ラスト10分、グラスゴーのスコッツタウンスタジアムのスタンドは静まり返った。
サクラのジャージーが、またもやスコットランドを破った。今度は敵地で。
11月24日におこなわれたテストマッチ。女子15人制日本代表(サクラフィフティーン)が女子スコットランド代表に24-20のスコアで勝った。
前半は10-10。サクラフィフティーンは開始2分過ぎに先制点を許すも、パスを多くつなぐスピーディーな攻撃で反撃に出る。5分過ぎにHO藤本麻依子らの前進からチャンスをつかんでWTB谷口令子が右スミに飛び込む。その2分後には大きくゲインした逆のWTB葛西杏奈をFL齊藤聖奈がサポート。インゴール左に飛び込んだ。
その後はミスや反則で攻め切れず、強力モールに押されて10-10とされるも、同点でハーフタイムに入った。
後半、雲行きは怪しくなった。
サクラフィフティーンはセットプレーが不安定になった。そして、反則も増したからだ。
16分に連続攻撃からWTBミーガン・ガフニィーにトライを奪われ、20分には反則後のPK→ラインアウトからモールを押し切られる。
10-20とされて残り時間は20分を切った。
ただ、選手たちの気持ちは折れていなかった。FL齊藤が振り返る。
「通用しているところは、いくつもあったので」
いま、やるべきことをひとつずつやっていこう。
そう言葉をかけあって戦い続けた。
追い上げのトライは後半32分だった。10点差をつけ、安全に試合を進めようとするスコットランドに対してしつこく攻め続け、好機をつかんだ。
10フェーズ近い攻撃を続けること2度。相手を走らせた後の敵陣深くのスクラムから左へ展開。CTBをタテに走らせた後にFWでトライラインに迫って攻め立てた。
最後は途中出場のPR江渕まことがゴールポストの右の根っこにボールを置く。FB平山愛のゴールキックも決まり、17-20と迫った。
逆転は残り2分を切った時だった。
サクラフィフティーンは敵陣でのラインアウトでボールを失うも、相手の蹴ったキックを受けて攻め上がる。ここで途中出場からNO8の位置に入っていた小西想羅がパワフルに前に出た。倒されてもすぐに立ち上がり、置いたボールをピックして前へ。「そういうプレーを期待されていたので」(小西)と、それを3連続で続けた。
相手がたまらず反則すると、SH津久井萌が速攻を仕掛けて前へ出た。そして最後は、こちらも後半途中からピッチに立ったSO大塚朱紗がラインブレイク。そのままインゴールに入ってスコアをひっくり返した。
平山のゴールキックも決まり、スコアボードには24-20の数字が刻まれた。
殊勲のトライを奪った大塚は、「SHから内があいていると聞いていたので、そこを狙って走りました」とトライシーンを回想する。前週のイタリア戦で代表キャップを初めて獲得したが、思うようにプレーできなかった。その反省を生かし、「自分らしく動こうと思った」結果だった。
PR南早紀主将はワールドカップの日本×スコットランドをスタジアムで観戦して感動し、今回の欧州ツアーに向けて「勝ちたい気持ちがいつも以上に強かった」と振り返る。
「ワールドカップのとき、スコットランド戦のジャパンは、リードしていた最後の時間帯、我慢して守り切った。きょうの私たちはリードされていた最後のあの時間、我慢し、忍耐、忍耐で攻め切った。それが勝因だと思います」
横浜の夜のような大観衆はなかったけれど、敵地でのスコットランド撃破は、これまた気持ちよかった。
スコットランドの人たちの胸に、日本ラグビーをまた深く刻み込んだ。