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【ラグビーワールドカップ名勝負】 28年前にあった「静岡の衝撃」の源泉

2020.05.30

1991年の第2回ワールドカップでアイルランドと対戦した日本。敗れはしたが、強豪相手に確かな手応えをつかんだ(Photo : Getty Images)

「静岡の衝撃」含め
アイルランドとは過去3度対戦

 19-12。日本中が固唾を飲んで見つめた一戦で、試合終了の瞬間、歓喜の輪を作ったのは、サクラのジャージだった。

「静岡の衝撃」と呼ばれる2019年9月28日の日本代表×アイルランド代表。ワールドカップ開催国の男たちが、史上初の8強入りへグッと近づいた試合は記憶に新しいだろう。

 世界ランキング2位の強豪を、体格で劣る側がやっつけた80分は、瞬く間に世界に発信された。

 2019年の戦いも含めると、両国はワールドカップの歴史の中で3度対戦している。南アフリカでの開催だった1995年大会では28-50。日本代表はゴール前でのスクラムで2度の認定トライを許すなど、7トライを奪われた。

 パワーで寄り切られたその試合の4年前。イングランドをホスト国(ユニオン)に、その周辺国で試合が開催された1991年大会での対戦が、両国のワールドカップでの初対戦だった。結果は16-32。日本代表は敗れるも、前半終了時、当時チームを率いていた宿澤広朗監督が「後半、先に点を取ればいける」と手応えを感じる内容だった(6-19)。奪った3トライに、敵地ランズダウン・ロードのファンは沸いた。

1991年アイルランド戦で
日本が世界に近づいたと証明した

 1987年に始まったワールドカップに、全大会出場してきた日本代表。2015年大会の初戦で南アフリカ代表に勝つまで、1勝(21敗2分け)しかしていなかった。その唯一の勝利を手にしたのが、この1991年大会のジンバブエ戦。アイルランド戦は、その前の試合で、3戦あったプールマッチの2試合目だった。

 世界ランキングなど存在しなかった時代。トライは4点。ラグビーがプロ化された1995年より前の試合だったから、相手も日本代表も全員がアマチュアという牧歌的な時代ではあった。

 しかし、世界の伝統国が日本との試合に目を吊り上げて臨むことがほとんどなかった時代だったから、ワールドカップは、日本が世界の列強と真剣勝負を戦える貴重な機会。そんな時代にこの試合は、日本ラグビーが世界に近づいていることを感じさせるものだった。

 トライ数は日本が3つでアイルランドが4つ。当時のテレビ中継時に解説を務めていた日比野弘さんは、「内容はスコア以上に競っていたので、本当に残念だった」と試合後にコメントを残している。

 その年のアイルランド代表は、1月から3月におこなわれた伝統のファイブ・ネーションズ(欧州5カ国対抗戦)でウェールズと並んでの最下位(ウェールズと引き分けただけで勝利なしの4位)。ワールドカップへの準備試合として実行したナミビア遠征でも2敗するなど、パッとしないまま大舞台を迎えていた。

 さらに、プールマッチの3試合を1週間のうちに戦う過密日程だったため、初戦のジンバブエ戦から先発を8人入れ替え、次戦の対スコットランドに備えていた。そんな状態のグリーンのジャージではあったが、準々決勝ではこの大会で優勝したオーストラリアを最後の最後まで苦しめる(18-19)ビッグ・パフォーマンスをみせる潜在能力を秘めていた。日本代表戦で10番を背負ったラルフ・キーズは大会の得点王となる活躍だった。

 日本代表戦でもアイルランド代表は、華麗に攻め勝ったわけではない。日本代表のミスなど、わずかな好機を集中力でものにして勝利を手にした。

 日本ボールのラインアウトからこぼれた球をいっきにトライに結びつける。ゴール前スクラムからNo.8ノエル・マニオンがサイドアタックし、そのままインゴールに入った。前半インジュアリータイムには、スクラムのターンオーバーからバックスで攻め切った。そして、後半は効果的に3PGを重ねて勝負を決めた。

 それでも、日本代表の当事者たちが「うまくやれば勝てたんじゃないか」(CTB平尾誠二主将)、「チャンスになった時は凄かったけど、アイルランドは、そんなに強いとは感じなかった」(FB細川隆弘)と感想を口にしたのは、日本ラグビーのスタイルが通用したシーンが多々あったからだ。

見どころは日本の全トライ
連動プレーは“早回し”のよう

アイルランド相手に奪った最初のトライにつながるシーン。SO松尾からFLエケロマに渡ったボールはこの後、大八木を経由して林がトライにつなげた(Photo : BBM)

 ジャパンのトライは、すべて、観る人を喜ばせるものだった。

 前半34分のトライは、ドロップアウト後の相手リスタートキックを受けたところから始まった。SH堀越正己のパスを受けたSO松尾勝博が判断よく縦に出て逆目へ走り、それをFWがサポート。この試合ではFLに入っていたエケロマ・ルアイウヒ、LO大八木淳史、林敏之とボールは渡り、林がインゴールに入った。まるで、早回しの映像を見ているような感覚のスピード感だ。

 後半の2トライにも日本ラグビーのエッセンスが詰まっている。18分のトライは、自陣22メートルライン付近で得たPK機に速攻。SH堀越、SO松尾と渡ったボールはWTB吉田義人へ。左に広いスペースがあるのを見た吉田は、鋭いスワーブでトイメンのWTBジャック・クラークの体勢を崩し、ハンドオフで地面に落とす。そのまま快足を飛ばしてタッチライン際を駆け上がり、サポートの松尾、FL梶原宏之とつないでトライラインを越えた。このトライについては、大会ベストトライに推す人もいた。

 勝負は決していたが、後半37分のトライも日本らしかった。敵陣ゴール前のスクラムでダイレクトフッキング。相手の反応が遅れたところに仕掛け、No.8シナリ・ラトゥ、SH堀越で「左ハチキュー(8→9)」で崩した。WTB吉田が楽々とトライを挙げ、自分たちのアタックが通用すると証明してみせた。

 この試合で積極的に動き、アタックをリードしたSO松尾が28年前を思い出して言う。

「あのときのアイルランドは、当時としては前に出てくるディフェンスをしていました。それを利用して仕掛けたら抜けた」

 早くボールを動かそう。好機を見逃すな。チーム全体にそのスピリットがあったから、司令塔の判断に周囲がよく反応した。

 後半18分に吉田の快走から生まれたトライを思い出す。

「あのときも、彼の前にスペースがあった。だから、(SHを)呼んで、パスしたんです」

 自分も含め、あれだけの独走に何人もサポートプレーヤーがいたのも日本らしかった。

 1989年の宿澤監督就任以来、それぞれのポジションのスペシャリストを探し出し、自分たちのスタイルを突き詰め、相手を分析して戦うサイクルを繰り返してこの大会を迎えた。その到達点が勝利として残ったのは、この大会の最多得点試合となるジンバブエ戦(52-8)だけだったが、アイルランド戦で日本が輝いた時間は、ラストゲームの爆発を予想させるものだった。

 林、大八木の強い当たり。堀越の高速のボールさばき。そして、吉田のワールドクラスの走り。何度でも言うが、日本のアタックは、本当に早回しの映像のようでおもしろい。

 長袖ジャージを無造作に切ったような、アイルランドの選手たちの半袖ジャージにも時代が感じられる。見終わった時、80分があっという間に過ぎたことに驚くだろう。



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ゲスト解説: 堀越正己 / 解説: 吉田義人 / 実況: 住田洋

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>7⽉5⽇(⽇)午後2:00[WOWOWライブ]

・2007年⼤会 カナダvs⽇本
>7⽉12⽇(⽇)午後3:30[WOWOWライブ]

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>7⽉19⽇(⽇)午後0:15[WOWOWライブ]

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>7⽉23⽇(木・祝)午後0:30[WOWOWライブ]

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>7⽉23⽇(木・祝)午後2:30[WOWOWライブ]

・2019年⼤会 ⽇本vsアイルランド
>7⽉24⽇(金・祝)午後0:30[WOWOWライブ]

・2019年⼤会 ⽇本vsスコットランド
>7⽉25⽇(土)午後0:30[WOWOWライブ]

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>7⽉26⽇(日)午後0:00[WOWOWライブ]

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解説: 薫田真広 / 実況: 鈴木健

・1995年⼤会 南アフリカvsニュージーランド
>7⽉5⽇(⽇)午前11:30[WOWOWライブ]

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・2007年⼤会 イングランドvs南アフリカ
>7⽉23⽇(木・祝)午前10:30[WOWOWライブ]

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>7⽉24⽇(金・祝)午前10:30[WOWOWライブ]

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・2019年⼤会 イングランドvs南アフリカ
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