ラグビーリパブリック

早大の下川甲嗣はジャッカルされない。ラグビーイヤーに描いた未来。

2020.01.02

早大の下川甲嗣(ボール保持者)。ハードワークで頂点を目指す(撮影:早浪章弘)


 2019年の流行語大賞にノミネートされたラグビー用語のひとつに、ジャッカルがある。倒れた相手の持つボールへ絡み、奪いにゆくプレーだ。

 日本代表の姫野和樹が、ワールドカップ日本大会で8強入りするまでの間に要所でジャッカルを披露。その模様は普段ラグビーを扱わないワイドショーなどでも特集された。攻撃権獲得のきっかけとなるジャッカルは、チームに活気をもたらしうる。一方で球を持った側には、ジャッカルをされない技術が求められる。

 1月2日の大学選手権準決勝(東京・秩父宮ラグビー場)に挑む早大にあって、ジャッカルのされにくいランナーとされるのが下川甲嗣。身長187センチ、体重104キロの3年生LOだ。

 コンタクト時にはタックラーの芯から逃れるなどし、倒されるとしても前に出ながらラックを作る。球を芝に置く際も、直前に地面で足をかいたり、自分の真上に相手の腕がありそうな時はほんの少しボールを懐に隠したり。接点で相手に絡まれぬためのひと工夫で、チームのお家芸たる攻めのテンポを保つ。

 ランニングスキルとボディバランスの肝を、本人はこのように語る。

「(相手に)当たってからのボディコントロール、当たってすぐ倒れるのではなく味方を待つことなど、ボールを置くまでにできるアクションがあると思う。それを練習から意識しているので、試合ではあまり意識していないです」

 地道なトレーニングでスキルを身体化させる下川は、福岡の修猷館高卒業後のルーキーイヤーからNO8のレギュラーに抜擢された。LOに転じたのは昨季からで、「今年は去年に比べてだいぶ、ポジションには慣れてきて、求められる動きを理解できた状態でプレーができている感じはします」。チームの攻撃システムを踏まえ、こう意気込む。

「バックロー(NO8など)に比べてコートの中心でプレーすることが多く、そのなかでいかにハードワークするかでスコアが変わってくる。それが去年、わかったので、他大学のLOよりは絶対に走るという気持ちは強まりました。LOはスクラムでもラインアウトでも核になり、運動量やきつさでいったら15人の中で一番に近いくらいだと思うのですが、そこでいかにハードワークするか、です」

 12時20分キックオフの準決勝第1試合では、昨季準優勝の天理大とぶつかる。2008年度以来16度目の日本一を目指すのはもちろん、競技人としてのさらなるステップアップを誓う。2019年秋、こう決意していた。

「どういう形でかはいま考えているところですが、ラグビーを続けることは決めている。将来的には代表を目指せる選手になりたいです」

 ワールドカップ日本大会の試合を観ながら、考えたことがある。姫野ら日本代表のメンバーの多くが4年前のイングランド大会時はまだ大学生で、「自分と同じように(日本大会を)意識していたんだろうな」。2023年のフランス大会時、下川はその年度の誕生日を控えた24歳。現在25歳の姫野と同じく、社会人3年目でワールドカップを迎える。

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