2020年シーズンからスーパーラグビー、チーフス(NZ)の指揮を執るウォーレン・ガットランド監督は、2021年に南アフリカへ遠征するブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズの指揮官を務めることも決まっている名将だ。
ガットランド監督は、テストマッチ出場こそないもののオールブラックスに選ばれた経験を持つ。1988年の豪州ツアーから代表に選ばれ、ミッドウイークゲームなどに出場。1991年までに17戦に出たものの、同年秋のワールドカップのメンバーには選ばれなかった。
1995年シーズン開幕前に現役引退を表明するまでにワイカト代表HOとして140戦に出場。同代表やニュージーランドXVの主将も務めた。リーダーシップがあった。
NZ国内で指導者の道を歩み始めたのを皮切りに、欧州のクラブで経験を積み、アイルランド代表の監督を1998年から2001年まで務めた。
2005年から2007年まではワイカト、チーフスの指導にあたるも、2007年からはウエールズ代表監督を務め、2011年ワールドカップでは母国・NZの地で真紅のジャージーを率いて戦った。
ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズの指揮もすでに2度執っている。昨年のワールドカップまでウエールズ代表を指導し、今季からチーフスを指導している。
下記は、2011年に発行されたラグビークリニック誌のインタビュー『COACHING MY WAY』からの抜粋だ。
【ウォーレン・ガットランドの金言】
「学ぶことを忘れてはいけない。ラグビーは常に変化しています」
「私はHOというポジションだったこともあり、ラグビーは分からないことだらけです。自分のコーチングスタイルがあるとすれば、選手と対話することを重視していることでしょうか。選手が異を唱えることも問題ありません。意見を求められても、『私には答えられない。自分ではどう考えているんだ』と聞き返すことだってある。とにかく選手や他のコーチとともに、一緒に解決策を見つけていくのです」
「こんなことがありました。ロンドン・ワスプスで監督をしていた時代、ハイネケンカップの決勝戦前日のことでした。クラブの女性スタッフに、『あなたはチーム内でどんな仕事をしているの?』と尋ねられました。それは自分にとっては、いちばんのほめ言葉と感じました。選手たちが主役で、自主的に考え、行動できるチームを作れた証だと思いました」
コーチングスタッフ間の付き合い方を問われて。
「ともに楽しみ、あまりシリアスになりすぎず、笑顔で一緒に仕事ができる雰囲気であることが何よりも大切だと考えます。一緒に飲みにいくこともないようなコーチングチームは、うまくいっているとは言えないでしょう。お互いへの尊敬が大切です。役割分担や目標設定は大切ですが、柔軟性も大事。とにかくよく話すことが必要です」
「コーチとして常に心がけていることは、選手が正しい選択肢を選ぶ手助けをすること。自信をつけさせることです。いろんな局面で、様々なプレーから正しいものを選択するには、選手のフィットネス、スキル、知識もそうですが、人間性や精神力も無縁ではありません。また、チームの方向性、つまり、どうやったら勝てるのか。それを示してあげることも重要です。
そのとき、分析も助けになる。問題がどこにあるか示すことができるからです。誰でもミスやエラーをする。例えば正しいプレーを選んだにも関わらずエラーをしたのであれば、スキル、あるいはフィットネスに問題があると選手も気づく。判断力はほめられていいのです」