東大阪市花園ラグビー場で熱戦が繰り広げられている第99回全国高校ラグビー大会は1月3日、準々決勝がおこなわれ、東福岡(福岡)、御所実業(奈良)、桐蔭学園(神奈川)、常翔学園(大阪第2)が勝ってベスト4入りした。昨年度のチャンピオンである大阪桐蔭(大阪第1)は、今シーズン春の選抜大会を制した桐蔭学園に敗れ、姿を消した。
春の王者と花園ディフェンディングチャンピオンが準々決勝で激突した。桐蔭学園は2年前の準決勝、そして前回大会の決勝でも大阪桐蔭に敗れていたが、今回の挑戦は31-12で制しリベンジとなった。
桐蔭学園は前半16分に先制した。敵陣深くのスクラムから攻めてゴールに迫り、守る大阪桐蔭は激しいタックルを繰り返したが、紺色ジャージーの背番号2をつけた中山大暉がねじ込んでインゴールに押さえた。リスタート後にはFL石塚勝己のビッグゲインを起点にテンポよくつなぎ、FL久松春陽大がフィニッシュで追加点。27分には自陣深くまで攻め込まれたが堅守でターンオーバーすると、大阪桐蔭のディフェンスがセットされないうちに、すぐにボールを動かしてカウンター。主将のSO伊藤大祐がランとキックで瞬く間に敵陣深くに入り、サポートもついて相手にプレッシャーをかけ、WTB西川賢哉がトライを決めた。
21-0で折り返した桐蔭学園は後半8分、カウンターラックでプレッシャーをかけてPGチャンスを得、CTB桑田敬士郎が確実に決めて加点。11分には自陣でのターンオーバーから攻め上がり、CTB渡邉誠人が中央突破で約50メートル走り切り、大差がついた。
大阪桐蔭は16分、敵陣深くのラインアウトから攻めてゴールに迫り、HO江良颯が突進してラインを越えた。25分にはゴール前でFWがパワープレーで挑み、NO8奥井章仁もトライゲッターとなり勝利への執念を見せたが、反撃が遅かった。
勝った桐蔭学園の藤原秀之監督は、「リザーブも含めて一体となったラグビーができた。先制できたのが大きかった。今日はできるだけ点数を取りたいという気持ちもあったし、ディフェンスにもフォーカスしていた」と試合を振り返る。
キャプテンの伊藤は「大阪桐蔭のタテの圧力に対して、『倒しに行こう』と全員の気持ちが込められていたのが一番よかった」とコメント。そして準決勝へ向けて、「自分たちはもっともっと集中すべきだし、いま自分たちにできることを精いっぱいやりたい。次の相手もリスペクトして、しっかり研究して、自分たちがどういうラグビーをするのかしっかり決めてやりたい」と話した。
その桐蔭学園と準決勝で対戦することになったのは東福岡だ。
3季ぶりの花園制覇を目指す東福岡は準々決勝で流通経済大学付属柏(千葉)と対戦し、57-10と快勝した。フィジカル強く、テンポの速いラグビーで計9トライ。
東福岡は前半3分、WTB高本とむがキック&チェイスで相手にプレッシャーをかけ、ゴール前でこぼれ球を拾って先制した。9分にはWTB松岡大河が左サイドを突破し、サポートについていたLO森山雄太につなぎ連続トライを挙げた。リスタート後には、自陣深くからボールを回し、WTB松岡がビッグゲイン、ゴール前でパスをカットされいったん相手にボールを渡してしまったが、ブレイクダウンでターンオーバーし、左へのすばやい展開でWTB高本がインゴールに持ち込み大きくリードした。
対する流経大柏は17分、WTB齋藤弘毅がハーフウェイ左外から鋭く内に切り込んで敵陣深くに入り、たたみかけ、LOディアンズ ワーナーがタックルされながらも2メートルの長身を活かしてインゴールに押さえ、5点を入れた。
しかし東福岡の勢いは止まらず、24分、FB行徳冠生のブレイクスルーを起点にチャンスとなり、連続攻撃をCTB有吉健がフィニッシュ。25分にはLO森山の力走から、パスをもらったWTB高本がハットトリックを達成し、33-5とした。
後半、FL永嶋仁、CTB廣瀬雄也などもファイブポインターとなってリードを広げた東福岡に対し、流経大柏は22分、自陣からフェイズを重ねてゴールに迫り、HO小澤剛成がインゴールに突っ込みチーム2トライ目を挙げたが、大差の決着となった。
勝った東福岡の藤田雄一郎監督は、「選手たちは落ち着いていた。一つひとつの精度が高かったので、こういう結果になったと思う。トップ4に入るということは、この1年やってきたことが間違っていなかったという証だと思うので、今日のゲームは勝ててうれしい」と試合を振り返った。
廣瀬キャプテンはチームの成長を感じていると話しながらも、ゴール前でミスがあったと反省。「ベスト4になってくると相手のディフェンスもしつこくなってくると思うので、しっかりトライを取れるようにやっていきたい」と、準決勝へ向けて気を引き締めていた。
春の全国選抜大会で準優勝だった奈良県立御所実業は、同じ近畿のライバルである東海大学付属大阪仰星(大阪第3)と対戦し、14-0で競り勝ち、3年ぶりのベスト4入りとなった。
御所実は前半7分、攻め上がったWTB澤口飛翔がキックを使ってインゴールに転がしたボールを自ら押さえ、先制。
7-0で折り返した後半3分には、敵陣22メートルライン外から走り込んできたFB石岡玲英が防御網を切り裂いてゴールに持ち込み、石岡のコーンバージョンキック連続成功も貴重な追加点となった。
御所実は後半18分、危険なタックルをしたFW選手にイエローカードが出され、一時的に1人少なくなったが、踏ん張った。黒いジャージーの男たちはこの試合、特にブレイクダウンのファイトが光り、ターンオーバーを連発。追い込まれた東海大仰星はミスも出て流れを変えられず、ゴール前のラストアタックも御所実の堅守に阻まれ、接戦は14-0でノーサイドとなった。
勝った御所実業の竹田寛行監督は、「センターエリアでたくさんのミスがあったが、ミスの数がウチの方が少なかったように思う。それと、ブレイクダウンのところで少しウチが勝っていたような気がする」と勝因を挙げた。
この試合で自らトライも決めたリーダーの石岡は、「チームで試合前に決めたことを、一つひとつ、みんなが同じ方向を向いて、ひたむきに60分間やってくれた。いいゲームだったと思う」と振り返り、初優勝へ向けて次の戦いを見据える。
そして、準々決勝最後の試合を制したのは常翔学園だった。春の近畿大会を制し、全国選抜大会で桐蔭学園と大接戦を演じたAシードの京都成章(京都)を相手に、土壇場のラストアタックで逆転トライを挙げ、27-24で劇的勝利に歓喜した。常翔学園は優勝した2012年度の第92回大会以来、7年ぶりのベスト4入りである。
前半をリードしたのは京都成章だった。
PGで常翔学園が先制したが、京都成章は前半11分、FB大島泰真の好走などで敵陣深くに入り、連続攻撃、重量FWが近場を突いてLO本橋拓馬がインゴールに押さえた。12分には途中出場のWTB下村滉志郎が躍動して大きくゲインし、サポートしたCTB松澤駿平がゴールへ駆け抜けた。
常翔学園は15分、FB吉本匠希が自陣10メートルラインから抜けてそのまま走り切り、点差を詰める。
それでも京都成章は27分、ディフェンスでターンオーバーして間もなく、本橋が敵陣10メートルライン手前から中央を突破し、身長191センチ、体重110キロの巨漢ながら走力もあるこの高校日本代表候補の2年生ロックは40メートル以上走り切り、点差が開いた。
11点ビハインドで折り返した常翔学園は後半7分、自陣から攻め上がって連続攻撃でゴールに迫り、CTB岡野喬吾がタックラーを弾き飛ばすなどしてトライを決め、6点差に詰めた。16分には主将のPR為房慶次朗が突破したあと、同じフロントローの山本敦輝、寺西翔生と力走が続き、すばやいリサイクルからFB吉本がフィニッシュ。吉本のコンバージョンも決まり20-19と逆転した。
追う立場になった京都成章は24分、ラインアウトからモールで押し込み再びリードを奪う。
27分に常翔学園がSO仲間航太の突破から継続して敵陣深くに入るも、青・黄色ジャージーの背番号5山本嶺二郎がブレイクダウンでターンオーバーし、京都成章が逃げ切るかと思われた。
しかし、ドラマは終わっていなかった。
常翔学園は試合終了間際、自陣からの猛攻で敵陣22メートルラインに迫り、京都成章の激しいディフェンスにいったん押し戻されたがボールをキープ、そして、左への展開でパスをもらったWTB生駒創大郎がタッチライン際でタックラーを振り切って鋭く内に切り込み、必死に戻った京都成章の選手もかわしてインゴールに持ち込み、劇的な逆転ゲームとなった。
これでベスト4入りが出そろい、準決勝(1月5日)の組み合わせ抽選がおこなわれ、対戦カードは第1試合が常翔学園×御所実業、第2試合が桐蔭学園×東福岡に決まった。