103-0。「ディテール(細部)」に焦点を当てた明大が日体大を圧倒。加盟する関東大学対抗戦Aを開幕3連勝とした。
9月15日、会場の栃木・足利市総合運動公園陸上競技場は最高気温30度という猛暑に見舞われていた。勝った田中澄憲監督は、西日のもとでノーサイドを迎え「暑いなか最後まで選手たちが意識してやり切ってくれた」と総括。この日はご当地選手だった國學院栃木高出身の武井日向も、前節の成蹊大戦が139-5だったのを受けこう話した。
「80分間、集中力を切らさずにシャットアウトできた。最後まで声を出し続けていて、成蹊大戦からの全員の成長を感じられました」
2年連続での大学日本一が期待される明大は、序盤からエリアを問わずボールキープを意識。大外で数的優位を作れば、短く手渡しするハンズパス、選手の手前を通過させるカットパスを、防御の出方に応じて使い分ける。
コンタクトをすれば地面で身体を回転させ、相手のボール奪取を制御。ミスで日体大にボールを与えても、直後の勤勉な防御でターンオーバーを決めた。相手のラインアウト時にスティールを決めたLOの片倉康瑛は、指揮官が示した「ディテールにフォーカス」というテーマをこう解釈していた。
「すべての細かいこと(を意識する)。ブレイクダウン(接点)で(絡みつく相手を)最後まで倒し切るスキル。ボールキャリアのグラウンドワーク(倒されたランナーによる適切なボール供給)。タックルで倒し切ること。ディフェンスラインが(攻防の境界線より)50センチ下がること。…あと、一番は、イーブンボールです。(相手の)ミスしたボールを拾うことです」
14-0で迎えた前半21分頃には、FBの雲山弘貴が自陣深い位置からロングキック。自ら弾道を追って、捕球した相手の蹴り返しに手を当てた。続けて明大は、敵陣22メートル線付近での相手ボールラインアウト後の攻防で攻守逆転。左から右へ展開するなか、CTBの森勇登は自ら球をさばいた方向へ回り込む。突破を図った雲山から再度パスを受け取り、さらに右へつなぐ。WTBの矢野湧大のトライなどで21-0とリードを広げた。
ハードワーカーの森はその後もミスボールへの反応や緩急自在のステップで際立ち、前半36分、同ロスタイム46分と続けてインゴールを割った。
SOの山沢京平は、時間を重ねるごとに左右へのパス、防御の背後への短いキックなどでスコアを演出。ランでも際立ち、対するCTBのクリスチャン・ラウイのタックルへ当たる際も抜群のボディバランスとハンドオフの技術で芯から逃れた。
これが、ラグビーワールドカップ日本大会開催による中断前最後の試合となった。以後、約1か月半、主力組の公式戦はおこなわれないなか、司令塔の山沢は「ラグビーの理解度、スキル、フィジカル……。一人ひとりがレベルを高める」と先を見据えた。
「前半戦で出た勢いは保って、課題をしっかりつぶす。それで、後半戦で新しい課題が出るように……というイメージです。去年と違って追われる立場。相手がどうこうよりも、一日、一日、自分たちにベクトルを向け、そのうえで相手がどうしてくるか(を注意する)」
田中監督は、「ワールドカップ期間中はジュニアのゲームもある」。控え選手の出るジュニア選手権を通して「チーム全体のレベルアップをしていきたい」とし、主力組へは天理大などとの練習試合を組んだ。
「(トレーニングでは)ゲームで必要とされるものに着手したい。今日ディテールにこだわった理由は、自分たちにフォーカスを当ててラグビーの本質的な部分をレベルアップさせないと2連覇は見えてこないから。そこにはこだわる」
緻密に設計された大方針のもと、新シーズンからSOを担う山沢は「試合のなかで、時間帯、点差、相手や自分たちの疲れ具合を見てゲームの運び方を調整するところ(が課題)」と深い洞察と思慮に基づくプレー選択を極めたいとする。
空中戦の軸となる片倉も「ラインアウトではプレッシャーがあると球が遅れて捕りづらかったりした。(場合によっては)それでパニックになる。練習からもっと試合を想定してやりたいです」と続ける。個々がチーム強化に当事者意識を持つなか、船頭役の武井は非レギュラー組も巻き込み練習を盛り上げたいと言った。
「日頃の練習に波があったらいけない。4年生がそれを態度で示せるかが大事です。それはAチーム(主力)かどうかに関係なく、です。チーム一丸となってやっていきたいです」
シーズン再開後の初戦は11月4日、東京・上柚木公園陸上競技場で青山学院大とおこなう。以後は昨季の対抗戦での序列で明大(4位扱い)より上にいた慶大(3位扱い)、帝京大(1位扱い)、早大(2位扱い)と順に戦う。