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「日本を愛している」 ラブスカフニ、桜を胸に母国のエリート軍団に挑む。

2019.10.20

アイルランド戦勝利後、稲垣啓太を支えるピーター“ラピース”・ラブスカフニ(Photo: Getty Images)

 南アフリカの首都プレトリアで生まれたピーター・ラブスカフニ、愛称ラピースは、2013年6月、シヤ・コリシやピーター=ステフ・デュトイ、ウィリー・ルルーらとともに、南アの未来を担う若手有望株のひとりとして同国代表“スプリングボックス”に選ばれた。しかし、周りがデビューを果たす一方で、ラピースには試合出場のチャンスはめぐってこなかった。

 2016年に来日。クボタスピアーズに加入し、日本ラグビー界を新天地とした。誰からもリスペクトされるハードワーカー。日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチも注目した。36か月間継続して日本に居住すれば、代表入りの資格を得られる。南ア代表としては一度も試合に出ていなかったから、その条件もクリアした。そして、胸に桜のエンブレムがついたジャージーを手にした。30歳で迎えた今年7月のフィジー戦で日本代表初キャップを獲得。ワールドカップスコッドにも選ばれ、アイルランド戦とサモア戦でゲームキャプテンを任されるなど、指揮官の信頼も厚い。

 ジョセフ ヘッドコーチはラピースをこう評する。
「日本に早くなじめたのは、誠実で人格者であり知性的だから。メンタル的に非常にタフな選手。20年、優秀な選手も指導してきたなかでも、かなりタフ」
 ワールドカップ開幕戦だったロシア戦後、リーチ マイケル主将のプレー面を整えないといけないと判断したジョセフ ヘッドコーチはラピースにリーダーシップを与えた。その甲斐もあって、姫野和樹らを加えたルースフォワード(FW3列)のトリオは相乗効果を高め切磋琢磨し、いい状態でチームを鼓舞している。

 ラピースは今大会これまで、4試合すべてに先発してフル出場。開幕戦ではロシア選手からボールをもぎ取ったあと力走してトライを挙げ、タックル数はサモアのTJ・イオアネに次ぐ56回(成功率93%)と活躍が光る。準々決勝の南ア戦でも背番号7をつける。

「異なるバックグラウンドを持った選手がたくさんいるが、同じゴールを目指しワンチームとして一丸となってやってきた。南アフリカ戦へ向かうにあたっても一つのゴール、一つのマインドを持つことが大事。何がしたいかを正確にわかっている。成功を収めるにはプランからぶれずに遂行すること。今週の練習でもみんな本当に気合いが入っていて試合を楽しみにしていた」
 試合前日の会見でそう語ったピーター“ラピース”・ラブスカフニ。いよいよ、かつて自分も憧れた母国の代表スプリングボックスに挑む。

「小さい頃はまさか自分が日本代表の立場で国歌を歌うことになるとは思わなかった。南アフリカ国歌を聞くと感情的になるが、今は日本の国歌を歌うことを誇りに思う。南アフリカとその人々を愛しているが、日本とここに住む人々も愛している。ここが自分のチームで、新たな家にもなった。我々はここで止まるつもりはない」

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