2019年のワールドカップでは、20歳の若さでレ・ブルーの10番を背負い堂々とプレー。ワールドラグビーの年間表彰では、ブレークスルー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。
フランス代表の10番を背負うロマン・ンタマックは2月2日におこなわれたイングランド戦で、ゴールキックを100%成功させて勝利に貢献。試合翌日の会見でファビアン・ガルチエ監督は、「キックをうまく使えていた」と若き司令塔に高い評価を与えた。
2023年のワールドカップ(フランス大会)へ向け、キープレーヤーのひとりとして期待されるSOに、イングランド戦から3日後の2月5日(水)、話を聞いた。
フランス国立ラグビーセンター(マルクッシ)でのトレーニング後、イングランド戦、2月9日におこなわれるイタリア戦について質問に答えた。
◆2月2日におこなわれたイングランド戦について。
「タフで強度の高い試合だった。特に、僕たちはあまりボールを持てなくて、ディフェンスしている時間がかなり多かった。死にものぐるいで守った。今日(水曜)もまだ筋肉痛だらけ。容赦ない厳しい試合だった。でも、そういう試合に勝ててよかった」
◆イングランド戦はディフェンスしている時間が多かった。ジェネラルマネージャーのラファエル・イバネスが、イタリア戦では自分たちのアタックを遂行することが優先になると言っているが。
「イングランド戦のようなディフェンスをしながら、アタックのオプションも持っていなければならない。イングランド戦は相手への戦術があって、それを完璧に遂行できた。でもディフェンスでだけでなく、アタックででも勝てなければならない。今日(水曜)の練習では、高い強度でアタックのシステムの練習をし、勘が戻るようにコンタクトも少しおこなった」
◆スタッフから日曜の試合でアタックのシステムを実行することを期待されている。
「はい。選手たちもアタックをして楽しみたい。今週末はアタックの成功が目標になるだろう。ディフェンスのレベルはキープしつつ、アタックのレベルを上げないといけない」
◆その他にスタッフから言われているのは、気持ちが緩んでしまわないようにすること?
「それはチームのマインドセットの部分。イングランド戦の後のロッカールームで、みんな喜んでいたけど、次の試合に集中する空気がすでにあった。今週のスローガンは、日曜のイタリア戦に集中すること。とても大切な試合になる。イングランド戦でうまくいかなかったところを調整する。さらにハードワークして、イタリア戦に向けていい準備をし、最高の試合をする」
◆うまくいかなかったところとは?
「アタックでは、僕たちの動き方、キックの使い方。2トライされているのだから、ディフェンスも改善するべきところがある。ビデオでレビューはした。日曜までに修正する」
◆ファビアン・ガルチエ監督とラファエル・イバネスGMが、イングランド戦後の48時間が大事と言っていたが、月曜、火曜はどう過ごした?
「リカバリー中心。(イングランド戦は)本当に強度の高い試合だった。個々にビデオ分析もあった。しっかりリカバリーして、今日(水曜)のハードな練習に備えた。今日の練習でコンタクトを再開した。いいコンディションで日曜の試合に臨むため、リズムを取り戻す」
◆初戦に勝って、気が抜けてしまうことは?
「そんなことはない。今週末も大変な試合になることはわかっている。まだ筋肉痛やちょっとしたケガもあるけど、全員が練習のための準備ができていた。誰もが高い強度で練習に参加した。チームに高い目標があることがわかる。何を目指しているのか全員がわかっている」
◆イタリア戦ではボーナスポイントを取ることを目標にするのか?
「そういう話は出ていない。自分たちのプレー、自分たちのディフェンスでの目標の話をした。プレー以外のことは話していない」
◆イタリア戦、どういう試合になるか?
「イタリアは力強いチーム、ラグビーが上手な選手がいる。BKは足が速い。FWは大きくて強い。セットピース、ラインアウトもいい。警戒しなければならない。しっかり自分たちの仕事をして、相手のアタックやディフェンスを止めなければならない。パワフルなイタリアの選手をしっかり止める」
◆新しいメソッドで世界2位のイングランドに勝てたのは安心材料になるか。
「自信はあった。これほどの試合を経験したことがない選手がほとんどだったのに、ウォーミングアップの間も落ち着いていた。いろいろ不安もあったはずだけど、イングランド戦に向けて準備した週、パニックになることはなかった。平常心、そして自信を感じた。僕たちがアウトサイダーだということはわかっていたから、何も失うものはなかった。僕たちはこれだけのディフェンスができるということをイングランドに見せたかった。ちゃんと戦術に沿ってラグビーができるということを見せたかった」
◆その自信は、新しく芽生えたもの?
「新しいかどうか分からないが、(そういう感覚が)このグループの特徴だと思う。白熱した状況でも冷静で平常心で、崩れることなくゴールラインを何度も守り切った。チームが冷静で我慢できるということが分かる。しかもペナルティーが少なく、ブレイクダウンでもクリーンにプレーできた。チーム全員が、どこを目指しているのか分かっている」
◆アグレッシブに上るディフェンスのシステムでは、SOに求められることも多いのではないか。
「それはFWも同じ。FWはディフェンスで速く上がって、たくさん仕事することを求められている。イングランド戦では、彼らはしっかりその求めに応えた。FWが頑張って、ディフェンスでもアタックでも前に進んでくれるとBKの仕事がやりやすくなる。ニースでの2週間の努力が報われた」
(文/福本美由紀)