日本代表主将のリーチ マイケルら世界的名手がひしめく東芝のFW陣にあって、これから世界に挑みそうな25歳がいる。
シオネ・ラベマイ。今年1月開幕の国内トップリーグでは、3戦連続で先発中だ。
特にサントリーに26-19で勝った初戦ではFLに入り、パワフルな突破とジャッカルを披露する。
前半29分には、自陣ゴール前左の接点に身体を差し込む。腰を落とす。この動きを排除したかった相手FLの西川征克は、ノーバインドでぶつかったことが「危険なプレー」と判定される。一発退場を受ける。
ラベマイも強い衝撃を受けたはずだが、当の本人は身長190センチ、体重119キロの身体をすくめ「いまは大丈夫だけど、明日から痛くなると思います」。ケロリとしていた。
トンガ生まれ。ニュージーランドのセントビーズカレッジを経て2014年に来日した。拓大で主将を任された2017年に大けがを負ったが、東芝の望月雄太採用担当は「キャプテンシーとパワー」を評価。進路が決まっていないこと、留年して翌年度も大学に残ることを知るや、獲得へ動いた。
リハビリ期間中の体重増加は気になったが、意を決してからのスムーズな減量と筋量増加にかえって好印象を抱いた。まじめさと強靭さを尊しとする東芝のクラブ文化にもなじむと判断し、2018年12月に約3週間、トレーニングに参加させた。
すると、「120キロの体重で立ち幅跳び2メートル90センチ。来て2回目くらいの練習で『間違いない』となった」。まもなく、当時の瀬川智広監督(現ゼネラルマネージャー)を納得させた。ラベマイは2019年のカップ戦から、東芝のジャージィを着ている。
元日本代表FLでもある望月は、2018年にも摂南大からWTBのジョネ・ナイカブラを獲得している。
関西大学Aリーグで上位進出を目指していた摂南大では、同部コーチいわく「力を発揮させてあげられなかった」というナイカブラだったが、東芝では初年度から爆発。望月は、上位校以外の留学生から隠れた逸材を探すのが楽しいという。
今回のラベマイについても「うちのスタイルに合ったのが一番」とし、こう続けた。
「フィジカルが強く、何よりすごくまじめ。(一時は)シャープじゃなかったんだけど、半年かからないくらいで一気に絞って、また(筋力トレーニングで)大きくした。正確な数字はわからないけど、大学時代のシオネを知っている周りの人が『おまえ、本当にシオネ?』って言うくらい」
第2、第3節はLOに入ったラベマイ。試合のたびに「ディフェンスがちょっとダメ。もっと練習したい。大学とトップリーグではレベルが全然、違います」と反省しきりで、将来の日本代表入りへも「入れれば、入る! でも、いまの日本代表のバックロー(第3列)は皆、すごいから」と慎重な立場だ。
ただし対戦したチームにいる現役日本代表選手からは、「将来、絶対ジャパンになります」と太鼓判を押されている。隠れた逸材が日の目を浴びつつある。