2009年におこなわれたワールドラグビー理事会の投票により、2015年大会のイングランド開催と同時に決定した、2019年のラグビーワールドカップ日本開催。開催決定後、10年間に及ぶ準備期間を経ておこなわれる今大会は、史上最も長く開催が待たれた大会だ。
ワールドラグビーのビル・ボーモント会長の挨拶で始まった大会開幕前公式記者会見。本大会出場国だけでなく、ブラジル、香港なども含めた多くの国や地域から記者が集まった。
「ブライトンの奇跡の再現となるか。あるいは、日本代表がまたティア1国を倒したとしても、もう奇跡とは言えないかも知れませんね」
ワールドラグビーのCEOを務めるブレット・ゴスパー氏の言葉は、ただのリップサービスか、あるいは本心か。これは、戦いが終わってみなければわからない。
初めてのアジアでの開催、初めてのティア2国での大会となる日本大会には、世界中のラグビーメディアから大きな注目が集まった。各地で報道されたニュースは、全てがポジティブなものではない。特に、新国立競技場騒ぎに始まった会場問題、宿泊施設、交通機関など、大会準備に関する心配の声が、世界のメディアで取り上げられた。
さらには、笑えるようで笑えない、試合会場でのビールの在庫切れという、世界のラグビーファンにとっては非常に痛い問題も、大会準備の懸念点として話題となった。この質問を受けたワールドカップ統括責任者を務める、アラン・ギルピン氏は、「大規模な国際ラグビー大会がどういうものであるかということは、日本の大会関係者の皆さんにも、しっかりと理解してもらっています。ビールはたくさん用意するので、心配しないでください」と笑って答えた。
この他にも、参加選手や海外から応援にやってくるサポーターたちにたまに見られる、タトゥー(入れ墨)と温泉・銭湯に関する質問も。これに答えた大会組織委員会の嶋津昭事務総長は、「タトゥーの問題については、各国代表チームのキャンプ地、スタジアムをはじめとした、さまざまな施設と協議中です。文化の問題については、お互いに理解し合う姿勢が必要で、いろいろな場所で変化が始まりつつあります。この件に関しては、トラブルが起こることはないと思います」と、海外メディアを安心させた。
良くも悪くもプロ化・ビジネス化がまだ発展途上にあるラグビーというスポーツ。近年この話題で欧州ラグビー界を賑わわせている、CVCキャピタル・パートナーズという、プライベート・エクイティ・ファンドに関する質問も、ボーモント会長に向けられた。CVCは、イングランドのプレミアシップ、その他の欧州クラブなどから構成されるリーグ、プロ14の株式買収に続き、シックスネーションズの株式買収にも動いている。CVCは、かつて自動車レースF1の株式を買収し、「このスポーツを悪い状態にし、自らの利益を確保した上で売り抜けた」という評判でも知られる。
質問を受けたボーモント会長は、「私は直接CVCの方に会ったことはありません」と質問をかわし、CEOを務めるゴスパー氏へその回答を委ねた。これに対しゴスパー氏は、「この件については、まだ細かい話をする段階にはありません。ワールドラグビーはCVCに限らず、多くの投資家の皆さんたちと協議を進めています」と述べ、さらに質問をかわして会見は終了した。
多くの意味で、史上初というキーワードが並ぶ今大会。世界中のラグビーファンたちの注目も、前回大会をはるかに上回る規模となることは間違いないとされる。史上初、一生に一度と言われるこの大会は、20日(金)19時45分に東京スタジアムでキックオフ。日本代表×ロシア代表戦で、幕を開ける。