ラグビーリパブリック

日本の皆さん、この漢字 読めますか?

2019.12.20
バーシティ・マッチのオックスフォード大のジャージーにもあの文字が(撮影:竹鼻智)

バーシティ・マッチのオックスフォード大のジャージーにもあの文字が(撮影:竹鼻智)



 世界のスクラムマシーン市場最大手のライノ・ラグビー。CEOを務めるレジ・クラーク氏は、1980年代前半に神戸製鋼でスタンド・オフとして活躍した経歴もあり、日本ラグビー界と強い繋がりを持つ。各国代表やプロクラブへのオフィシャルサプライヤーとしての実績を持つライノだが、独自の競合構造を持つ日本市場でその存在感をアピールする為、一風変わった宣伝方法を思いついた。

ライノ(Rhino)は日本語で、サイ。

 普通の日本人であれば誰もがカタカナか平仮名で書くこの単語、漢字では“犀”と書く。今年のワールドカップで日本を訪れたクラーク氏とライノの関係者たちは、日本での宣伝を兼ねて、犀の漢字を前面に大きくプリントしたTシャツを作成し、各地で着用した。当然、日本人なら誰でも意味の分かる漢字だと思っていた海外のライノ関係者たちだったが、各地で受けた反応は予想に反したものだった。

 誰も、この漢字が読めない。

Rhino を日本語の漢字にするとどう書くかをインターネットで検索しTシャツのデザインに使用した。

 だが、この漢字は一般の日本人には通常使われていないという事が分かったのは、数百枚のTシャツを作成した後だった。しかし、ここで日本でのワールドカップを記念して作ったTシャツを回収してしまうようでは、逆にライノブランドの名が廃る。大会中、ライノ関係者は、首を傾げて不審げに笑う日本人に対して、「この漢字は“サイ”と読むんだ」と堂々と語り続けた。

「これを機に、日本のラグビーファンの方たちが、新しい漢字を覚えてくれたのであれば大変嬉しく思います。少なくとも、話題になってくれれば、私たちの目的は達成されたと言えるでしょう」とは、クラークCEOの言葉。

 転んでもタタでは起きないどころか、転んだことすら認めない氏のガッツは、ラグビーで培われたものか、或いはビジネスマンとしての逞しさか。

さらには、この漢字ロゴが格好いいものだと一歩も譲らないライノ関係者たちは、12月上旬に行われたオックスフォード大学対ケンブリッジ大学の伝統の一戦、バーシティ・マッチで両チームが着用したジャージーにもこの漢字をプリントした。地上波で全国生中継され、大きな注目を集める試合で着用されたジャージにプリントされた“犀”の文字は、妙な背景から、多くの人の目に触れることになった。漢字プリントジャージは選手たちにも非常に好評で、ライノではこの漢字をプリントしたデザインのアパレル商品を開発するか、現在真剣に検討しているという。

本来は日本語であるこの犀という漢字。意図していなかった背景があったとしても、これをきっかけに日英両国の人々にこの漢字が知られるようになったとすると、関係者たちは笑いが止まらないだろう。