今年7月24日に開幕予定だった東京オリンピック・パラリンピックが、1年をメドに延期されることが決まった(3月24日)。新たな日程は近日中に明らかになる予定だ。
すでに大会出場が決定していた選手がいるものの、その権利をそのまま有効とする競技があれば、未定の競技もある。選考が済んでいない競技の中には、それがいつ、どういった形で決めるのか再検討に入ったものもある。
いずれにしても、4か月後にピークを持っていくために調整してきた各国各競技の代表チーム、選手たちは、あらためてコンディショニングを整えなければいけない。
2016年のリオデジャネイロ五輪で男子セブンズ日本代表の主将を務めた桑水流裕策(くわずる・ゆうさく)の胸中も穏やかではないけれど、何よりも先に、世の中が平穏な日々を取り戻すことが大事と話す。
「その影響は世界中に及んでいます。亡くなった方、苦しんでいる方が大勢いる。そんな中で、大会を延期することは理解できます」
その上で、アスリートとしての難しさも口にする。
ターゲットに定めた日(期間)までの4か月が「短くなるのではなく、1年4か月先になる分、体の面ではなんとかコントロールできるのかもしれませんが、メンタル的には難しくなると思っています」と話す。
いろんな要素がある。
大会出場選手の座を争う競争。年齢との勝負。
この秋には35歳になる。若手の突き上げもあるだろう。
キックオフボール獲得が求められる同じポジションには、外国出身選手の候補もたくさんいる。
残り4か月にすべてを懸けようと思って研ぎ澄ましていた。
果たして、その集中、緊張を維持し続けられるだろうか。あるいはリスタートを切った後、同じように高められるだろうか。
まだ心の整理がついていない。それが正直な気持ちだ。
今夏に向けて、チーム強化の設計図は明確だった。しかし、4月、5月に予定されていたアジアセブンズインビテーショナル2020やワールドラグビー・セブンズシリーズの日程は中止、延期となり、あらたな強化の道筋は書き換えられている最中だ。
「そういう状況の中で、今後自分がどう動くか。そこは決められないし、整理できていません」
大会延期決定後、岩渕健輔ヘッドコーチはすぐに選手たちのメンタルケアの必要性を口にした。
代表候補チームのグループラインでは、スタッフから「質問や疑問があれば何でも問い合わせてほしい」と流れてきた。
モヤモヤは、すぐには晴れそうにない。
しかし4年前に五輪の舞台に立つ興奮を味わった者として、桑水流はスポーツの持つ力を知っている。
「自分がそこを目指すか否かには関係なく、東京で来年大会が開催される時、それは困難を乗り越えてのオリンピック、パラリンピックになる。世界中に勇気を与える大会になるということです。スポーツの力が試される」
もと通りの世の中よ、早く。五輪の興奮を多くの人に。そこに自分が身を置けたら。
ゴールまでの道筋をしっかり見定め、すっきりした気持ちでリスタートを切りたい。