ラグビーリパブリック

新旧国立競技場で2度の『荒ぶる』。早大・権丈太郎コーチが見た決勝戦。

2020.01.20

写真右が権丈太郎コーチ。キャプテンの齋藤直人をねぎらう(撮影:松本かおり)


 新旧の国立競技場で『荒ぶる』を歌った。早大の権丈太郎コーチだ。

 1度目は旧国立競技場で、2007年度の『権丈組』キャプテンとして。同期の畠山健介、五郎丸歩らと共に頂点を極めた。

 そして2度目は新国立競技場で、NEC引退後に就任した2019年度の『齋藤組』のFWコーチとして、日本一を遂げなければ歌えない部歌を全身で歌い上げた。

 権丈コーチは『荒ぶる』に感無量の様子だった。

「いや、もう、嬉しかったです」

 2020年1月11日の大学選手権決勝で、早大は45-35で明大を下し、11季ぶりの大学日本一になった。

 前半は「すべて準備したプレー」(WTB古賀由教)で5トライ35得点。アタックと同じく守備も際立っていた。明大の猛攻を止め続け、前半を無得点に抑えた。

「みんなよくタックルをしてくれました。去年の早明戦(12月1日/早大●7-36○明大)では、コンタクトの部分でやられていました」(権丈コーチ)

 チームは去年の早明戦から、タックルに入る前のセットの姿勢『勝ちポジ』を意識。勝ちポジとは「ディフェンスラインのセットの時に左足のスネを前傾させて、アゴを少し引いてセットする」(FB河瀬諒介)というもの。

 勝ちポジの意識が、鉄壁の防御につながった。このとき重要な役割を果たすポジションのひとつが両WTBだ。一般的にディフェンスラインの一番外側に立つことも多いため、オフサイドを含めディフェンスラインの全体を見通せる。
 WTB古賀がディフェンス時の役割を教えてくれた。

「僕やアツキさん(WTB桑山淳生)の課題は、『勝ちポジ』や『ノー・オフサイド』といったコールを積極的に出して、それをチームに80分間意識させ続けることです」

 ただ、たとえ80分間良いセットができたとしても、接点でひるめばゲインを許してしまう。権丈コーチには、その接点で重要になるマインドが変わった、という実感がある。

「(対抗戦の)早明戦で負けて、やっと自分たちの弱いところに向き合えた。今年から『ゲインラインで勝とう』と言っていたはずなのに、全部受けていた。ラグビーの本質的なところを明治大学さんから教わりました」

 たとえば完全に覚醒した感のある明大のLO箸本龍雅に対し、絶対に引かない。対抗戦から新たなことに取り組んだというよりは、「マインドのところが変わった」(権丈コーチ)。対抗戦での敗北が早大を強くした。
 
 コーチ1年目で達成した大学日本一。「想像を超えてやってくれました」。昨シーズンまでNECのバックファイブだった権丈太郎は、すでにコーチの顔だった。

 選手としてもコーチとしても大学日本一の味を知る人材がまた一人増え、早大の基盤はますます堅固になる。

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