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アルゼンチンは2027W杯招致を断念か 会長選控える同国英雄ピチョット氏は豪州支持を表明

2020.04.17

ラグビーワールドカップ2019、花園で応援するアルゼンチンのファン(Photo: Getty Images)


 南米初のラグビーワールドカップ開催を目指し、2027年大会の招致レースで有力候補のひとつとみられていたアルゼンチンが、入札を断念する見通しであることが明らかになった。同国の英雄で、ワールドラグビーの現副会長であるアグスティン・ピチョット氏がオーストラリアの『デイリー・テレグラフ』紙で語った。

 2027年のワールドカップ招致には、オーストラリアも立候補している。

 1995年から2007年にかけてアルゼンチン代表SHとして71キャップを重ね、キャプテンとしても大きな存在だったピチョット氏は、ワールドラグビーの副会長になってから新たな国際大会(ネーションズ・チャンピオンシップ=計画中止)の創設を推進するなど改革に積極的で、今年5月12日におこなわれる会長選挙に立候補している。選挙で対決することとなるビル・ボーモント現会長はかつて、2027年のワールドカップは新興国での開催もあり得ると示唆していたが、ピチョット氏はデイリー・テレグラフ紙のインテビューで、「我々はオーストラリアとそれ(ワールドカップ2027の招致)について話し合い、パートナーと競争するのは良くないと思った。オーストラリアがより強力なプロジェクトを抱えており、オーストラリアにそのまま進めてもらうことにした」と語っている。

 アルゼンチンはオーストラリアやニュージーランド、南アフリカとともに、ラグビーチャンピオンシップ(南半球4か国対抗戦)やスーパーラグビーを運営する合弁事業のSANZAARに参加している。

 アルゼンチンが2027年のワールドカップ招致を断念することにより、一部の海外メディアは、オーストラリアラグビー協会はワールドラグビーの会長選でピチョット氏を支持するだろうと報じているが、権力争いに関する憶測はさておき、アルゼンチンが2027年を避けた方がいい理由はいくつかある。

 南米、北米のラグビー事情に詳しい『Americas Rugby News』によると、ラグビーワールドカップ招致に積極的だったアルゼンチンのマウリシオ・マクリ前大統領が再選を目指した2019年の選挙で敗れたことも、勢いが失速した要因のひとつとみられている。現職のアルベルト・フェルナンデス大統領は、スポーツや経済を生み出す機会ではなく社会的プログラムに焦点を当てていることから、2027年よりも2031年または2035年がアルゼンチンにとって現実味があるという。

 また、サッカーのワールドカップが2030年に100周年を迎え、第1回大会のホスト国であるウルグアイがアルゼンチン、パラグアイ、チリと共同開催を目指しているため、その3年前にラグビーワールドカップのホストになることはアルゼンチンにとって最善の方法ではない。

 しかしながら、ラグビーワールドカップ開催には莫大な費用がかかるものの、2019年の日本大会はチケット収入が当初の想定を大幅に上回り約68億円の黒字が報告されており、この成功はアルゼンチンにも希望を与えたはずで、2031年以降の南米初開催は十分に考えられる。

 一方、オーストラリアは1987年の第1回ワールドカップをニュージーランドと共同で開催し、2003年大会は単独でホストを務めた。2027年大会の招致に成功すれば、24年ぶり3度目の開催となる。
 現在、オーストラリアラグビー協会の財政状況は厳しく、新型コロナウイルス感染拡大による影響で2020年に国際試合などがおこなわれない場合、1億2000万豪ドル(約81億円)の損失を予測している。そのため、7年後とはいえ、ワールドカップ開催による巨額の利益はなんとしても欲しいところだ。

 2027年のラグビーワールドカップ開催にはロシアも立候補しており、2023年大会の招致合戦でフランスに負けた南アフリカも手を挙げるのではないかとみられている。

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