納得がいかなかった。自分のプレーに対して。
「身体を張り続けるところ、タックルの精度です。僕のところでゲインも切られた部分もあったので、ずっと出続けるにはそこを修正しなきゃなと」
ファーストネームは「いぶき」、と読む。帝京大ラグビー部3年の近藤芽吹は11月30日、関東大学対抗戦Aの慶大戦で先発。初めて対抗戦でスターターに入ったこの日は、持ち場の左PRにあっては珍しい80分間フル出場を果たしていた。
何度もコンタクトシーンに出現。球を持てば慶大のロータックルを真正面から受け止め、相手の芯から逃れるように前進した。しかしチームは、7-19とリードされてハーフタイムを迎えてしまう。終盤に追い上げながらも、24-29で敗れた。背番号1の表情は冴えない。
「試合の入りの部分は修正しなくてはいけないところです。(後半は)耐えたらチャンスが来るという思いでやっていたのですが、そのチャンスでもミスしてしまって……」
身長177センチ、体重108キロ。新潟のニシカンジュニアラグビークラブで楕円球と出会い、西川中を経て新潟工高へ入学。同高の8学年上には日本代表の左PRとしてワールドカップ日本大会で8強入りの稲垣啓太がいる。
「笑わない男」として注目される稲垣は、大会前に母校のグラウンドの天然芝化を支援するなど郷土愛の強さで有名。母校の練習にも足しげく通っていたのだが、なんと近藤の真摯な取り組みや身体の強さに当時から注目していた。樋口猛監督にその意思を伝えたら、恩師も同意見だったという。
期待の戦士は高校2年までFLとしてプレーし、3年時から稲垣と同じ左PRへコンバート。高校日本代表に入った。何度も助言をもらったというレジェンドについて、こんな思いを述べる。
「物静かでも熱いものを秘めている。80分間戦い続けられるタフさは見習わなければならないと思います。PRにはスタミナ、タフさ、スクラムが大事になる。(稲垣は)何を取っても一流なので、全体的にレベルアップをしなければいけない」
入学時、大学選手権8連覇中だった帝京大では、右ひざ前十字靭帯のけがでルーキーイヤーを棒に振った。対抗戦デビューを飾ったのは、今年の11月24日の明大戦だった。10-26で迎えた後半19分に途中出場。17-40と屈したなか、突進とタックルで見せ場を作った。
振り返れば6月2日に千葉であった明大との練習試合を前に、肩を故障。周りに手術を勧められるなかでも出場を目指したものの、出番を得られず17-35での敗戦を見届けていた。
「明大への思いはありました。絶対に身体を張り続ける。そこだけはやりきる」
一昨季までに全国V9を果たしたチームは、今年度の対抗戦で早大にも負けていて通算4勝3敗。2季ぶり10度目の日本一に向け、さらなる進化が求められている。もっとも明大戦直後の近藤は、「やっと、伸びてきた」。試合を左右するぶつかり合いで手応えをつかみつつあるだけに、決して下は向かない。
「うまくいかないこともあったけど、試合に出ることもできた。ここをゴールにせず、貢献できるようになりたいです。チームは春、夏と試合に負けることがあったり、身体を張り続けられなかったりもしました。でも、やっと、伸びてきた。負けはしましたけど、次に活きる敗戦です」
対抗戦3位の帝京大は、大学選手権に12月15日の3回戦から登場。埼玉・熊谷ラグビー場で、関東大学リーグ戦3位の流経大とぶつかる。