どちらも大きな期待を背負って日本にやってきた。
代表チームとほぼ同じ顔ぶれのジャガーズが今季のスーパーラグビーで史上初の決勝進出を果たし、優勝候補の一角にも挙げられたアルゼンチン代表ロス・プーマス。一方のアメリカ代表イーグルスも、2018年に発足した北米プロリーグ「メジャーリーグラグビー」の盛り上がりを背景に急速に力を伸ばし、今大会のダークホースになりうる存在と評価されていた。
しかし、この2チームにとってのラグビーワールドカップ2019は、当初思い描いていたような結果にはならなかった。両国が入ったのは、イングランド、フランス、トンガと強豪がそろい、“死の組”と評されたプールC。3節を終えた時点で3勝を挙げたイングランドとフランスの決勝トーナメント進出が確定し、アルゼンチンとアメリカは、この試合を迎える段階ですでにプールマッチ敗退が決まっていた。
でも、いずれのチームにもこの一戦を“消化試合”ととらえるような気配は皆無だった。
開始直後からお互いがアグレッシブに攻め合い、激しい肉弾戦と鋭い攻防が展開される。ピッチに立つ全員に『やってやろう』という意欲があふれている。そんな感じだ。
アルゼンチンはこれが今大会の最終戦。過去3大会ですべて決勝トーナメントに進み、うち2回は4強入りしている強豪にとって、プールマッチ敗退は納得できる結果ではないだろう。それでも、自分たちの爪痕を残すという強い意思は、ゲームの随所に表れていた。
もうひとつ、アルゼンチンにとってこの試合は特別な意味があった。FWの軸として長くプーマスを支え、同国初のベスト4進出を遂げた2007年のフランス大会から4大会連続でワールドカップ出場を果たしたレジェンド、FL/NO8ファン・マヌエル・レギサモンの、代表チームでのラストゲームだったのだ。
47-17の快勝の後の記者会見。勝てば次回大会への出場権を得られる3位が確定することが、どれくらいチームに影響を与えたかという質問に対し、マリオ・レデスマ監督はこう答えた。
「それはあくまで外的なモチベーションにすぎない。一番大切なのは、自分たちの心の中から生まれるものだ。我々は、これまでやってきたことを出し切ろうという思いで今日の試合に臨んだ。これが代表チームでプレーする最後の試合だった選手もいる。次回大会の出場権のことは、あまり考えなかった」
敗れたアメリカも、最後まで戦う姿勢を示して多くの見せ場を作った。持ち前の強靭なフィジカルを生かして接点で勇敢に体を張り、WTBブレイン・スカリー主将のキレのいいランとCTBポール・ラシケの問答無用の縦突進で印象的な3トライを奪った。「スコアボードは、実際の力量よりも差が大きく見えると感じる」というスカリー主将のコメントは、まさに観戦者の実感だろう。この奮闘は、4日後の10月13日、トンガとのラストゲームにもきっとつながる。
失望と落胆がチームを覆う中、秋晴れの熊谷で両国の選手たちが見せた意地。たとえ決勝トーナメント進出の道が途絶えても、体内に息づくプライドはゲームのあらゆる場面に立ちのぼる。ワールドカップに、消化試合なんてない。