ラグビーリパブリック

【ラグリパWest】2年目の成長。 第56回大学選手権代表決定戦から

2019.11.21

試合終了後、環太平洋大の町野天主将は3年生SOの新里光希に声をかける



 第56回大学選手権の東海・北陸・中国・四国の代表決定戦が11月16日、岐阜県の長良川球技場メドウで行われ、朝日大(東海・北陸代表)が環太平洋大(中国・四国代表)を55−5(前半19−0)で破り、8大会連続8回目の本大会出場を決めた。

 岡山県にある環太平洋大は英語の頭文字(International Pacific University)からIPUとも呼ばれる。  
 ラグビー部創部は開学と同じ2007年。13年目に入った。
 現在の監督はFLとして日本代表キャップ4を持つ小村淳。2年目を迎えている。

 この日、地元・岡山からはバス3台に分乗した学生ら150人が5時間かけ、岐阜入りをした。しかし、その応援にチームは応えることはできなかった。

「もっとやれると準備してきたつもりでしたが、僕を含めチームの甘さが出ました」
 49歳の小村は経験を歓喜に変えられず落胆する。これまで指導を施したチームは社会人・トップチャレンジの釜石シーウェイブスや母校の明大など両手に近い。

 ただ、進歩がないわけではない。
 小村が着任した昨年は同じ相手に59−17。点数の差はあまりないが、昨年の前半は40−5。今年は19−0。最初の40分は戦えた。
「去年は前半で終わっちゃったから」
 小村は振り返る。

 健闘は敵将も感じていた。
 0−7だった前半29分には、朝日大監督の吉川充がベンチまで降りてくる。それまでは、スタンドの上から指示を送っていた。
 圧勝でしたね、という質問に即答する。
「いやいや。IPUはチームとして強くなっています。いい選手を獲っている。ウチが声をかけた選手数人も入学しています」

 環太平洋大には今年、初の外国人留学生が入部した。ニュージーランド出身のティエナン・コステリーとマイカ・ナシラシラだ。
 FLのコステリーはスーパーラグビー、ブルーズのU18に選ばれた。アイランダー系のナシラシラはCTBで突破力に富む。

 指導陣も整いを見せる。今年4月にコーチの富川昂、フィットネスなどを高めるS&Cコーチとして高山慎が加わった。
 富川は昨年度、明大のアシスタントコーチとして監督の田中澄憲を補佐し、22大会ぶりの大学選手権制覇に貢献している。

 ただ、朝日大は環太平洋大を上回る3人の留学生が先発していた。さらに、大学選手権は今回を含め8大会連続で出場している高い経験値がある。
 主将の町野天は敗因を分析した。
「緊張感から空回りしてしまいました」


環太平洋大(赤)は後半、朝日大にスクラムからプレッシャーをかけられる



 試合開始のキックオフ。コステリーがボールを再獲得。SO新里光希が選択したプレーは蹴りだった。小村は呆然とする。
「裏キックなんて練習で1回もやっていない。テンばってしまっていました。もちろん、そうさせてしまったのは私の責任です」

 環太平洋大は中・四国では敵なし状態。国公立大が多いリーグ戦では、競った試合を戦えない。チームは積極的に関西に遠征して京産大や近大などAリーグのチームと試合を組む。それでも、やはり初めての大学選手権出場がかった一戦は違った。

 町野は170センチ、100キロに満たない体で、左PRとして朝日大との最前線で戦った。後輩たちにフィジカルの強化などを訴えた上で心の結束を呼びかける。
「まとまってほしい。ワン・チームですね。トライを獲られた後、しゃべりたいことがあったらしゃべるというのではいけません」

 後半3分、2次攻撃でトライラインを越えられると、そこから大崩れ。6トライを許した。疲労が漂う局面で「我先に」の状況になれば統制はつかず、勝利はおぼつかない。

 町野は4年間を総括する。
「負けの悔しさはあるにせよ、今はすっきりしています。自分ではやりきりました。3年の時に小村さんに監督が変わって、戦術や組織がしっかりしてきました」

 大阪・高槻一中でラグビーを始め、冬の全国優勝4回、歴代6位の記録を持つ伏見工(現京都工学院)に進んだ。3年時にはレギュラーとして95回全国大会(2015年度)に出場する。3回戦で優勝する東海大仰星に5−41で破れた。

「僕らの学年は28人いましたが、半分は就職しました。僕も高校で燃え尽きた感じがあったのですが、IPUから誘ってもらえたので、ラグビーを続けることにしました。ここに来てよかったです。キャプテンもさせてもらえました」

 卒業後はカナダに渡る。ワーキング・ホリデー・ビザを取得して、1年間、現地で語学校に通ったり、働いたりする。
「しばらくラグビーはいいです。10年間やりましたから。これからは英語を勉強して、人生に生かしたいと思っています」

 環太平洋大は来年、スポーツ推薦で15人ほどの入部が決まっている。冬の全国大会2年連続8強の報徳学園や初出場を決めた大分東明などから新入部員が集まる。新しい外国人留学生もやって来る予定だ。
 町野たち代の一年をよき遺産として、可及的すみやかに大学選手権に至りたい。

 なお、勝った朝日大は11月24日(日)の選手権1回戦で東北・北海道代表の八戸学院大と対戦する。会場は同じ長良川球技場メドウ。キックオフは午後1時である。


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