族と過ごす時間が本当に楽しいこと。そして、ラグビーが恋しいと思った」
ニュージーランド代表“オールブラックス”でおもにSO(スタンドオフ)として112キャップを重ね、2011年と2015年のワールドカップ連覇に貢献、ワールドラグビー年間最優秀選手賞に3度も選ばれたことがあるカーターは、38歳という年齢から、神戸製鋼でのプレーを最後に引退するのではないかと噂されていた。
しかし、6月13日に開幕するニュージーランド国内大会「スーパーラグビー アオテアロア」へ向けて準備していたブルーズが、負傷したSOスティーヴン・ペロフェタのカバーとして、カーターにアプローチした。
ブルーズの10番候補には、2016年と2017年のワールドラグビー年間最優秀選手であるオールブラックスの現司令塔、ボーデン・バレットがいるが、ブルーズは経験豊富なカーターを必要とした。
カーターはインサイドセンター(12番)としても優れており、バレットがフルバック(15番)でプレーする可能性もある。
カーターは「私にとっては、若い選手を指導し、ニュージーランドのラグビーに恩返しするチャンス。数か月間プレーしていないので、準備ができるまでには数週間かかるだろう。私の子どもたちが学校に通い、私の家族が現在住んでいる都市でトレーニングするすばらしい機会。ブルーズの才能ある若い選手たちと私の経験を共有するのもいいことだと思っている」とコメントした。
ニュージーランド・ヘラルド紙によれば、神戸製鋼で年間1億数千万円もらっていたといわれるカーターだが、ブルーズでは週に1800NZドル(約12万円)の最低給与で、約10週間の短期契約とみられている。
2015年のワールドカップ優勝を最後にオールブラックスから退いたあと、フランス(ラシン92)と日本でプレーしていたカーターのニュージーランドラグビー界復帰は5年ぶり。
神戸製鋼を15年ぶりの日本一に導くなど、これまで数々のタイトルを手にしてきたカーターは、国代表のテストマッチで通算1598得点、スーパーラグビー通算1708得点を記録しており、いずれも歴代トップという、世界が認めるレジェンドである。