先月(2019年12月)設立が発表された福岡の女子ラグビーチーム『ナナイロ プリズム福岡』のヘッドコーチが、1月9日、チームの運営母体一般社団法人『Nanairo lab』から発表された。
東京五輪へ向けて強化を進める男子セブンズ日本代表。その第2次オリンピックスコッドに名を連ねる桑水流裕策(くわずる・ゆうさく)が就く。
発表と同時に、本人のコメントも紹介された。
「この素晴らしいチームの一員になれることを大変光栄に思います。ヘッドコーチのお話しを頂き、ナナイロ のプロジェクトに共感したことと、私の今後のキャリアにとって大きなチャンスだと考え引き受けさせて頂きました。コーチングの経験はありませんが、多くのコーチの下でプレーした経験を基に、プリズムの選手とともに学びながら、日本一になるチームを作っていきたいと考えています」
本人は現在、東京・府中でおこなわれているセブンズ・ディベロップメント・スコッドの強化合宿に参加中だ(1月10日まで)。
同スコッドは1月8日、府中朝日フットボールパークで参加メンバーを3つに分けて内部試合をおこなった。
その試合に出場した桑水流は、「継続してセブンズでプレーしている選手たちと比べ、(自分は)アタック面でうまくプレーできていない」と自己分析した。
「15人制でのプレーが抜けていない。相手をズラし、オフロードパスなどでつなぐべきところを、ボールを抱えて低く当たったりしてしまいました。そういうところを修正していかないと競争に勝てないと思っています」
2005年に初めてセブンズ代表に選出され、大きな舞台を何度も踏んだ経験がある。2016年のリオ五輪では、トップ4に躍進したチームのキャプテンを務めた。
同大会後、長くプレーしてきたこと、五輪で出し切れた感覚があったため、セブンズ代表からは事実上引退した状態だった。
しかし、闘志にあらためて火がつく。2019年の初夏だった。
当時の気持ちを桑水流が思い出す。
「セブンズ代表が(ワールドラグビー・セブンズシリーズの)コアチームから落ちたのを見て、悔しさがこみ上げた。どうしてそんな気持ちになるのか考えたとき、やっぱり自分にはやり残したことがあるからだ、と気づきました」
リオで世界4位になった。その時は注目されたものの、その熱は長く続かず、セブンズはメジャー競技になれないままだ。
悔しい。やはりメダルを獲得しなければ、多くの人は覚えていてくれない。
だからもう一度、イチから挑戦しようと決意した。
湧き上がった思いを所属するコカ・コーラの向井昭吾監督に伝える。
強い意志は、同監督からセブンズ代表首脳陣へ。門戸は開かれた。
そうはいっても甘くはない。元代表主将とはいえ、7月下旬のオリンピック・シミュレーション時(チームは五輪時のスケジュールで動き、会場の東京スタジアムで試合を行った)は代表スコッドの練習試合相手のチームに入って再スタートを切った。
そこから積み上げた結果が、オリンピックスコッド入りだ。競争の真っ只中にいる。
欲求だけでは動いていない。セブンズ愛が、自分を突き動かしている。
「将来、セブンズがもっともっと日本で愛される競技になってほしい。そういう環境になることを思い描いています。そのためにはやっぱり東京オリンピックで、やっぱり多くの人たちが見ている目の前でメダルを獲れたら、セブンズの魅力を強く印象付けられると思う。だから、それを実現させたいし、その場に立つことに挑戦したい」
今夏の大舞台に、人生を懸けた渾身のチャレンジをする。
そして、セブンズとともに歩む人生はその後も続く。