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イングランド、ベン・スペンサーを負傷カバーの緊急招集

2019.10.29

サラセンズのSHベン・スペンサーが追加招集。イングランドが集大成へ(PHOTO:Getty Images)

 準々決勝でオールブラックスを破る金星を挙げたイングランドだが、この試合で途中出場したSHウィリー・ハインツがハムストリングを負傷し、決勝戦への出場が不可能に。これを受け、急遽、サラセンズ所属の27歳、3キャップを持つ、ベン・スペンサーが日本へ呼ばれた。

 31人の登録選手中、専門職であるSHはベン・ヤングスとウィリー・ハインツの2人だけ。大会出場登録選手発表の際には、「この31人のメンバー編成ではリスクをとった」エディー・ジョーンズ監督は10月27日の会見で自身の選択を説明した。

 準決勝という大会の山場で、手薄でありながらも鍵となるポジションで負傷者が出るという、恐れていたシナリオが現実に。そうは言っても、潤沢なリソースを背景に完璧な準備を整えてこの大会に挑んできたイングランド代表。不測の事態への対応でも、決して慌てることはない。

「ベンは過去2年間ほど代表キャンプに参加しており、このチームで何が求められているかをしっかりと理解しています。フィットネスレベルの高い選手ですし、チームにもすぐに馴染むことができるでしょう」

 26日の試合でのハインツの負傷を受け、即座にスペンサーに連絡し、日本へくる準備をするように要請したという、ジョーンズ監督。イングランドのプレミアリーグはすでに開幕を迎えており、マッチフィットネスという点では、スペンサーのコンディションには問題ない。

 決勝戦前での緊急招集といえば、2011年大会に、相次ぐSOの負傷を受け、緊急招集された、ニュージーランドのスティーブン・ドナルドの話が思い出される。休暇中に釣りをしていたところへ突然電話でこの知らせを受け、オフ中のたるんだ体でジャージがキツそうだったドナルドの話は、多くのラグビーファンが覚えている。ドナルドの緊急招集の時との違いを問われると、「まずベンは、ジャージがキツくて入らないことはないでしょう。それから、連絡をした時に釣りを楽しんでいたということもないでしょう。これが大きな違いです」、と余裕の回答で、笑いを誘った。

 また、準決勝で南アフリカに敗れたウェールズのウォーレン・ガットランド監督が、「イングランドは準決勝で最高のパフォーマンスを見せてしまい、多くのチームが決勝ではいいプレーをできない」、とのコメントを残していたことについて聞かれると、「ウォーレンには、3位決定戦を楽しむようによろしく言っておいて下さい」、と言ってさらに笑いを誘った。

 決勝戦を前に緊急での負傷カバー選手の招集という事態にも動じずに、余裕の構えを見せるイングランド。準決勝での素晴らしいパフォーマンスの後で、自身の哲学として掲げる、「毎試合、向上を続ける」ことが可能かと聞かれると、「100パーセント可能です。我々は、まだ何の結果も残していません。目の前にあるのは、素晴らしい機会だけ。この機会に向けて、さらに向上する為に、準備をするだけです」、と真面目な面持ちで会見を終えた。

 会見場でのジャーナリストのやりとりや、メディアを通じた相手チームとの心理戦も「勝負のうち」とする、百戦錬磨の名将、ジョーンズ監督。緊急招集という不測の事態も何のその。2日(土)の決戦に向けて、着々と準備を進める。