ラグビーリパブリック

勝ち点の重さと、サモアのコンタクトの激しさ。勝負の間で

2019.10.07
安定感と決定力、両方を発揮したゲーム主将、ラピース(ピーター・ラブスカフニ)(撮影:松本かおり)

安定感と決定力、両方を発揮したゲーム主将、ラピース(ピーター・ラブスカフニ)(撮影:松本かおり)

 10月5日の第3戦、サモアを相手に最高の結果「勝ち点5」を挙げて、プールA突破にまた一歩近づいた日本代表。

 松島幸太朗がインゴール左に飛び込み決めた4つ目のトライの結末までには、勝ち点(4トライ以上の勝利に与えられるボーナスポイント=BP)への意識と、目の前の勝利をもぎ取ることとの間の、微妙なバランスの移り変わりがあった。

 試合後、ジェイミージョセフは淡々とした表情で語った。

「試合中の考えとして、BPがどれだけ重要なのか、正直わかりません。もちろんスコットランド(10月13日対戦)との競争を考えれば、あったほうがいい…。そのくらいのものでは」

 プール戦突破は日本代表にとって長年の目標だ。試合を応援するファンにとっても常に勝ち点がちらつくのは自然なことだ。しかし、少なくとも試合開始時に考えられる最優先事項は「勝つこと」以外にない。勝ち点はその先についてくる。フィールド上の日本代表の思考には、時間帯ごとに統一感があった。

 BPがプール突破に必須と確定しているなら話は別だが、例えばこの日のスコットランドと日本の状況は、不確定要素が多かった。試合消化数さえも違う中で、どのタイミングで勝利を確信しBPを取りにいくのか。残り時間とのバランス。前半を1トライで終えたこの試合の後半は、プレー選択が難しかった。

 後半開始後のペナルティについては、ある決断があった。

 後半に入った44分、スコアは16−12。中盤地域右寄りの位置でペナルティを得た。PGを狙ってスコアを刻むか、タッチキックからラインアウトモールでトライの可能性を探るか。ジャパンの選択はショット(PG)だった。しかし、そう決めるまでには少し間があった。時間がかかった。

 交代出場で経験値を期待されたHO堀江翔太は「割れました」と、選手によって選択の意見が違っていたことを認める。

「割れましたけど、そこはキャプテンの決断なので。いったんこうと決めたら、みんなそれを信じてできていたと思います」

 FW陣の多くは、タッチキックからのラインアウトを想定した陣形をとっていた。しかし、決断を下したゲーム主将のピーター・ラブスカフニの選択は最初から、ショットでブレがなかった。

「まずは勝つこと。サモアは強いチームだったし、そこに集中していました」(試合後のラブスカフニ)

 このPGは失敗し、スコアはならなかったが、ジャパンは集中を切らさず、5分後には再度ペナルティをもぎ取って、PG成功(19-12)。ここからジャパンはトライを3つ取った。取り切った。今のチームのまとまり、遂行力の高さが浮かび上がった瞬間だった。

 同時に、サモアの激しいコンタクト、ブレイクダウンに、いかにジャパンが手を焼いていたかがわかる。マイボールのモールを押し込むこと、あるいは連続攻撃を速いテンポで繰り返すことが簡単ではないという感覚が、この時間帯の日本にショットを選ばせたのだろう。10月5日に超えた山は、スタンドから見るよりずっと、険しかった。

 ジェイミーHCが次の山を睨んでいる。

「スコットランドは本当に強い国。経験もあり、多くのXファクターを持っている。今日我々が戦ったサモアとの試合でも非常に冷静、落ち着いた戦いぶりで勝利を挙げている。ただ、それも我々の潜在能力を出していけばきっと越えられる。何年も前からイメージしてきたこの時にワクワクしている。そのプレッシャーを感じながら、当日を迎えたい」

 選手、スタッフの心はすでに新境地に入った。