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感謝も込めて、古巣と。土佐主将、決戦へ[あすのTL5節]

2020.02.15

1986年生まれの33歳。英国オックスフォード大のほか、’17年には豪州のクラブチームでもプレー(撮影:吉田 宏)

 トップリーグ(TL)第5節第2日は2試合を開催。今季初勝利をかけた意地と意地のぶつかり合いになるのが三菱重工相模原ダイナボアーズーNECグリーンロケッツ [2月16日13:00 神奈川・相模原ギオンスタジアム]だ。今後の順位争いを考えても、ともに勝利がマストと位置付けられるカード。中でも、三菱重工相模原を率いるNO8土佐誠主将には特別な一戦だ。

 2016年度まで8シーズンプレーしてきた古巣とのTLでの初対戦に、土佐は「NECは僕が所属していたときも厳しいシーズンがあった。でも、主力メンバーは決して気持ちを切らさない。そんなチームです」
 4連敗中とはいえ、相手の怖さも強みも手に取るようにわかる。三菱重工相模原が昨季TL昇格を確定したから実現した古巣との直接対戦だが、土佐の闘争心をさらに高めているのがNECヘッドコーチ(HC)に昨春就任した浅野良太の存在だ。

 「僕がいたときのキャプテンですから。あの人の熱い姿勢と、強いメンタルを知っているぶん怖い存在です。間違いなく、コンタクトの部分はこだわってくるので、FW第3列としては絶対に負けられない。気持ちの部分は、僕がプレーしていた時代もNECの持ち味だったし、いまも変わらない。勝ててないチーム同士なので、そういう気持ちの部分も試合に影響してくるはずです」

 関東学院大卒業後に英国オックスフォード大に留学した土佐のチーム合流を、NECは1シーズン待ってくれた。’12年からはてんかんに苦しんだが、常に支援をしてくれたチームでもある。土佐は感謝の思いも込めて古巣と戦うピッチに立つ。

 三菱重工相模原にとっては12シーズンぶりのTL参戦。前回の挑戦では13戦全敗で、わずか1シーズンで下部リーグに陥落。実力差は明白だった。今回も開幕4戦目まではTL初勝利は果たせていないが、開幕のNTTドコモ戦は24—31、続くキヤノン戦も15—23と互角の戦いを披露。TL1勝目への期待は高まっている。
 土佐主将も「開幕前から思っていたことだけど、TLで十分やれるだけの力はある。本当にすこしのミスで、後半崩れるという部分を修正すればチャンスはある」と勝利への期待感を高める中で、古巣であり、ともに未勝利のNECとの一戦は最高の舞台になる。

 土佐を迎え撃つNECは、ブレークダウンでの激しい攻防を武器に’02、’04年度日本選手権を制覇した伝統を持つ。往年のスタイルを再興するために05—07年度に主将を務めた浅野良太をHCに招いたが、開幕の宗像サニックス戦では伝統のブレークダウンの攻防でも後手を踏み6点差の苦杯。課題の伝統回帰の難しさを露呈した。
 ともに初勝利へのキーポイントは、接点のフィジカルバトルでどちらが優位に立つか。先発FWではNECの平均身長184.1㎝、体重107.5㎏に対して、三菱重工相模原は身長184.8㎝、体重108.8㎏と負けていない。土佐主将も「ウチもいまは決して小さいチームじゃない」とFWのパワーゲームでも真っ向勝負を挑む。

 今季は毎節のように通算100試合出場の選手が生まれているが、この試合では三菱重工で先発するFL小林訓也が大台に到達する。ブレークダウンでのジャッカルやタックルで、いぶし銀のしぶとさを見せる仕事人は、ヤマハ発動機、NTTコミュニケーションズそして三菱と3チームでの通算100試合に「消耗するポジションですが、大きなけがもなくやってこれた。嬉しいですけど、いまは勝つことが一番大事。そこに集中していきたい」とフォー・ザ・チームに集中する。待望のチームの初白星で自身のモリアルゲームを飾る決意でキックオフに臨む。 (吉田 宏)