国際リーグのスーパーラグビーへ日本から挑むサンウルブズの臼井智洋アシスタントS&C(ストレングス&コンディショニング)コーチが4月13日、オンライン取材に応じ、スーパーラグビー参戦5季目のチームの様子や大学生選手への所感、シーズン中断を受けての新施策について語った。
「あ、やばい」
就任1季目の臼井コーチが心でつぶやいたのは、チームが始動した1月上旬だ。
当時トレーナーとして携わっていた早大が大学選手権決勝を間近に控えており「数日だけサンウルブズに参加し、(早大に)戻る」というスケジュールで稼働していたが、各国から集まった狼軍の戦士の体力数値は芳しくなかったようだ。
しかし、千葉、大分、福岡のキャンプでのタフなセッションを通してコンディショニングは向上。その過程を、臼井コーチはこう振り返る。
「市原の合宿でも別府、福岡でもそうですが、ハードにやるべきことはしっかりやった。もともとサボるような選手はいなかったですし、チャレンジした分、リカバリー(疲労修復)もしっかりやってくれた。けがもそこまで多くなく、開幕戦への準備ができた」
2月1日の初戦ではレベルズに36-27で勝利。以後は白星を積み上げられずにいたが、「いろんなことを勉強させてもらった」と臼井コーチ。元イングランド代表CTBのベン・テオ、元南アフリカ代表SHのルディー・ペイジらの自己管理能力に触れ、刺激を受けた。
「経験の長い選手は『自分のパフォーマンスを維持するのにこういうものが必要』という『自分の形』を熟知していて、ウォーミングアップ、休息の過ごし方などが確立されている。テオはリカバリーの日も身体を動かしたいということでジムを開けられないかの相談をしてきましたし、ペイジもウォーミングアップとエキストラのトレーニングにしっかり時間を取っていました。僕も、選手が自分の『自分の形』を見つけるサポートをもっとしていかなきゃいけないと感じました」
熟練者の態度に加え、今年サンウルブズに新加入した日本の大学生選手の活躍にも感銘を受けた。
同じ早大出身でSHの齋藤直人に関しては、「大学生のなかで必要と要求されるフィットネス、筋力は持っていたし、より高いレベルではできるんだろうと思っていたものの、これだけできるのには驚きも喜びもあります」と持ち味のパス能力と持久力を発揮したことに目を細めた。
さらに早大で指導した中野将伍、天理大から加わったシオサイア・フィフィタといったCTB陣を念頭に置いてか、「大学のトップレベルの選手たちには、S&Cの部分に限って言えば通用する部分を持つ選手もたくさんいる」とも述べた。
この国の大学ラグビー界でも、上位陣にあっては鍛錬の文化が根付いている。そう再認識できた。
「帝京大、明大、東海大、早大、慶大……。(何度も)全国ベスト8に入るようなチームは、S&Cのレベルが上がっている気がします。そこ(の前提)がないと戦えないようになっているというか」
3月中旬、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からスーパーラグビーは中断。サンウルブズの選手も、現在はそれぞれの母国などに戻っている。
もっとも息吹は途絶えておらず、臼井コーチらS&Cグループはチームが解散して間もなく各選手へアプローチ。「いつ再開できるかわからないですが、いつ再開されても少なくとも身体の準備はできているような状態を作ってもらいたい」と、各選手に自主練習のガイドラインを示す。トレーニングジムが相次ぎ休業する社会情勢を鑑み、自宅でできるトレーニングメニューを共有した。
「外を走れる選手には『こんなランニングメニューはどうかな』とも提示しています。環境が十分でないので状態をアップさせるのは難しいかもしれないですが、少なくとも、最後に試合に出ていた時の状態は維持し続ける」
その延長で、新企画もオーガナイズした。「サンウルブズ エナジー チャレンジ プロジェクト」だ。
日本時間で4月11日からの毎週土曜15時から、世界中に散る選手のトレーニング風景をオンラインで同時配信。選手たちも乗り気で自重のサーキットトレーニングに没頭し、SNS上では多くのファンから共感を集めた。
今後は段階的に、メニュー遂行の難易度を上げてゆきたいという。デモンストレーションや初回のアーカイブ動画はサンウルブズの公式YouTubeチャンネルでも確認できる。