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さぁ、未来を切り開くハンティングだ! サンウルブズ、最後のスーパーラグビー挑戦始まる。

2020.02.01

サンウルブズの2020シーズンは福岡・レベルファイブスタジアムで開幕となる(撮影:BBM)


 いよいよ、サンウルブズにとっての最後のスーパーラグビーシーズンが始まる。日本チームとして誕生し、南半球の猛者たちが集うこの大会に2016年から参戦してきたが、2020年大会を最後に除外されることが決まったため、ラストイヤーとなるのだ。
 2月1日、福岡・レベルファイブスタジアムでオーストラリアのレベルズと開幕戦。
「我々のテストマッチ。どうやったらレベルズに勝てるか、というのがこのチームのスタートだった。今週だけに限らず、(新チーム始動から)4週間かけていいプロセスは踏めていると思う」
 試合前日、ラストシーズンの指揮を執る大久保直弥ヘッドコーチの表情は引き締まっていた。

 今季のスーパーラグビーは国内最高峰のトップリーグと開催時期が重なるため、サンウルブズには、昨年のワールドカップで活躍した日本代表選手はひとりもいない。一部のトップリーグチームからリリースが認められた数名と、将来有望な大学生など若手、それに多国籍の外国人選手はサンウルブズ初参加の選手が多い。厳しい戦いが予想されている。
 でも指揮官は、「いろいろ周りの方が言われるほど、僕らスタッフも選手も全然悲観的になってない」と言った。「むしろ、ジャージーを着るプライドとか、体を張るというマインドセットが、試合登録メンバーに限らず、チームみんながそういう意識で取り組んでくれている。楽しみです」

アシスタントコーチから昇格し、今季指揮を執る大久保直弥ヘッドコーチ(撮影:BBM)

 サンウルブズは過去4年、2017年大会(18チーム中17位)を除いて最下位に終わってきた。1シーズンにおける最多勝利は2018年の3勝。しかし、これまでの少ない白星のなかには、アルゼンチンのハグアレス(ジャガーズ)から奪った歴史的初勝利や、サヨナラドロップゴールで歓喜した香港での劇的勝利、優勝経験のある強豪相手にアウェイで勝利など、ファンを熱狂させたドラマが確かにあった。負けても、「この舞台にふさわしくない」と酷評されても、果敢に挑み続けるサンウルブズをファンは応援した。

 そして、ラストシーズンのスローガンは「KEEP HUNTING」とした。最後のスーパーラグビー挑戦だが、2023年のワールドカップへ向けた戦いの始まりでもあるのだ。選手、スタッフ一人一人がHunt(チャレンジ)し続けることがサンウルブズの使命であり、未来を切り開いていく、という思いを胸に、2020スーパーラグビーに挑むのだ。

 過去、サンウルブズはレベルズに一度も勝ったことがない。大久保ヘッドコーチは分析の結果、セットピースの多い試合になると苦しくなると予想する。だから、とにかく走って走って、ボールが切れずに、テンポの速いラグビーをしたい。
「ロースコアじゃ、たぶん難しい試合になると思う。多少リスクはあったとしても、こちらから仕掛けることが必要。ボールを持ち続けるという意味じゃなくて、スペースにボールをしっかり運ぶ、キックでもパスでも。そのためにはFWがいかによいシェイプでコネクトできるかというのは大事だと思う」
 プランを遂行するためには運動量が重要となってくるが、「9番の(ルディー・)ペイジなんかはこの4週間ですごく体もシャープになった」と、選手のコミットメントに手ごたえを感じている。

 また、元オーストラリア代表CTBで、同代表やワラターズ、そしてレベルズでもアシスタントコーチを務めたことがあるネイサン・グレイがテクニカルディレクターとして加わったことも大きい。映像だけじゃわからないこともグレイは知っており、オーストラリア・カンファレンスに属するサンウルブズにとっては強みとなる。

開幕を控え、意気込みを語った森谷圭介キャプテン(撮影:BBM)

 今季のサンウルブズは、スーパーラグビー通算92試合出場の経験を持つ元オーストラリア代表FWのジェイク・シャッツと、日本代表の経験はまだない25歳のBK森谷圭介が共同キャプテンでけん引する。
 大久保ヘッドコーチは、キャプテンの口数が多いか少ないかなど気にしない。「アタックのキーマン。自分にフォーカスしてリーダーシップをとれる選手」と期待される森谷は、レベルズ戦へ向け、「ブレイクダウンやコンタクトの部分でしっかり戦えれば、いい試合になると思う」と言った。

 森谷は今年がサンウルブズ初参加で、スーパーラグビー初挑戦だ。かつては、すごく違う世界のような感じで観ていたというが、所属するパナソニックの選手などがその舞台に出て活躍するようになり、彼らと一緒に練習するうちに、どんどん身近に感じるようになった。「僕自身、スーパーラグビーは初めてなんで、感触はつかめても、どのレベルでできるのかはまだわかっていない。やれる自信は、まだない」と正直な胸の内を明かすが、自分にとっても大きな挑戦だと自覚している。「ここでいいプレーをすれば、次の道は開けると思っている」

 大久保ヘッドコーチが「我々のテストマッチ」と言ったように、レベルズとの開幕戦はチームとしても最大のフォーカスをあてて4週間取り組んできたビッグマッチだ。
 過去4年間、サンウルブズは白星発進が一度もない。森谷キャプテンは意気込む。
「いままでサンウルブズは開幕戦で大きく負けたりしてるんで、ここで勝って、いままでのサンウルブズとは違うところを全員で見せたい」
 若い狼は勇ましい。さぁ、ハンティングの始まりだ。