歓喜の瞬間が訪れたのは、後半のキックオフから50分以上経った時だった。
12月8日に熊谷ラグビー場でおこなわれた関東大学リーグ戦グループの1部・2部入替戦で、2部-2位の関東学院大学(以下、関東学大)が1部-7位の拓殖大学(以下、拓大)に勝ち、来季は3年ぶりに1部で戦うことが決まった。
NO8鈴木伊織主将、HO岡輝剛のトライなどで前半を17-14とリードするも、関東学大は、後半立ち上がりに拓大FLアセリ・マシヴォウに2トライを奪われてあっさり逆転を許した。
その後、攻めても仕留め切れず、何度も攻め込まれた。しかし、なんとか粘り、差を詰めたのは後半32分。ラインアウトからフェーズを重ねてFB小出惇矢がインゴールに入り、CTB芳崎風太がゴールを決める。24-28と迫った。
その5分後だった。
関東学大は相手キックを受けてカウンター攻撃に転じる。多くの選手がそれに反応して左サイドを攻め上がり、最後はNO8鈴木主将がラストパス。それを受けたWTB福士萌起がトライを奪い、逆転に成功した(Gも決まり31-28)。
ただ、それから歓喜の時間を迎えるまでが長かった。
リスタートのキックオフを受けた関東学大はボールをキープし続けたかったが、ノックオンで拓大にボールを与えてしまう。しかし、スクラムから攻めた拓大もボールを落としてマイボールでのスクラムを得る。場内の時計は40分を過ぎていた。
そこから攻撃を仕掛けた。ところが、今度はターンオーバーされてボールを奪われた。嫌な空気が流れた。
フェーズを重ねられて自陣に攻め込また。そして、危険なタックルでイエローカードをもらう。14人となった後、拓大にPK後のラインアウトからモールで攻められた。
フェーズを重ねられたが守り続けた。関東学大にとっては、反則をしてPGを決められたら引き分けとなる状況。それでは昇格できない。
そんな中で辛抱強く守り、最後は相手のノックオンを誘った。
我慢を重ねての劇的な勝利に板井良太監督は、「最後は選手たちを信じていました」と話し、目に涙を浮かべていた。
先制トライを決めるなど、先頭に立ってチームを鼓舞した鈴木主将は、逆転トライを呼ぶラストパスのシーンを振り返り、「相手を引きつけてパスをすることを考えていました。(WTB福士)萌起を信頼しているので、フリーにすれば絶対に走り切ってくれると思っていた」。
劣勢の時間帯も「勝つことしか頭になかった。フィットネスには自信があった」と胸を張った。
第2試合は、A-8位の中央大学(以下、中大)がB-1位の立正大を破った。8トライを奪い52-24。集中力高く戦い、接戦の予想を覆した。
勝者は先制点を許した。しかし、スクラムで圧力をかけ、防御でも前に出る。SO侭田洋翔がうまくゲームを進め、堀井拓哉と竹ノ内健太の両WTBが大胆に走った。リーグ戦中はなかなか噛み合わなかった歯車がうまく回り、チームにまとまりがあった。
攻撃的にスクラムを組んだPR有藤孔次朗は、「最後に自分たちの目指してきたラグビーができた」と笑った。
「新しく取り組んだラグビーをなかなか自分たちのものにできなかったけど、時間をかけたことが生きた」
後輩たちに1部で戦うバトンを渡すことができてホッとしていた。