熱い、熱い、横浜の夜だった。
10月26日、イングランドがニュージーランドを破る(19-7)。オールブラックスのワールドカップ3連覇の夢は、攻守両面でひっきりなしに放たれた白い矢によって散った。
自分たちのやりたいラグビーをほとんどやらせてもらえなかったオールブラックス。エディー・ジョーンズ監督が率いるイングランドの準備が才能軍団の爆発を封じた。
キックオフ前のハカ、大一番に挑むオールブラックスの『カパ・オ・パンゴ』はイングランドファンの歌声でかき消された。そのとき、白いジャージーの男たちはV字になってそれを見つめた。
そのシーンを振り返ってCTBオーウェン・ファレルが言った。同主将は、この日の80分、チームで一番多くタックルをした(15回)。
「私たちは、ただ立って(ハカの時間を)終わりたくなかった。(相手への)敬意を表しつつ、やれることを考え、やったんだ」
猛タックルを連発したFLサム・アンダーヒルは、こう話した。
「自分たちが(この試合に対して)準備できていることを、相手への敬意を持った上で示したつもりです」
キックオフ時は、レフリーのホイッスルを待っていたSOジョージ・フォードが試合開始直前、CTBファレルにボールを渡す。背番号12が敵陣左奥に蹴り込んだ。
その後の集中力も高かった。
ニュージーランドがタッチへ蹴り出した後、ラインアウトから準備してきたアタックを遂行する。迷いがないから、一つひとつのプレーが思い切り良かった。縦へドシン。右に大きくボールを動かし突破し、次は左端まで運ぶ。
次は振り戻しで中央を攻め、7フェーズ目、トライライン直前のラックからCTBマヌ・トゥイランギがインゴールに飛び込んだ。
戦前から「この日のために2年半前から準備してきた」と話していたエディー・ジョーンズ ヘッドコーチは、立ち上がりの意志統一されたアタックについて、「ニュージーランドはラグビーの神様。そんな相手に戦う姿勢を見せたかったし、こちらが勢いを出すことで、相手の強みを削ぎたかった」と言った。
思惑通り、ブラックジャージーの男たちに凄みを出させぬ展開に持ち込んだイングランドは、80分を通してベストパフォーマンスを発揮し続けた。アンダーヒルは、「スイッチをオフにしたらすぐにカウンターをくらうと肝に銘じてプレーした」と振り返った。
この日の試合登録メンバー23人を決めるとき、ジョーンズ監督は、「試合を締めくくる時間帯にピッチにいる15人を先に決めてから先発を決めた」そうだ。
勝利へのシナリオを指揮官が時間をかけて書き上げ、それを選手たちが実行した。ジョーンズ監督は、「2年半でやるべきことを習慣化できたので素晴らしいプレーぶりだった」と選手たちを称え、「来週はもっと良いプレーができる」と自信を見せた。