国際リーグのスーパーラグビーに日本から挑むサンウルブズにあって、21歳のシオサイア・フィフィタは「この試合をやれるのは幸せだと思います」と前向きだ。
新型コロナウイルスの感染拡大に世界中が敏感に反応。スーパーラグビーを運営するSANZAARもその例外ではなく、2月下旬には3月のサンウルブズのホームゲームへの扱いについて審議。天理大3年で身長187センチ、体重103キロのフィフィタも、開催の有無について心配する気持ちを自身のSNSで明かしていた。
結局、3月8日に大阪・花園ラグビー場で開催予定だったブランビーズとの第6節は6日にオーストラリアのニューサウスウェールズ州はウーロンゴンのWINスタジアムで、14日に東京・秩父宮ラグビー場で組まれていたクルセイダーズとの第7節は同日にブリスベン・サンコープスタジアムで実施されることとなった。
サンウルブズにとっては、約2週間の予定だった2月下旬からの海外遠征が長期化する格好だ。
ただし、もう後ろは振り返らない。
2月29日の第5節の前にこの決定を聞いたというフィフィタは、3月5日、大雨に降られたシドニー南東郊外で試合前日練習に参加。肩にタオルをかけて笑った。
「試合がやれたらいいと思います。(生活面は)全然、困ってないです。楽しみです」
ブランビーズがオーストラリア・カンファレンスで目下3勝1敗なのに対し、サンウルブズは1勝3敗。ニュージーランド・ネイピアのマクリーンパークであった前節では、2016年王者のハリケーンズに15-62と大敗している。
沢木敬介コーチングコーディネーターは、他クラブに比べ国代表経験者が限られる陣容を鑑みてか「我々の思うようなラグビーは全然できなかった。いまの自分たちだと、そういう試合は必ずある」。準備段階から、用意したプレーができない状況を念頭に置きたいとする。
早期の日本代表デビューが期待されるフィフィタは、おもに防御で課題を残した。サンウルブズで大外のWTBに入る選手は、機を見ての飛び出しでパスコースを消したり、パスをもらったばかりの相手を倒したりしたいところ。しかしこの日WTBを務めたフィフィタは、相手と間合いを詰めに出た背後に球を通されることも多かった。本人も認めた。
「何回か、ディフェンスミスで…。それが課題かなと思います。たぶん、練習と違って、ハリケーンズのCTBが強すぎて…」
本番の圧力下では、飛び出すまでの周りとの連携が練習通りにならない様子。強力な相手選手の突進などに内側の防御が巻き込まれた際、大外でどんなジャッジを下すか…。反省の弁は尽きない。
「いい勉強になりました」
ブランビーズ戦では、天理大などで任される本職のアウトサイドCTBで先発する。大久保直弥ヘッドコーチに言い渡されたというポジション変更に、「ディフェンスもアタックも、両方とも頑張る」。攻めては強力なランニングを披露し2トライを記録も、もっと世界の列強を吹っ飛ばしたり、振り切ったりしたいという。
「世界レベルは、すごいなぁって思いましたね。でも、それに負けないように戦えるフィジカルを作っていきたいです。まだまだって感じ」
交際歴約1年のガールフレンドが急遽、現地入りしたことへは「遠いので、さすがに来ないと思っていたんですけど…」と感謝。グラウンドに集まったファンへも日本で待つファンへも、よいところを見せたい。