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「1年間、やってきたことを」忠実さ貫いた明治。痛恨のセットプレー

2020.01.12

突き進む明大FW。ボールを持つ NO8坂和樹をサポートする笹川大五(撮影:松本かおり)

「早稲田大学さんがしっかりと、この試合にむけて準備をしてきたと感じました」

 連覇ならなかった明大・田中澄憲監督がさばさばと振り返った。

 1月11日、新国立競技場で大学選手権決勝が行われ、早稲田大が明治大を45-35で破った。早大は11年ぶりの優勝。明大は昨年に続く連覇はならなかった。

 明大の田中監督が触れたのは、圧倒された前半についてだった。スコアは明大0−31早大。戦った両者にとっても、見る者にとっても意外な、一方的な展開となった。

 前半の段階で大きく傾いた勝利の天秤だったが、後半、まず底力を見せたのはメイジ。開始間もなくBKを長駆させ左隅にトライ、ゴールもねじ込んで7-31に。ハーフタイムを絶望で迎えた明治ファンの士気をよみがえらせた。

 それだけに、明治にとって痛かったのは、その3分後のスクラム・ターンオーバーだ。自陣ゴールを背負って組んだスクラムから、ボールを奪われてしまった。

 結果的にボールが早稲田側に出たスクラムだったが、明治が早稲田に押し仕込まれていたわけではないのが悔やまれる。この時奪われた攻撃権が、早稲田に後半9分のトライを与えることになった。スコアは明大5-38早大になった。一気にまくって勝機をつなぎたい明治の、痛恨の場面になった。

「スクラムの前に意思統一をしてから組むべきだった」。リーダーとして責任を引き受けようとするのは明大主将HO武井日向。「押す方向を統一できなかった」。力が分散し、スクラムに投入されたボールを落ち着かせることができなかった。

 同じく4年生のPR笹川大五も、その時の心理を悔やんでいた。

「スクラムは優位という意識の中で、自陣ゴール前だったので、相手のペナルティを狙う意識があった。1番にいきすぎて、スクラム全体が右に流れてしまいました」

 スクラムは明治にとって特別なプレーだ。FWを前に出すスタイルはDNAに刻まれ、そのシンプルさには選手たちもプライドがある。劣勢をはね返そうとする選手たちにはその分、スクラムゆえの気負いが生じたかもしれない。明大FWの面々の意思が微妙にずれた。

 残り30分、明大5-38早大に。また勝利の天秤がカタリと早稲田に傾いた。

 PR笹川は、この日の大舞台にむけた、最後の1週間の準備について問われて答えた。

「意識してきたのは、日常生活で落ちているゴミを拾うとか、プレー以外も含めてディテールの面でした」

 この1週間、だけでなく、前の代から受け継いだチームで1年間続けてきたことを忠実に、この週も徹底して勝負の朝を迎えた。基本プレー、ディフェンス、コミュニケーション、スクラム…。80分間に表れた場面のすべて、この日の舞台に立っていること自体も、その結晶だ。勝負の綾からは少しだけ逸れてしまったが、自分たちを貫いた日々は、決勝の舞台を輝かせた。紫紺の歴史がまた前へと歩を進めた。