成長もあり、課題も残る。
同志社が82回目の大学定期戦を戦った。
相手は明治。昨年度、学生日本一に輝いた。
年1回の試合は10月20日、京都市の島津製作所グラウンドであった。
スコアは21-57。前半こそ14-17と競るものの、後半は一気にいかれた。
トライ数は3対9だった。
日本が南アフリカに3-26で敗れるW杯準々決勝の6時間ほど前のことである。
同志社は主将のWTB山本雄貴、副将のNO8服部綾(はっとり・りょう)らレギュラークラス4人がケガで欠場していた。
監督の萩井好次は総括する。
「よかった部分もありました。スクラムやモールは悪い印象はない。時間がかかるところは大きく改善できている気はしています」
チームを率いて3年目になる。
萩井はアシスタントコーチの太田春樹とともに、ラグビーの根幹であるセットプレーの強化に取り組んでいる。
OB首脳2人はフロントロー出身だ。
萩井はワールド(現在は廃部)のPR、太田は近鉄のHOだった。
後半16分、ラインアウトからのモールを10メートルほど押し込み、HO橋本一真がトライを挙げた。FB原田健司がゴールキックを決め、得点を21-31とする。
この8人によるスタンディングの前進は同志社が力点を置いてきた。
練習終了直前にBKも交えて、8対8でインゴールへの往復をする。
その強みは大学王者にも通じる。
スクラムは前半9分、屋台骨の右PR文裕徹(むん・ゆちょる)が踏ん張る。この日2回目の組み合いでは、前に出て、明治ボールのスクラムをちぎったように見えた。
しかし、その間隙を縫ってSH飯沼蓮にインゴールに走り込まれる。0-12とされた。
太田は選手が長方形の図を描き解説する。
「文は相手の1番と2番の間にまっすぐに入りました。それでああいう崩れ方になった。ただ、あの時のスクラムをドミネートできていても(勝てても)、ギャップを突かれ、トライを獲られたらよくありません」
押すことに集中し過ぎ、FW第3列がスクラムから外れることが遅れる。
その反応の鈍さは反省点にはなるが、多い日は2時間以上組んできた成果をモール同様に示した。
同志社は「関西の雄」と呼ばれる。
創部は1911年(明治44)。今年109年目。慶應、三高(京都大の前身)に次ぎ、日本で3番目に長い歴史を有する。
定期戦は関西勢では最多の6校と組む。明治、慶應、立教、京都、関西学院、立命館。早稲田とは年を空けて対戦している。
昔のラグビーは定期戦で成り立っていた。その数の多さは名門の証しでもある。
今年、56回目を迎える大学選手権制覇は4度。平尾誠二が軸になった3連覇(1982~1984年度=19~21回大会)が含まれる。西日本で頂点に立ったのは同志社のみだ。
一方の明治は昨年度の55回大会で22年ぶりの優勝。今年は連覇を狙う。通算優勝回数は最多の早稲田の15につぐ13だ。
両校の最初の定期戦は1925年(大正14)。その時は同志社が明治を17-3で下した。
同志社は関西において、大阪体育や京都産業が出てくる1980年代後半まで、天理の勃興はあったにせよ、ほぼ無敵だった。
優勝回数は戦後の1946年(昭和21)から数えれば42回。天理、関西学院の10を大きく引き離している。
2015年には8年ぶりに関西リーグを制する。その後は下降した。
2016年=2位、2017年=6位、2018年=5位。ここ2年は大学選手権に出場できなかった。関西枠が5から基本的に3への削減もあるが、同志社が2大会連続で選手権に出られないのは初めてである。
その不振を払拭すべく、セットプレーに注力する。結果、リーグ戦では開幕から3連勝。4連覇を狙う天理と首位を並走する。
ただ、リーグ戦3試合の平均失点は33。モール、スクラムが安定しても、この数字では完全復活は厳しい。
明治との定期戦でも57点を献上した。
今年、U20日本代表に選ばれ、リーグ戦すべてに先発したWTB山口楓斗は話す。
「ディフェンスは僕も含めて、もっとハードワークをしないといけません」
同志社は前に出て、戻る守備システムを採り入れるが、フェイズが重なるとバッキングの意識がどうしても薄れてしまう。
「足らないのは向こう気とタックルだ」
渋谷浩一は試合後に現役たちの前で強く言った。傘寿を越えた渋谷はOB会組織「同志社ラグビークラブ」の相談役でもある。
向こう気とは「相手に張り合う気持ち」。その精神の具現化がタックルになる。
W杯の中断を挟み、同志社はリーグ戦で次は関西学院と対戦する。定期戦を兼ねた一戦は、11月4日(祝・月)、天理親里ラグビー場で正午にキックオフされる。
朱紺も2勝1敗と悪くない。中断期間中は神戸製鋼の若手とスクラムを組んだ。優勝争い、そして3年ぶりの大学選手権出場のため、紺グレには負けられない戦いになる。
紫紺との定期戦をその糧にしたい。
この定期戦の通算成績は同志社の19勝58敗5分(大学選手権での対戦は4勝6敗)になった。
■両チームの先発メンバー
【同大】
1 六車高寧(函館ラ・サール③)
2 橋本一真(常翔学園❹)
3 文裕徹(大阪朝高③)
4 松野泰樹(筑紫④)
5 平澤輝龍(前橋育英④)
6 嶋崎晴也(摂津④)
7 堀部直壮(筑紫④)
8 木原音弥(東福岡②)
9 人羅奎太郎(東海大仰星③)
10 田村魁世(桐蔭学園②)
11 稲吉渓太(東福岡②)
12 和田悠一郎(東海大仰星②)
13 谷川司(名古屋②)
14 山口楓斗(東海大福岡②)
15 原田健司(修猷館④)
【明大】
1 安昌豪(大阪朝高④)
2 武井日向(國學院栃木❹)
3 笹川大五(明大中野④)
4 片倉康瑛(明大中野③)
5 箸本龍雅(東福岡③)
6 石井洋介(桐蔭学園④)
7 繁松哲大(札幌山の手③)
8 坂和樹(明大中野八王子④)
9 飯沼蓮(日川②)
10 山沢京平(深谷③)
11 石川貴大(報徳学園③)
12 射場大輔(常翔学園④)
13 森勇登(東福岡③)
14 山崎洋之(筑紫④)
15 雲山弘貴(報徳学園②)
※白抜き数字、同大はゲームキャプテン、明大は主将