ラストワンプレー。対する大東大より少人数だった日大が、1年生WTBのナサニエル・トゥポウの勝ち越しトライなどで40-33と勝ち越し。加盟する関東大学リーグ戦1部での開幕3連勝を決めた。
昨季8チーム5位の日大は、同4位の法大を34-12、同3位の流経大を34-28と下していた。同2位の大東大を迎えたこの日も、ジェットコースターのような展開のゲームを制した。
前半8分までに0-12と出鼻をくじかれながら、時間を重ねるごとに微修正。長所のスクラムでも徐々に意図通りの押し込みを披露し、連続攻撃中の接点周辺で相手の反則を誘う。敵陣ゴール前ではFWが局地戦を仕掛け、後半33分には33-19と勝利に近づいた。
ところが直後のキックオフ時の攻防で相手に得点機を与え、36分には自陣ゴール前での攻防でアウトサイドCTBのフレイザー・クワークが反則。一時退場処分を受けると同時に、ペナルティトライを喫して33-26と迫られる。続く39分にはタイスコアとされた。
沈滞ムードを破ったのは、トゥポウの劇的なランだった。
後半ロスタイム43分頃、敵陣10メートルエリア右でのスクラムからボールが左へつながると、SOの吉田橋蔵が左タッチライン際にキックパス。身長182センチ、体重102キロのフィジアンは、「突然、来た!」と驚きながらも余裕を持って捕球。カバーに回ってきたタックラーに向かって直進しつつ、コンタクトの瞬間にハンドオフとスワーブを繰り出す。抜く。そのままインゴールまで駆け抜けた。
「嬉しかった! 準備もままならないなかでのいきなりの交代出場でしたが、頑張りました」
流経大戦を怪我で欠場したルーキーはこの午後、味方の怪我に伴い前半25分から登場していた。後半開始時のキックオフでは、敵陣深い位置で向こうの蹴り返してきた球をチャージダウンして勢いをつけた。攻めても得意のランを繰り出し、PRの坂本駿介主将にこう言わしめたのだった。
「いい働き、しましたね。助かりました。彼は本当にいいバネを持っている。ありがたいです」
マウントセントメリーズ、ナウソリ小、マリストブラザーズで楕円球を追ってきた。50メートル走6秒3という俊足と柔らかいフットワーク、強烈なタックルが魅力で、18歳以下フィジー代表に選ばれた実績を持つ。CTBもこなせる。
弟や妹のいる家族を支えるべく日大の留学生として来日し、この国でチャンスをつかみたいと誓う。極東での寮生活も「楽しんでいます」と本人。中野克己監督によれば「まじめで日本語も自分でどんどん習得している。きれい好きで、寮ではひとりでベッドの掃除をしています」とのこと。練習ではスパイクを履かかない。理由はシンプルだ。
「足が痛くなるから」
リーグ戦では今季ここまで2試合に出て2トライをマーク。平時はアップシューズで味方選手を抜き去り、公式戦では水色のスパイクで相手を苦しめる南国の若者は、11月3日の次戦を見据える。今度は東京ガスグラウンドで、前年度1位の東海大と全勝対決をおこなう。