注目される新リーグの概要が見えてきた。
1月28日、日本ラグビー協会は2021年秋から始まる計画の「新リーグ」に関するメデイアブリーフィングをおこない、同協会の清宮克幸副会長、岩渕健輔専務理事、谷口真由美理事とトップリーグの太田治チェアマンが出席した。
この日は、新リーグに参入するための要件が示された(下記参照)。リーグは1部(10チーム前後/8〜12)、2部(10チーム前後/8〜12)を予定している。ただ、ディビジョン数や各ディビジョンのチーム数は、今年3月の参入表明期限までに手を挙げたチーム数、そして、その時に提出される参入計画についての審査結果から決められる予定だ。
参加要件に足りないまま参入を希望するチームが出た場合は、下部のリーグ(2部制なら2部)への所属を条件に一部参入要件を求めないケースもある。
新リーグ法人準備室室長に就いた谷口氏は、両親が近鉄のコーチと寮母を務め、花園ラグビー場にあった同チームの寮に住んでいたことを自己紹介で話し、「そういう環境で育ったので、ラグビーが社会の中でどうあってほしいかの理想は持っている」と話し、本腰を入れて新リーグ実現のための準備に取り組むと覚悟を口にした。
「ラグビーが社会にどうやったら定着していくのか。ラグビーがあってよかったね、と多くの人が思うようにしたい。ラグビーを社会的意義のあるスポーツにしていこうと考えています。そのためにも、(新リーグへの参入を希望するチームには)スタジアムを持っていただきたい。ラグビーを事業化していける人の育成も実現したいし、もちろん、代表強化につながらないといけない。(各チームの参入意思は)リーグ、そしてラグビーを発展させたいという意思表明であり、ラグビーの価値を高めていく意思表明と理解します」
今回の要件の骨子を見た限り、スタジアム確保や事業化面の曖昧さも含め、当初注目されたプロ化、プロリーグ構想とは大きく乖離している。それについては、「希望するチームをひとつも置き去りにしたくない。門戸は広く、審査は厳しく」という説明があった。審査内容によって最上位のカテゴリーには所属できないなど、より環境整備をしたチームが優遇される。
1試合1万5000人の観客動員については、「それくらいの規模がないと事業化できない」理由からだ。財政面は入場料収入を柱に、清宮副会長がマーケティング会社準備室室長を務め、そこで放映権料やスポンサー料を得る絵を描く。
2020年11月から翌年3月にかけておこなわれるトップリーグが、最後のトップリーグになるのか、1部、2部を決めるサバイバルゲームとしての新リーグのプレシーズンとなるのかも、3月の参入意思表明とその後の審査による参加チーム数の決定を見てから決められる。
大枠が決まり、説明を受けたトップリーグチームの関係者からは「一歩前進」という声は聞かれたが、まだまだ詰めなければいけない事案は多い。
岩渕専務理事は「30年後にも日本ラグビーが愛され、日本代表が強くあり続けるために変わらなければいけない」と話した。それを実現するためにも、誰もが「日本ラグビーが大きく変わる」と感じる改革を求めたい。
◆新リーグ参入要件(骨子)
【運営機能】
参加を希望するチームは、事業機能を持つことを求められる。事業機能とはチーム運営・収益事業のすべての責任者となる事業責任者を置くこと、収支の透明性を持つこと、主催興行(収益事業)体制の整備のことだ。また、事業計画を描くことも求められる。
参加チームはトップリーグ、トップチャレンジリーグ所属チームに限らず、希望チームがあれば、企業チーム以外にも門戸が開かれる。
【チーム名称】
地域名を採り入れることが求められる。
※ 企業名を入れることについては任意
【ホームエリア】
2021年シーズンからのホームエリアをそれぞれが決定する
【スタジアム】
2021年シーズンからホームゲームを開催できるスタジアムを確保する。ホームエリア内に複数のスタジアムをホームとすることも可能。1部リーグは1試合あたり1万5000人の観客動員を目指す。
※ 1万5000人収容のスタジアムを2023年までに確保できるように、日本ラグビー協会、リーグ運営法人、チームの三者で努力する。
※ 2021年、2022年シーズンにホームエリア内での試合開催が困難な場合、優先使用できるラグビー場など他の会場での開催を認めるようリーグ運営法人と調整する。
※ 各チームのスタジアム確保のため日本ラグビー協会、リーグ運営法人が支援する。
【事業運営】
各チームはチーム事務局、財務担当、競技・イベント運営担当、広報担当、営業・マーケティング担当等、各担当者を置くことを求められる。