ラグビーリパブリック

先週末はアシスタントレフリー、今週末は開幕メンバー。トヨタ自動車・滑川剛人の充実。

2020.01.11

全国地区対抗大学大会で選手たちのサポートをした滑川剛人。(撮影/松本かおり)



 これまでにない多くのファンが見つめる中で、トップリーグがまもなく開幕する。
 全8試合がキックオフとなる1月12日の48時間前、同10日には各チームの出場予定選手が発表された。試合を待つファンの胸の鼓動は、いっそう高まっている。

 ヤマハ発動機と対戦するトヨタ自動車のメンバーの中に、つい数日前に全国大会ファイナルのピッチに立った選手がいた。
 21番のジャージーを着るSH滑川剛人(なめかわ・たけひと)だ。
 1月6日におこなわれた全国地区対抗大学大会の決勝、東京学芸大×名城大(32-31)でアシスタントレフリーを務めた。

 新たなセカンドキャリアをトップリーガーへ提案するものとして、インターナショナルレフリーへの道を歩み始めている滑川。トヨタ自動車は、日本ラグビー協会技術委員会と協議し、審判部門TID(Talent Identification and Development Program)プログラムへ同選手を派遣することを発表済みだ。
 すでにB級レフリーの資格を取得して高校の練習試合や東海学生リーグ(大学)公式戦で経験を積み重ねている最中も、全国レベルでのマッチオフィシャルは初めてだった。

 6日の試合当日、「何度もプレーしてきた瑞穂(パロマ瑞穂ラグビー場)にこういう状況で立てるなんて、選手と違う緊張感がありました。いい経験をさせてもらった」と話した。
 試合はラストプレーまで勝負の行方が分からぬ展開だった。張り詰めた空気の中で落ち着いて判断を重ねた。「あらためてルールを勉強しています。それが、ラグビー人生のプラスになっている」と言う。

 昨年の春、現・日本協会技術委員会審判部門の原田隆司部門長にレフリー挑戦の誘いを受けた。
「SHでレフリーの近くにいます。コミュニケーションをよくとるタイプなので、そういうところをみて声をかけてくれたのだと思います」
 現役選手としての活動には支障がないことを条件に活動している。レフリーとしての力を伸ばすための頭と体のトレーニングは、プレーヤーとしての時間の外でおこなう。「それでもチームや仲間が協力してくれているからやれています」と周囲に感謝する。
 今回開幕戦メンバーに名を連ねることができたのは、プレーヤー活動とレフリー活動の両立ができていることを示している。

 元日に30歳となったベテランも、レフリーとしては駆け出し。「現役プレーヤーとして、レフリーの中でいちばん走れないとダメだと思っています。他の人たちが追いつけないような展開にもついていきたいし、選手とのコミュニケーションも密にとりたい」と話す。
「高校(桐蔭学園)、大学(帝京大)、そしてトップリーグと、自分が通ってきた道にまた立てるようになるのが楽しみですね。やるからにはワールドカップを目指したい。プレーヤーである限り2023年のワールドカップに日本代表として出場することが目標ですが、その大会にアシスタントレフリーとしてでも関われたら嬉しいですね」
 そうなれば、次への切符も手にできると考える。

 これまでとは違う視点、違う方向からラグビーを見ることは、長くこの世界で生きていくときに必ずプラスになる。
 より豊かになった人生を歩みはじめた滑川剛人のプレーの変化にも注目したい。