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転んでも、すぐ起き上がる。竹本竜太郎[サントリー]の悔いなき9年

2020.04.27

2011年に入社。ラストゲームはトップリーグ2020の第6節、2月22日の日野レッドドルフィンズ戦。後半22分から出場した。(撮影/松本かおり)



 9年在籍し、トップリーグ(カップ戦を除く)や日本選手権でプレーして得たサンゴリアス キャップは14。31歳の竹本竜太郎(CTB)が、2019-2020年シーズン限りで引退した。

 脇健太GMからの電話を受けた瞬間に話の内容を察し、「心の準備をした」と思い出す。
「GMと話しているときには、さすがに感情が揺れました。誰にでも、あのとき、ああしとけばよかった、こうしとけば…と、ちょっとしたものはあるでしょう。私もそうです。ただ、大きく考えると悔いはない」

 慶大時代は主将を務めた。持っている力を思えばサンゴリアスでの通算14戦は少なく感じるけれど、「GMにも言ってもらいましたが、9年も在籍できたのは必要とされていたからと理解しています」と話す。

 チームは生き物。そう思っている。
「例えば(力のある人から)ベストの23人を集めたら試合に勝てるのか。答はノーだと思う。長いシーズンの中では、チームにほころびが生じたり、ケガ人も出るでしょう。そんなとき、見えないところで誰がどういう動きをするのかが大事」
 チームには、そんな時に真価を発揮する人間が必要だ。
 練習時、良い空気を作る。急遽試合出場機会が巡ってきても、チームプランを遂行できる男が。

「僕が(試合に)出た時にサントリーのラグビーができるのか、と問われれば、できる。サントリーは全員が普段からハードワークしているので、誰が出てもやれる。そしてグラウンドの外でも、家族を含め、チームがまとまるような空気を醸成してきました」
 竹本は、そこにも欠かせぬ存在だった。

 サンゴリアスのチームカルチャーが好きだった。
 選手たちを1軍、2軍に分けるのではなく、チームはいつも、その週の試合に出るメンバー、ノンメンバーで構成されている。練習試合が予定されている週なら、日々の練習はその一戦への出場予定メンバーにプライオリティーが置かれる。
 ノンメンバーは対戦相手になり切る。本気の攻防練習がおこなわれる週の半ばには、試合メンバーを倒す気持ちで対峙する。
 そうだから、常に優勝を争うチームでいられた。そんな中で試合メンバーに選ばれるのが誇りだった。

 最後の試合出場は、チームの今季最終戦となった日野レッドドルフィンズ戦。「ボールを持ったのは5回か6回でした。いい判断、いいキャリーができた」と回想する。
 サンゴリアス在籍中のもっとも忘れられない試合は、2018年11月24日におこなわれたトップリーグカップのプールマッチ最終戦、上位トーナメント進出を懸けたNTTコム戦(金鳥スタジアム)だ。前述の14キャップの中に入っていないのがこの人らしい。

 最強メンバーを揃えてきた相手に33-26と競り勝った。こちらは、その時のベストメンバーではあったが、いろんな立場の選手がピッチに立っていた。
 竹本は前半途中、アマナキ・レレィ・マフィにタックルしたときに右手甲の骨を3本折った。しかし、後半17 分に塚本健太と交代するまで体を張り続けた。
「片手でパスを受け、片手でボールを持って前へ出ました。全員がハードワークし、勝ち切れた。チームを誇りに思える試合でした」

 チームマンだ。仲間と遮二無二戦って得た勝利が忘れられない。
「引退という文字が頭に浮かんでいた頃でもあった。負けたら次へ進めない。このチームでのプレーが最後になるかもしれない。そう思い、やり切る、やるしかない、という気持ちになったから、ああいうプレーができた。いろんな感情が入り混じった試合でした。(ラグビーは)メンタリティーが大事と、あらためて思った」

 長崎ラグビースクールに入ったときから始まったラグビー人生は28年に及ぶ。
 長男・真之輔さん、次男・隼太郎さん、三男・政次郎さんに続く末っ子。4人とも同じラグビースクール出身で、長崎北高で楕円球を追った。「ラグビーで生涯の友と出会ってきました」と振り返る。
 そのうちの一人が慶大時代の同期、杉田秀之さんだ。練習試合中に頚椎を損傷して四肢に麻痺が残るも、長く思ってきた「仲間と富士山に登る」夢を昨年実現させた。竹本も同行した。
「挑戦しようとする人がいたから、仲間たちはみんな一致団結し、協力する。杉田は、僕らに本当に貴重な経験をさせてくれた」と感謝の言葉を口にする。

 友との出会い、優秀な指導者たち(エディー・ジョーンズ、大久保直弥、アンディー・フレンド、沢木敬介、ミルトン・ヘイグ)に受けたコーチングと、多くの財産を得た人生。まずは社業に専念も、ラグビーには関わっていきたい。
 将来は、自分が教わってきた理論だけでなく、ラグビーの価値も伝えていけたらいいな。そう思っている。

 7年目(2017-2018年シーズン)の最後、日本選手権決勝。パナソニックとの接戦を12-8で制し、頂点に立った。
 プレーする機会はなかったが、23人に選ばれてベンチに座り、ピッチにいられた感激は忘れない。「あの瞬間があるから、悔いなし、と言えるのかもしれません」。
 そのときの仲間、スタッフの笑顔を見て、本当にいいチームと思った。

 これからも大切にしていきたいことがある。
「優秀な指導者たちから教わったことは、学び続けることの大切さ。これは選手としても大事なことでしたし、これからの人生でも同じ。仕事にも、もう一度フレッシュな気持ちで取り組みます。
 そして、リロードを忘れない。ラグビーも、人生も、何度転んでも、すぐに立ち上がり、動くことが重要です。しっかり準備し、挑戦しても、うまくいくこともあれば、ミスするときもある。うまくいかなくてもすぐに起き上がり、また動く。その結果、相手よりいいプレーが多ければ勝負にも勝てる」

新型コロナウイルス感染拡大という、予想もしなかった事態の中で突然終わったラストシーズン。でも、自身の人生を振り返って思う。サントリー入社後、4年目から3季続けて公式戦出場ゼロの男だって悔いなき日々を送れたのは、前向きに生き続けたからだ。
「終わらない夜はない。雨のあとに、虹はかかる」
 困難に向かって仲間と歩めば、やがて平穏な、おいしくビールを飲める日がきっと訪れる。

現在はテレワークの日々。営業マンとして社業に専念する


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