初先発したSHの齋藤直人が言う通りだった。
「ポジティブ過ぎかもしれないですが、攻めたシーンは完全に(相手を)崩せている」
サンウルブズは前半7分に敵陣中盤右のラインアウトから順目にフェーズを重ね、SOのガース・エイプリルのパスを受けたFBのジェームス・ダーガヴィルがラインブレイク。ラックサイドをWTBのシオサイア・フィフィタがえぐると、さらに勢いをつけてエイプリルのトライなどで先制した。7-0。沢木敬介コーチングコーディネーターの指導を受け、「セットプレーからの3フェーズ」の精度にこだわる。
5点差を追う17分頃には、フィフィタのラインブレイクなどをきっかけに敵陣ゴール前で小刻みにつなぐ。
しかし、右中間でノーマークに近い形でパスをもらったCTBの森谷圭介ゲーム主将が、必死に戻る相手FBのダミアン・マッケンジーに捕まる。インゴールまで手を伸ばせないと見てラックを形成も、相手FWに圧をかけられた。森谷の述懐。
「マッケンジーが来ているのが見えて、ボールを次に活かせばトライになると思ったのですが、そのラックでターンオーバーをされてしまいました」
チーフスは続く20分頃に敵陣ゴール前まで攻め込み、24分にはSHのブラッド・ウェバーのトライを許す。7-17。
そして12-24で迎えた後半開始早々、相手がシンビンで1人少ないなか攻撃中のパスを森谷がノックオン。球をかっさらった相手FLのラクラン・ボーシェーが約50メートルを駆け抜けるなどし、得点板の数字を12-31と変えた。
痛恨のミスを犯した森谷が「僕の焦ったミスでスコアをされて、流れが悪くなったという印象はあります。(落球の瞬間は)スペースを見てしまって、キャッチができなかった」と認めるなか、大久保直弥ヘッドコーチはこう言葉を選んだ。
「ひとりのミスで相手にトライまで行かれてしまった。残りの14人がどうカバーするかも含め、成長できる部分ではある」
新顔の外国人と代表経験の浅い日本人選手が主体となった今季のサンウルブズ。2月1日の開幕戦では約4週間の準備期間でオーストラリアのレベルズを下し結束力を示したが、この日は優勝経験のあるニュージーランドの雄に要所でいなされた。
特に接点での球への絡みは圧巻で、後半14分頃にはチーフス陣22メートル線付近でボーシェーが好ジャッカル。それまで続いていたサンウルブズの攻めを断ち切った。好ラン連続のフィフィタは「相手がうまかった。倒れた瞬間にボールを後ろ(味方)に出さないと。(接点への援護が)遅い時もあるので、その時はキャリア(球の保持者)は頑張らないと」と反省し、カバー防御とパスで光った齋藤もこう語った。
「経験したことのないプレッシャーがかかった。でも、そのなかでも戦わなきゃ。ブレイクダウンが負けているからさばけないなんて、言い訳にならない。相手はジャッカルが多かった。こっちのサポートの問題か、キャリア(突進役)の問題かはわからないですが、SHの指示で(改善)できるところはあった」
失敗体験を踏まえ、やはり攻め切れればいい試合ができると実感した反骨の狼。22日にはブリスベンでレッズとの第4節に挑む。
今季初の海外遠征に向け、敵地が地元というLOのマイケル・ストーバークは「我々選手は、背景に持っているものが似ている。そのことが互いをぐっと近づけるプロセスに関わっている」とし、FLの布巻峻介は「今回は外国人が多い。(タフな遠征中に)逆にレベルアップするかもしれない」と先を見据えた。