国歌を一緒に歌うサポーターの数は圧倒的にフランスの方が多かった。10月6日、熊本県民総合運動公園陸上競技場なのに、パリ郊外の巨大スタジアムにいるかのように『ラ・マルセイエーズ』は大合唱だった。トンガの男たちが戦いの前に披露した『シピタウ』はいつにも増して情熱的で、プレーも勇ましかったが、80分後、勝利を手にしたのはレ・ブルー、フランス代表だった。ファイナルスコアは23-21。熱闘。両チームに大きな拍手が送られた。試合後は、勇敢な敗者を称えるトンガコールがこだました。
死の組と呼ばれたラグビーワールドカップ2019日本大会のプールCで、フランスは3勝0敗(総勝ち点13)となり、同じく3連勝のイングランドに次いで準々決勝進出を決めた。
この結果、同組に入り2敗を喫した前回大会4位のアルゼンチンはプールステージ敗退が決まった。
フランスは序盤から得点を重ね、先に主導権を握った。PGで先制したあとの前半5分、トンガのラインアウトが乱れ、ボールを手にしたフランスがすばやく左へ展開、WTBアリヴェレティ・ラカが切り込み、オフロードパスを受けたCTBヴィリミ・ヴァカタワがゴールに持ち込んだ。
激しい攻防でターンオーバーも多く、エキサイティングなアタッキングラグビーとなる。トンガのフィジカルは強かったが、フランスの守りは堅かった。
31分、フランスはスクラムでFKを得ると、SHバティスト・セランが相手の一瞬の隙を逃さずクイックタップから仕掛け、WTBラカにパス、フィジー出身の背番号11はキックを巧みに使った個人技とスピードでディフェンダーをあっさり振り切り、トライを挙げた。
17点を追うトンガは39分、ゴールに迫り、FWが青い壁に何度も激しく体をぶつけた。そしてわずかなギャップができたところをSHソナタネ・タクルアが突き、ゴールラインに押さえてトライが認められた。
17-7でハーフタイム。
後半先に得点したのはトンガで、46分(後半6分)、ラインアウト後のフランスにプレッシャーをかけてボールを奪い返し、パスをつないで、WTBクーパー・ヴナが右外をゲインしキック、ボールはブルージャージーの男をもてあそぶかのようにバウンドし、チェイスしていたトンガ13番マリエトア・ヒンガノの手に収まり、点差を詰めるトライが生まれた。
しかしその後、フランスはSOロマン・ヌタマックがPGを2本決めて23-14、9点差とした。
それでもトンガはあきらめず、試合終了間際の78分、主将のCTBシアレ・ピウタウがブレイクスルーの力走でゴールに迫り、たたみかけ、左外でキックパスをキャッチしたFLゼイン・カペリが執念のトライ。コンバージョンも決まり2点差となった。
が、リスタート後にボールをキープしたのはフランスで、激闘は23-21でノーサイドとなった。
フランスは12日に横浜で、プールC1位通過をかけてイングランドと全勝対決をおこなう。トンガは13日に大阪で、今大会初勝利を目指してアメリカと最後の試合を戦う。