関東大学対抗戦Aの全勝対決となった12月1日の早明戦。2万人超の観客を前に、早大はキックオフ早々に理詰めでエリアを奪いにかかる。
前半3分頃、SHの齋藤直人主将がハーフ線付近左のラインアウトから高い弾道のキックを放つ。明大陣地22メートル線付近にいた明大の捕球役へ早大のFLの幸重天副将、WTBの古賀由教が好タックル。明大の反則を誘う。
しかしその後は明大が堅陣を敷き、最後は同エリア右で孤立した早大のランナーへ明大FBの雲山弘貴がジャッカル。早大のノット・リリース・ザ・ボールでプレーが終わった。その後も明大は早大のカウンターアタックを防ぐなどし、10分頃にはこの試合最初のスクラムでペナルティキックを獲得。早大陣地ゴール前まで進んだ17分、5-0と先制した。
早大が攻めても点を取れない流れは、10-7と接戦だった前半、徐々に点差の動いた後半を通して変わらなかった。「(どちらが接点へのサポートに速くつくかという)レースの部分で明大さんに負けていた。集中力、精度が足りなかった」とは幸重。早大ボールの接点に絡んでくる明大の選手をはがせなかったことを振り返り、「(相手に接点に)入られている時点で、レースに負けている。そこを改善しなきゃ」とうなだれる。
結局、36-7で勝利する明大が再三ジャッカルを繰り出せたのは、組織防御を保てたからだ。個々が冷静かつタフに動いた。
具体的には、相手の攻撃陣形を見定めて防御ラインをその都度変質。LOの箸本龍雅いわく、総じて「(選手間の)幅、相手SOへのプレッシャー」を意識した。明大の左PRの安昌豪は、こう胸を張った。
「コミュニケーションを大事にしていた。ラックができた時から常にコネクション(左右のつながり)を大事にしていました」
早大の必死の抵抗を明大が跳ね返したのは、明大の攻撃中も同じ。明大のFW陣は、コンタクト時のフットワークで早大のタックルの芯から逃れる。徐々に前進して勢いがつきそうなところで、味方SOの山沢京平が鋭いパスを大外のスペースに放った。
防御と同様、攻撃でも我慢比べを制した格好。殊勲の坂が言う。
「試合前から相手の防御は我慢強いとわかっていましたけど、自分たちも我慢強くアタックすればいつかほころびが起きると思っていました。逃げることなく、自分たちがやって来たことで真っ向勝負。最初に身体を当てた段階で自分たちのペースはつかんでいました」
この「真っ向勝負」が正面衝突に限らないのは、個々の動きと坂の言葉を振り返れば明らかである。
「ボールキャリー(ランナー)が(相手を)ずらす部分は今年、フォーカスしてきました。コンタクト自体が強い選手は多いですけど、(そのなかでも)ゲインライン(攻防の境界線)を切ってくれる選手の方が(チームの攻めの)テンポを出しやすい。ずらして、テンポを出す」
かたや徐々に差し込まれる早大にあっては、幸重が唇を噛んでいた。
「自分のタックルのスキル(が足りなかった)。飛び込んで、自分が先に足が死んじゃう(膝が伸び切る)ことが多かった。明大さんのアタックがうまかったです」
ターニングポイントはハーフタイム明け。後半2分、8分と明大が連続でスコア。24-7としている。
そのうち1本目のトライのきっかけは、明大陣地10メートルエリア右のラインアウト。最初にパスを受けたNO8の坂和樹が早大のタックラーへぶちかまし。接点の後方からSHの飯沼蓮が球を高く蹴り上げると、弾道を追ったWTBの山崎洋之が好捕。ここからCTBの射場大輔が右の狭い区画、箸本が中央を順に突破した。
そのまま明大は同22メートルエリアで左、右と球を動かし、最後は深い位置に立っていたHOの武井日向主将がトライ。続く8分にはラインアウトモールから加点した。
なお8分の1本が決まる直前には、明大が敵陣での早大ボールスクラムで圧をかけ、反則を誘っていた。「前半はヒットで乗れて(相手に重さを伝えられて)いなかった。ハーフタイムに『ヒットで前に出よう』とコミュニケーションを取って、(当該のシーンでは)バックファイブ(後ろの味方)から圧がもらえた」とは、安の弁だ。8対8で組むスクラムにおいては概ね明大が優勢。早大の右PRの小林賢太はこう悔やんだ。
「自分たちの間合いで組めていない時はいいスクラムが組めていなかった。ヒットで速く当たって組めればよかった……」
両軍は以後、全国大学選手権へ参加。12月21日の準々決勝をふもととし、それぞれのルートから頂上を目指す。
敗れた早大では幸重が「もしもう1回(明大と)やる時があれば、ひとりひとりのタックルのスキル、我慢強さを身に付けリベンジできたら」と、小林は「ディフェンスで我慢しきって、スクラムを自分たちの間合いで組めるようにしていけたら」と具体的な課題を挙げる。
攻守の粘りと強力なセットプレーを示した明大では、安が「やることは変わらない」と断言。従来通り、防御時に規律を守ったり、攻撃時に素早いポジショニングをし続けたりできるよう互いに声を掛け合うつもりだ。
「これ(早明戦)は自信につなげますけど、おごらず、チャレンジャーの気持ちを忘れずにやっていきたい。普段からコミュニケーションを取って、練習中も1年間意識する『ノーオフサイド!』『オールオプション!』など、キーワードを言い合う。変わらずいい準備をしたいです」
再戦があるとすれば、お互いに1月11日の決勝(東京・国立競技場)まで進んだ時のみだ。