ラグビーリパブリック

廣瀬俊朗が率いるスクラムユニゾン、ヤマハスポーツ振興財団から表彰

2020.04.15

スクラムユニゾンの全メンバー。左から吉谷吾郎さん、北川茉以子さん、田中美里さん、廣瀬俊朗さん、村田匠さん、橘田智緒さん、丸岡知恵さん(文・撮影:齋藤龍太郎)

 元日本代表キャプテンの廣瀬俊朗さんの発案と呼び掛けにより昨年発足し、ラグビー主要国の国歌を広める活動を行ってきたユニット「スクラムユニゾン」が、このたび公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団のスポーツチャレンジ賞第12回奨励賞を受賞した。

 同財団は毎年度末、スポーツ振興において大きな実績を残し社会の活性化に貢献した「縁の下の力持ち」的な人物、団体を表彰している。過去には、15人制および7人制日本代表のアナリストを務めた中島正太氏(現男子セブンズ日本代表分析)が2015年度に奨励賞を受賞しており、ラグビー界からの受賞は今回が2例目ということになる。

 スクラムユニゾンは昨年のワールドカップ日本大会開幕に先駆けて活動を開始した。同大会への出場が決まっていた20カ国の国歌の歌唱動画を制作し、廣瀬さんと瓜二つのキャラクター「トシツァルト」に加え、歌唱担当の村田匠さん(カルナバケーション)と田中美里さんのプロシンガーコンビが実演。親しみやすいピアノ伴奏と歌詞の振り仮名、意訳も加えることで、老若男女問わず親しみやすいコンテンツに仕上げた。

 受賞の第一報はスクラムユニゾン代表、廣瀬さんの耳に届いた。

「ワールドカップを裏で支えたことをヤマハ発動機スポーツ振興財団さんに認めていただいて、非常にうれしく思いました。最初は候補にノミネートされていると聞いて、それだけでもうれしかったのですが、最終的に選んでいただき光栄です。ワールドカップはもちろん試合がメインではありますが、国歌斉唱で気持ちを一つにすること、大会そのものを盛り上げること、次世代の子どもたちにレガシーとして残すこと、こうしたサポートができたのが大きかったですね」(廣瀬さん)

 大会前から日本各地に赴いては歌唱指導を行い、イベントを盛り上げるなど国歌の伝道師として活躍、昨年7月27日の日本代表対フィジー代表戦では会場の釜石鵜住居復興スタジアム(岩手県釜石市)で廣瀬さん、釜石東中学校の生徒たちと国歌斉唱を行った村田さんと田中さんにとっても、受賞の味は格別だったようだ。

「多くのみなさんに喜んでいただけたという手応えはあったのですが、ワールドカップの熱も一旦落ち着いて、今年に入り次に向かって動き出そうというタイミングで、あらためて『ワールドカップの時はがんばったね』という社会的評価をいただけたようで、すごくうれしかったですね」(村田さん)

「ワールドカップが盛り上がったことだけでも私自身楽しかったですし、日本代表が結果を残してくれたこと、ラグビーが広がったことでも幸せで胸がいっぱいだったのに、さらに自分たちの活動が表彰されて認められ賞をいただけるなんてまったく考えていなかったので、本当にうれしかったです」(田中さん)

スクラムユニゾンの功績が特に話題になったのは昨年9月25日のワールドカッププールD、フィジー対ウルグアイ戦だ。スクラムユニゾンの動画を見てウルグアイ国歌を覚えた日本人のエスコートキッズが選手とともに声高らかに国歌を歌い切り、これがチームに勢いをもたらす。格上のフィジーを30-27で撃破するという大会屈指のアップセットの一因となった。

「ワールドカップ期間中はスクラムユニゾンの一員としての活動ができなかったのですが、解説をした試合などでエスコートキッズがキャプテンの横で一緒に歌ってくれているのを見て、本当にうれしかったのを覚えています。フィジー対ウルグアイは特に感動しましたね」(廣瀬さん)

 スクラムユニゾンの功労者は彼らだけではない。企画やデザインのクリエイティブ面で活動を支えたコピーライターの吉谷吾郎さん、完成度の高い動画の数々を仕上げた橘田智緒さんとアシスタントの丸岡知恵さん、プロモーションやマネジメントを担当した北川茉以子さんを合わせた計7人によるユニットだ。このメンバーだからこそ成功した、と廣瀬さんは振り返る。

「ラグビーの精神を知っている2人がシンガーをやってくれたことはもちろん、コアメンバーがラグビーに精通していたこと、何よりみんながワールドカップを盛り上げたいということに賛同してくれたことが大きかったですね。アイデアは僕が最初に出しましたが、動画制作についてはまったくの素人で実行するノウハウがなかったので、感謝しかありません」(廣瀬さん)

 スクラムユニゾンはワールドカップ日本大会終了後も地道に活動を続けており、引き続き動画を制作、公開中だ。視線はすでに来年に向けられている。

「今回の受賞は今後の活動の弾みになりました。ワールドカップもありましたが、来年のオリパラに向けても勇気をもらえたと思っています。その直前には関西でワールドマスターズゲームズも行われますので、そこに向けて自分たちがやれることをやっていこうと考えています。このまま毎年、着々と活動を積み重ねていきたいですね」(廣瀬さん)

 新型コロナウイルスの影響で今季のトップリーグは幕を閉じ、開催予定のテストマッチも延期や中止の可能性をはらんでいる。外出自粛が続く先行き不透明な状況ではあるが、今回の受賞によりさらに評価が高まったスクラムユニゾンの動画を見ながらラグビーの再開を願い、テストマッチをはじめとする試合の日を待つのも、ファンにとって楽しい過ごし方になるのではないだろうか。

(文・写真:齋藤龍太郎)