ラグビーリパブリック

日本代表の徳永、選手主体の分析に自信。6日は南アフリカ代表戦。

2019.09.05

写真中央が徳永祥尭。8月下旬の網走合宿時(撮影:向 風見也)

 骨格の大きな外国人に身体の芯をぶつける。その勢いで前進したり、相手をあおむけにしたり。ゲームが終われば淡々とした口ぶりで、芝の上で起こったこと、準備段階で意識したことなどを具体的に紐解く。

 ラグビー日本代表の徳永祥尭は、強さと賢さを兼備する27歳。身長185センチ、体重100キロで、FW第3列を主戦場とする。東芝入社2年目の2016年には、7人制日本代表としてリオデジャネイロオリンピックで4位入賞。間もなく15人制の日本代表へも白羽の矢が立てられ、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチのもとアピールを重ねてきた。

 8月29日には、激しいメンバー争いを経てワールドカップ日本大会のメンバーに登録された。9月20日の開幕を控え、こう言葉を選ぶ。

「オリンピックの時は、僕個人で言えば5か月くらいしか7人制をしていないなか、同じポジションの選手がけがをしたこともあって(メンバーに)入れたところがある。でも今回は、運も味方しているとは思いますけど、オリンピックの時以上に実力の割合の方が大きいと感じている。シンプルに嬉しいですね。最初からラグビーの目標がワールドカップということはなかったですが、とりあえずうまくなりたいですし、機会を与えられたのならばそこに入りたいと思うのは当たり前です。負けたくない気持ち、じゃないですが」
 
 9月6日には、埼玉・熊谷ラグビー場で南アフリカ代表とぶつかる。本番前最後の相手は、近年急成長して優勝候補の一角となった大型チームだ。FWが8対8で組み合うスクラム、空中戦のラインアウトといったセットプレーを強みとする。立ったボール保持者を軸に固まるモールでも、パワー勝負に持ち込む。

 徳永は当日、日本代表のリザーブ入り。「ラインアウト、スクラムでプレッシャーをかけていきたい」と、向こうの強みを消しにかかる。「相手は高さと重さがある」として、ラインアウトでは捕球役の飛ぶスピード、捕球役を支えて持ち上げるスピードといった「グラウンドスピード」で対抗したい。

 強気の姿勢を打ち出すのは、分析の深さに自信があるからだ。

「(試合に)出ないメンバーが積極的にリードして、相手のラインアウトの特徴を分析。それに対し、出る人たちは準備する。出る人、出ない人の役割があって、出る人はアタックプランの遂行を宿題として何回も映像見て取り組んでいますし、出ない人は出る人が最後の準備を出るようなアシストをしています」

 かような働きは、パシフィック・ネーションズカップへ加わった今年7月下旬頃から顕著になったという。

「基本的に、浜野俊平(分析)が全部のデータを持ってきてくれる。そこで、いままでなら慎さん(長谷川慎スクラムコーチ)が『相手のラインアウトの特徴はこういうのがある』と話したのを受けて、ドライブしていく(選手同士で話し合う)感じが多かった。でもいまは、『4メン、5メン、6メン(ラインに並ぶ人数のこと)にはこういう動きがあって、スペシャルムーブはこうで……』というのを自分たち(選手)でするようになったと思います」

 モールへの防御は、直近のキャンプでも繰り返し確認済み。「アンバランスを起こさないのが一番、鍵になる」と、その肝を語る。塊の右側からのみ押し返そうとすれば、左側にできた防御の隙間から相手の進撃を許してしまう。モールで押し込まれ、苦し紛れに反則を犯せばさらに自陣深い位置まで攻め込まれる。原理原則に沿った守りで対抗したい。

「相手と正対して止めるのが大事。体重のバランス、重心のズレを感じるのが大事です」

 本番前の状態をチェックする重要な一戦。日本代表陣営は、セットプレーそのものの回数を減らす戦いを目指している。一方でFW陣には、相手の強みへ立ち向かう覚悟もある。プレーヤーズサイドの主体性を実感する徳永も、その1人だ。

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