3月14日の夜にスーパーラグビーの中断が発表された。サンウルブズの選手たちが帰国して1週間が経った。
オーストラリア協会は同20日、オーストラリア・カンファレンスの4チーム(ブランビーズ、レベルズ、レッズ、ワラターズ)は、ウエスタン・フォースを加えた5チームで無観客試合を実施する考えを明らかにした。
同国政府が海外への渡航禁止・海外からの渡航制限を設け、国をまたいでの行き来が困難になったからだ。
この動きにより、サンウルブズの活動再開は非常に厳しくなった。選手たちは新たな動きに備えてそれぞれ準備を続けるも、先は見えない。
ただ、サンウルブズが今季ここまで戦った6試合。積み重ねたその時間に、選手たちが得たものは多い。特に、今季初めてスーパーラグビーの舞台に立った若い選手たちは大きな刺激を受けた。
この春、早大を卒業してサントリーに入る中野将伍も、その一人だ。
チームが戦った全6試合のうちの5試合に出場。2試合目の出場だった秩父宮ラグビー場でのチーフス戦(2月15日)ではトライを決め、敵地でのハリケーンズ戦では先発し、80分ピッチに立った。
リーグ中断が伝えられた3月14日夜の直前におこなわれたクルセイダーズ戦でも、後半最初からピッチに立って40分プレーした。
3連覇中の強豪との対戦には14-49と大敗も、中野はやられたり、やり返したり、刺激いっぱいの時間を過ごした。
ピッチに立ってすぐのプレーを、中野は反省した。
クルセイダーズの蹴った後半開始のキックオフボールを受けたサンウルブズは、自陣から少し攻め、敵陣に蹴り返す。このボールをカウンターアタックに転じられた時だった。
WTBレスター・ファインガヌァヌクが走る。中野がタックルを外され、ビッグゲインを許す。失点につながった。
「あの場面、バインドができませんでした」
そう振り返った中野は、プレーした40分を振り返り、「今日はいいデキではなかった」と厳しい自己評価をした。
「攻めている途中にボールを失ったシーンもありました。もっとプレーのスタンダードを上げないといけない。いいプレーも悪いプレーもあるのではいけない」
ミスタックル後、チームはジリジリと点差を開かれた。ただ、中野はやられっぱなしではなかった。
持ち味の強いランニングで前に出た。タックルに押し戻される場面もあったが、40 分だけの出場ながら、ランメーターは42メートルでチーム2位だった。
ディフェンスでも、前進されたらやり返した。相手をドミネートする場面もあり、ボールを奪い返すプレーもあった。
勝敗は悔しい結果(14-49)も、すべてのプレーが財産になっている。
貴重な経験を積めている。その実感を話す。
「国内でやっているプレーがうまくいかない。そのうまくいかない部分が通用するように、(工夫や修正をして)もっといいプレーをする。その繰り返しです」
止まるところが止まらない。片手でハンドオフをしていたらボールセキュリティーが足りない。そんなシーンと出会うたびに自身のギアをひとつ上げ、それを当たり前にしていく作業を重ねる。
上達に特効薬がないのは分かっている。攻守ともスーパーラグビーで戦うレベルにするには、フィジカルを高め、周囲とのコミュニケーションを高めることだ。
「できるだけ多くコミュニケーションをとってプレーしています。やはり相手は個々が強いので。こちらが連係をとり、いいタイミングで、いいスペースに入れたらいけるんです。ただ前に出た後(のブレイクダウンで)、きれいにボールが出るまでしっかりやらないとダメ」
よりハードに、かつ丁寧に。
そうやってプレーしない限り結果が出ない。そんなレベルでプレーするのがたまらなく楽しい。
80分プレーしたハリケーンズとの対戦では、トイメンに立ったンガニ・ラウマペのプレーに立ち向かい、学んだ。
オールブラックスとして13キャップを持つ弾丸ランナーは、強いだけではなかった。
「タフなプレーをするだけでなく、パスするのか走るのか、すごく分かりにくかった」
自分もそうありたい。強みをさらに輝かせるために必要なプレーがそこにあった。
スーパーラグビーの舞台に、もっと立ちたい。
それは、もっと上手くなりたい意志の声でもある。