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ラグビーワールドカップ2019 日本代表総括会見。最高の仲間、思い出、感謝、未来…。

2019.10.22

ラグビーワールドカップでベスト8入りの偉業を成し遂げ、多くの人々を感動させた日本代表(撮影:BBM)


 自国開催のラグビーワールドカップで見事、目標のベスト8入りを果たし、すべての戦いを終えた日本代表が10月21日に都内で会見をおこなった。

 まず、男子15人制日本代表の藤井雄一郎強化委員長がチームを代表して総括。
「3年前に、今回のワールドカップへ向けてジェイミー体制で始動した。たくさんの方に支援していただいて、選手は本当によく頑張って日々鍛錬し、このなん百日か一緒に生活してきた。ベスト8を目標に掲げ、なんとか届くことができて、選手はもう一つ上を狙っていったが、南アフリカの前に力尽きた。選手がやったことは、日本のラグビー界を変えるであろう偉業を達成したと思う。歴史にトップ8ということを刻んだ。選手にはお疲れさんと言ってやりたい。スタッフも寝れない日々が続いたと思うが、この3年間、身を削ってやってくれた。次はフランス大会。もう一つ上を狙えるようにラグビー界一丸となって次にチャレンジしていきたい」

 ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチは、「One Team」を掲げて戦ってきたチームを改めて振り返り次のようにコメントした。
「この3年間、このチームは本当にハードワークを続けてきた。今年は今まで以上に努力を重ね、トップ8を目指すことできた。31人の選手だけでなく、コーチも。いろんな方のサポートがあって強くできた。そして、ここにいる選手だけじゃなく、他にも選手たちがいろいろ貢献をしてくれ、この大きな成果を得ることができたと思う。我々はワールドカップを誇らしく戦うことができた。ファンのみなさん、国民のみなさん、本当に熱いサポートをありがとうございました。みなさんの応援なくしては達成することはできなかった」

チームに勢いをもたらした福岡堅樹(中央)と松島幸太朗(右)の“ダブルフェラーリ”(Photo: Getty Images)
リーチ マイケル主将を中心に「One Team」となった日本代表(Photo: Getty Images)

 2011年大会からワールドカップを経験し、前回大会、そして今回の記念すべき日本大会をキャプテンとしてチームを引っ張ってきたリーチ マイケルは次のように語った。
「このチームのキャプテンをやってて誇りに思う。ベスト8はすごく嬉しい。そのためにいろんな人がいろんなことを犠牲にしてきた。ベスト8を達成できたのは、まずはジェイミー ヘッドコーチが『One Team』を作り上げたことがすごく影響があると思う。ジェイミーとリーダーグループを育てて、『One Team』を作ったことがベスト8の目標達成につながったと思う。今後についてはしっかり考えていきたい。日本代表は強いまま継続することが大事だと思う。日本のファンがすごく増えてきているので、またファンが感動できるような試合を続けられたらいいなと思う。日本代表になりたいという子どもたちが増えればいちばん嬉しい」

 日本代表歴代最多となるワールドカップ4大会、14試合出場を果たし、今大会を最後に代表引退を表明していたトンプソン ルーク。
「本当にすばらしい大会だったと思う。日本国民全員で誇らしく一丸となって戦えた。この1か月、ラグビーという競技が国民に認知されたと思う。多くの子どもたちにラグビーを始めてもらいたいと思うし、引き続き、ラグビーというスポーツを応援していただきたい。それがさらなる発展につながると思う」

 首の大けがなどを乗り越え3度目のワールドカップ出場を果たし、最前線で体を張りチームをけん引してきた堀江翔太。
「2011年のとき、ニュージーランドでのワールドカップを終えて帰ってきたら記者が2、3人くらいだった(笑)。いまは目の前にこんなにたくさんの人がいるというのは考えられない。これを継続しなアカンなと思う。選手たちができることといったら、どれだけ強くなれるか、どれだけ上に上がれるか、どんだけうまくなれるかというのが僕らの仕事だと思うので、常にそれを目指しながら次のワールドカップへ進まないといけない。ラグビーが認知されて、人気をキープできるようにするのが僕らの仕事だと思う。選手だけではできないので、協会なども含めて、みんなで上に、どんどん上がっていければと思う」

体を張り続けてチームを鼓舞した堀江翔太(Photo: Getty Images)
スコットランド代表との肉弾戦。雄叫びを上げる姫野和樹(Photo: Getty Images)

 5試合すべてに先発し、ブレイクダウンの激しいファイトで「ジャッカル」という言葉を新たなファンにも広めた姫野和樹。
「これだけラグビーで盛り上がって本当に嬉しい。選手一人ひとり、そしてサポートする選手もスタッフも、一人ひとりのハードワークが多くの国民のみなさんに感動を与えることができたんじゃないかなと思う。これからラグビー界は大事になってくると思うので、どんどんラグビーの魅力を、すばらしさを発信していけるようにやっていきたい」

 そして、試合には出場できなかったものの、裏方としてチームを支えた5選手も胸の内を語った。

【木津悠輔】
「試合に出たい気持ちは常にあり、悔しさはあったが、しっかり切り替えてチームのために、対戦相手のコピーとなっていい練習ができるようにやってきた。試合には出られなかったが、ラグビー選手として貴重な経験ができた」

【徳永祥尭】
「悔しい部分はあったが、楽しいワールドカップ期間だった。言葉でいい表すのは難しいが、選ばれて出られなかったことを取り返すために、また4年後狙いたい」

【アタアタ・モエアキオラ】
「悔しい思いもあったが、このチームと一緒にラグビーができて嬉しい。この経験をこれからも活かして頑張っていきたい」

【北出卓也】
「北出丼(明太子、高菜、シラス、ネギ、生卵などをのせた北出選手オリジナルどんぶり)をいっぱい作ってチームに貢献させていただきました(選手たちから笑いと拍手)。出場できなかったことも次へのモチベーションになっているので、次に向かって努力していきたい」

【茂野海人】
「悔しい思いはすごくあったが、試合に出ている流(大)やフミさん(田中史朗)がいいパフォーマンスをしてくれるのがとても誇らしかった。一試合一試合すごく成長しているのを観てて実感できた。僕も一プレーヤーとして、今後もさらに成長できるように頑張っていきたい」

北出が「北出丼で貢献させていただきました」と言った瞬間、選手から拍手が起きた(撮影:BBM)
背番号10の重責を果たした田村優。準々決勝で敗れ、涙(Photo: Getty Images)

 司令塔として見事にプレーメイクし、準々決勝が終わった時点で全出場選手中最多の51得点を記録した田村優。
「楽しかった。すばらしい大会だった。日本代表がいちばん憧れの存在で、みんなが入りたいと思える、そのために全力を尽くせるチームになってきたとこの大会を通じて思う。目標を立てて有言実行して、達成するチームはなかなかない。誇りに思う」

 日本代表としてのベストプレーを訊かれ、リーダーたちが代表して回答。

【田村優】
「この期間中の毎日がベストだった。全部最高だった」

【稲垣啓太】
「ひとつ選ぶとしたら、アイルランド戦の前半35分。相手ボールのスクラムでプレッシャーをかけてターンオーバーしたシーン。今までの日本代表は相手ボールに対してプレッシャーをかけてペナルティをとるのはなかなかできていなかった。それをティア1(強豪国)のアイルランド相手にできるんだということを証明できた試合だった。ペナルティをとった後のファワード全員の喜びよう、そしてバックス全員が駆け寄ってくれたときのチームの一体感というのは間違いなく忘れられない」

【流大】
「僕も同じく、スクラムで押したときのグーくん(具智元)の雄叫び。グーくんは自己表現とかはあまりしない選手だが、あのスクラムに賭けてて、それを見たときは胸に来るものがあった。グーくんが本当に日本代表のために戦っていると感じた。グーくんだけじゃなくフォワード全員だが、本当に感謝している」

スクラムにすべてを賭けた具智元。写真は南アフリカ戦の雄叫び(Photo: Getty Images)

【ラファエレ ティモシー】
「ロシア戦のリョート・ナカムラ(中村亮土)のオフロードパス。ですよね(と本人を見て)」

【ピーター“ラピース”・ラブスカフニ】
「非常に多くあるが、特にひとつあげるなら、スコットランド戦でガッキー(稲垣)がトライしたシーン。そのトライにつながるまでフェイズを重ねてチーム力を見せられた。フォワードもうまくオフロードでつなぎ、各自与えられた役割をしっかり遂行してフィニッシュしたすばらしいプレーだった」

【中村亮土】
「グラウンドに出てないメンバーのなかでも、徳永のウォーターボーイと伝達はベストプレー。出てるメンバーだけじゃなく、『One Team』で戦うという意味で、どのプレーとかじゃなく、それを生むまでの準備やサポートが土台として大きい。メンバーのサポートは非常に助かった」

3連続オフロード、ウィリアム・トゥポウからパスをもらいトライを決める稲垣啓太(Photo: Getty Images)
日本代表を初のベスト8に導いたジェイミー・ジョセフHC。田村優と歓喜の抱擁(Photo: Getty Images)

 再びジョセフ ヘッドコーチへ質問。スタッフへの思いを訊かれ。
「スタッフを含め51人で遠征に行く。かなりの大人数でまとめるのが難しいが、そのなかでも全員が意思統一を図ることが大事。でも佐藤秀典通訳だけは勝手なことをしている(笑)。本当に全員が連携して一人ひとりが与えられた役割を遂行することが大事。それがしっかりできているチームだと思うし、継続していくことが非常に重要だと思う」

 3年間でいちばん厳しかった時期は? 日本のラグビーに何を残せたか? 訊かれて指揮官。
「私はこの仕事を心から愛してる。チャレンジではあるが、ラグビーコーチとしてチームを率いることにやりがいを感じている。なので、つらいときとか、苦しいとかあまり感じず、朝起きてその日やることに専念してやってきた。誇らしく思うのは、選手が本当に信頼関係を構築してチームとして一丸となれたこと。それには多くの時間がかかるが、それを見事に成し遂げ目標を達成することができた」

 再びトンプソンに質問。日本代表として最後、長い年月振り返ってどう思うか。
「疲れた(笑)。たくさんのいいメモリーと仲間を作った。チームメイトの絆はすごい特別ね。きつい練習を一緒にして、試合に出て……説明難しいけど、仲間をたくさん作ったのはすばらしいメモリー。12年前より、日本ラグビーはすごい人気を上げて、日本代表のプレーのレベルはすごい上がった。それはすばらしい結果。僕の日本代表のキャリアは終わったけど、めちゃ楽しかった。また近鉄(ライナーズでのプレーがある)、楽しみ」

わが子に日本代表として最後の勇姿を見せたトンプソン ルーク(Photo: Getty Images)

 2011、2015年大会と候補選手になりながら最終スコッドに選ばれず、今回31歳で初めてワールドカップ出場を果たし、全5試合に出場(3試合先発)して活躍した山中亮平。大会を振り返り。
「ワールドカップ、一言で言うと最高だった。始まる前は全試合出られると思ってなかった。全試合出れて嬉しかった。一生に一度しかないと感じたし、ファンの声援が力になった」

ワールドカップ開幕戦という大舞台で力走する山中亮平(Photo: Getty Images)
すべてを戦い終えて。田中史朗(写真左)と坂手淳史(Photo: Getty Images)

 そして、チームの会見中に涙が浮かんでいた田中史朗も熱い思いを語った。
「2011年から比べると日本代表はすごく強くなった。ファンの方々にも応援していただける環境になった。しかし、一回で優勝を獲れるような大会ではない。みんながもっともっと努力をして、僕とかトンプソンはおっさんなんで、これからの代表はもしかしたら厳しいかもしれないが、流や茂野など、すごく若くていい選手がいる。日本には期待できる人材がいっぱいいる。もっともっと夢と希望を与えられるようなチームになってくると思う……。質問なんでしたっけ? ちょっと長くしゃべりすぎて(会場笑い)」

 そして、日本ラグビーの未来についてこう続けた。
「これからもっともっと、ここに来ていただいているメディアの方々、ファンの方々を継続して次の2023年まで、来ていただけるように努力して普及活動をしていかなければいけない。日本代表として継続して。次のコーチが誰になるかわからないが、できれば、ジェイミーであったり、スコット・ハンセンであったり、トニー・ブラウンであったり、継続してやってもらいたい。本当に日本の国として、もっともっと継続して日本のラグビーが強くなるようにしていかないといけないと思う。日本のラグビーすべて、学生であったり、子どもであったり、僕たちトップリーガーであったり、代表であったり、そういうのがすべてコネクトできて、チーム全体として、日本として強くなっていけるようになれば、ベスト4も夢ではない。代表として誇りに思えるような代表だったし、もっともっと皆さんに夢と希望を与えられるような代表になると思うので、これからも日本ラグビーを、そして日本代表をよろしくお願いします」

最高のチームだったラグビーワールドカップ2019日本代表(Photo: Getty Images)