ラグビーリパブリック

ラグビー金言【6】ここに俺のラグビー部があった。

2020.05.07



 2008年にベストセラーとなった書籍を覚えていますか?
 1位の『ハリーポッターと死の秘宝』に次いで売れたのが『夢をかなえるゾウ』だった。
 その『夢をかなえるゾウ』の著者、水野敬也さんはラグビーマンだ。愛知・東海高校時代に楕円球を追った。FBなどでプレーした。

 テレビドラマ化もされた『夢をかなえるゾウ』の発表後も、『人生はワンチャンス!』や『人生はニャンとかなる!』などヒット作を世に出した水野さんは、東海中学時代は野球部に入り、2年生のときからバドミントン部へ。高校に入ってサッカーを始めたが、高校2年時にラグビーと出会った。
「どの部に入ってもレギュラーになれず、つまらなかった。で、サッカー部で練習していたある日、同じグラウンドのラグビー部の人数を数えたら15人ギリギリ!」
 これなら出られる、と思い立ったらしい。

 サッカー経験が生き、入部直後からラグビー部でプレースキック、パントが一番うまかった。周囲がすぐに、「使えるじゃないかコイツ」となったのが気持ち良かった。
 OB戦で先輩にタックルをした。足首を刈ると喝采を浴びた。
 キック力を買われ、FBで出た試合だった。あるプレーで簡単にキャリーバックをせず、大きく回り込み、22メートルライン付近まで走ってタッチキックを蹴ったら、試合後に「チームのことを考えているのは水野だけ」とコーチに褒められた。
「テンション、上がりまくりです。もう、ラグビーは神でした(笑)」

【水野敬也さんの金言】

「体が小さい部員たちに、コーチは『足首にタックルしろ』と口酸っぱく言っていました。でも、誰もやっていなかった。僕はそれまでの部活での恵まれない4年間があるので、足首にタックルに入るだけで試合に出られるのなら、と(考え、実行した)。そこに必要とされているのは筋肉や経験ではなく『意志』だと思ったんです。スポーツって、運動神経とか、体の大きさとか先天的なことが大部分を決めると思っていたけど、ラグビーは違った」

 大学時代は、モテる方法を考えてばかりだった。顔は変えられないけど、オモシロクはなれる。そう考え、お笑い芸人の映像まで研究した。でも、うまくいかない。
 ならば、と本を書こうと思った。文章を考えたら、次々とギャグを思いつく。芸人の研究などを積み重ねたことが、別のところで活きた。
「あ、ここに俺のラグビー部があった、と思いました。なにかに頑張っていたら、社会は受け皿を用意してくれるのかも、と。昔から僕はモテなくて、イケメンばかりがモテる気がしていた。でも、最初から与えられているものがなくても、みんな何か(良いところ)を持っていて、人生のどこかで受け皿と出会える。サッカーでダメだった僕が、ラグビーで重宝されたのも、そのひとつ」

 ラグビー活性化の妙案を問うと、「いろんな部活の幽霊部員はみんなラグビー部へ!」と話した。
「いろんな人間にお情けでポジションが与えられるのではなく、それぞれの特性を活かせるものが役割としてある(のがラグビー)。社会も、本当はそうあるべきでしょう。たとえば昔、老人は神聖なものとして、ちゃんと役割があった。日本はラグビー的な世の中になるべきだと思っています」

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