開幕3節が終了したトップリーグ。
スタートダッシュに完全に失敗したチームをひとつ挙げるとするなら、NECグリーンロケッツということになるだろう。
12シーズンぶりにトップリーグに復帰した三菱重工相模原ダイナボアーズとともに開幕3連敗。しかも、その3敗の相手が、宗像サニックスブルース、日野レッドドルフィンズ、キヤノンイーグルスという、昨季の成績で言えば10位だったNECよりも下位のチームばかりとくる。
26日のキヤノン戦後の記者会見で、「(やろうとしたことが、)10%くらいしかできていない。悔しい」と、FL亀井亮依主将が涙を見せるほどの危機的状況。
ただし、ここまで3試合のスタッツを見てみると、意外にもNECの攻撃面での数字はそれほど悪くはない。
ボールキャリー、ゲインメータ共にリーグ6位。
にもかかわらず、ではトライ数はというと、リーグ13位と一気に下位になってしまうのだ。
この数字自体、いかにNECが効果的なアタックができていないかの証左とも言えなくないのだが、3戦目となったキヤノン戦では、この点に関してもシーズン中盤に向けて上向きになっていくのではないかという可能性は感じさせた。
浮上のキーマンになりそうなのが、キヤノン戦では奇しくも揃って日本代表ハーフ団と相見えた、和製新人ペアだ。
「球をさばくスピードにこだわりを持っている。開幕戦で10分間プレーして、ボールを動かす点でいいものが見られた」(浅野良太ヘッドコーチ)
そんな期待を受けて、キヤノン戦で初めて9番を背負ってトップリーグでプレーしたのがSH吉川浩貴。
トイ面だったキヤノンSH田中史朗が「球さばきのいい選手」と評価するなど、確かにテンポのいい球出しで、アタックにリズムをつくっていくスタイルには非凡さが垣間見えた。
吉川自身、大学(帝京大)時代あまりプレーチャンスがなかったこともあって、「トップリーグの強さを感じている。全然通用していない」と、学生時代とは比較にならないレベルの高さを感じてもいるが、「いいテンポを出せた時間帯はあった。その辺はよかった」と、自らの特徴が出せた点に関してはポジティブに自己評価。
「いま、チーム全体の空気が悪いところがあるので、そういう空気を変えるためにも自分ができるところで貢献しようという思いはある。9番として、いいテンポ、いいゲームの流れに持っていけるように、パス、キックの精度を意識していきたい」と、今後に向けての抱負を語っていた。
一方、この日の先発SOは190センチ、100キロという、日本人なら大型FWのサイズにカテゴライズされる巨漢ティム・オマリーが務めたが、後半、新人の金井大雪が途中出場してSOのポジションに入り、オマリーがCTBに回ってからの方が、アタックの流れはよくなったように見えた。
「あの状況(後半17分、5ー35というビハインドでの途中出場)だったので、インパクトを与えられるように、スペースにどれだけボール運べるかを意識した」と、チームの課題でもあるラインブレイクの少なさを改善するため司令塔としてボールの運び方を強く意識したプレーの一方で、持ち味でもあるロングキックでチームを盛り上げる場面もあった。
「スペースは見えているので、どうやってそこにボールを運んでいくのか、組み立てとスキルというのが課題としてある。スペースがなくならない間にスペースにどれだけ運べるか。キックも自分の武器ではあるので、うまく使っていけるように、有効なところでいいキック蹴られるように、精度のところにこだわっていきたい」
ここまでの3試合、リザーブからの途中出場が続いている金井に関して、浅野HCは「世界を知っている。強度の高い経験値がある」と、新人らしからぬ評価を与えている。
実際、金井は2015、2016年の2度にわたりワールドラグビーU20チャンピオンシップに出場し、U20日本代表の司令塔として世界トップ国と対戦した経験を持つ。
「海外の高いレベルの選手の中でできたというのは、自分の中では大きかった。プレッシャーの中でプレー、でかい相手の中で正確な動作をどれだけ速くできるかの必要性を感じた。そこを意識して練習するようになった」と、本人にも法政大1、2年生時に経験した世界最高峰の舞台で得たものの大きさに関する自覚はある。
もちろん、レギュラーSHとして考えられていた2年目の中嶋大希、あるいは元ニュージーランド代表SOスティーブン・ドナルドなどの復帰具合との兼ね合いもあるだろうが、ジャパン組と対峙しながらもそれぞれ特徴を出した新人ハーフ団に関して、浅野HCは、次戦のサントリー戦では「新人9、10(起用)の可能性も十分ある」。
ちなみに、キヤノンが誇る日本代表ハーフ団に対するそれぞれの印象は以下のとおり。
「(田中が)余裕というか、落ち着きがあるというのは、近くにいて感じた」(吉川)
「(田村が)プレー中によくしゃべっているなというのは感じた」(金井)
2人揃って「特には意識しなかった」というキヤノンのジャパン組との対戦を経て、新人ハーフ団がチーム全体をリードできる存在になった時、グリーンロケッツの逆襲が始まるのかもしれない。