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「ジウォンは簡単でないことをやり遂げた。応援します!」 韓国ラグビー界

2019.09.04

メディアの取材に応える具智元(グ・ジウォン)。「スクラム、まじめなプレーを見て欲しい」(撮影:見明亨徳)

 9月6日、対南アフリカ代表戦、出場する日本代表メンバーが発表された。
 プロップ3番のジャージーを着るのは具智元(グ・ジウォン)。4日、都内のホテルで具は臨む気持ちを語った。
「自分のスクラム、まじめに取り組む姿を見て欲しい」
 7月、右手甲を練習中に骨折し、パシフィック・ネーションズカップのスコッドからは外れた。南ア戦は、いきなり復帰本番となる。「2015年、日本が南アフリカに勝った試合を見て代表になりたい気持ちが強くなった」。それだけに憧れの対戦。試合では「後ろの5人の押しも利用したスクラムで勝負したい」。

 韓国から日本に留学した選手でワールドカップ日本代表となるのは、昨年度で近鉄ライナーズを引退したSH金哲元さん(キム・チョルウォン)に次ぎ2人目だ。金氏は2007年大会でジャパンのジャージーに袖を通した。
 今回の次男の代表入り朗報を韓国の実家で聞いた両親、具東春さん(トンチュン)、李銀淑さん(イ・ウンスク)は、快挙に「応援していただいた皆さんに感謝します」と笑顔だ。

「カムサハムニダ!」。両親は感謝の気持ちでいっぱいだ(撮影:見明亨徳)

 具は兄、智允(ジユン/ホンダヒート SO/CTB)と中学時代からニュージーランド、大分県佐伯市鶴谷中学、日本文理大附属高、拓殖大、ホンダと同じラグビー人生を歩んだ。夢をつかんだ子どもだが、銀淑さんは「子どもと離れて暮らすのが寂しくて何度、泣いたか。今でも寂しい」と心を打ち明ける。
 父・東春さんは1980年代、韓国代表プロップとして日本と熾烈な戦いを繰り広げた先輩。延世大から韓国電力、そしてホンダヒートの前身、本田技研鈴鹿でプレーした。
 8月31日、韓国では「アジアセブンズシリーズ韓国大会」が開催された。多くの韓国ラグビー関係者が訪れていた。会場で、父は子どもへの祝福を受けていた。

韓国男子15人制、7人制代表の梁永勲コーチ。「ホンダの先輩としても嬉しい」(撮影:見明亨徳)

 韓国男子15人制、7人制代表の梁永勲コーチ(ヤン・ヨンフン)はホンダでSHとして10年間選手生活を送り、2017年春に帰国、指導者となった。「ジウォンの代表入りは大変うれしいです。ホンダの先輩として韓国から日本へ行った人間として。ぜひともワールドカップでは結果を残して欲しい」と声援を送る。
 セブンズ大会を家族で観戦していたパナソニック ワイルドナイツのラインアウトコーチ、劉永男(ユ・ヨンナム)氏も絶賛する。トップリーグで活躍し三洋-パナソニックの第3列レギュラー、日本代表とも幾度となく対戦してきた。世界のレベルを知る。実力不足で志半ばで日本を去った韓国人先輩や後輩を多く見てきた。「日本でラグビー人生を送るためにやって来た。努力した。代表になることは簡単ではない。それをやり遂げたジウォンは立派です。いい試合を見たい」。

李明根・延世大コーチ。「ワールドカップ出場はラグビー選手の夢」(撮影:見明亨徳)

 東春さんの母校、延世大は9月7日に永遠のライバル高麗大と伝統の定期戦を迎える。最後の仕上げを大学グラウンドで3日、おこなっていた。
 BKコーチは李明根さん(イ・ミョングン)。李コーチもワールド、クボタスピアーズのSHだった。現役時代は梁代表コーチと韓国9番争いを繰り広げた仲。具について「先輩の子どもさん、本当に嬉しい。ラグビー選手の憧れはワールドカップに出ること。韓国とか日本とか関係ないですよ」。

 手のケガでチームを離れ調整していた具。ホンダのグラウンドでフィットネス中心に体を鍛えていた。力強い味方はお父さん。鈴鹿にやってきて練習を手伝った。グラウンドが使えない時は「近所の公園で二人、練習していましたよ」と東春さんは話す。きっと鈴鹿のラグビーファンは代表が普通に公園で汗を流すジウォンに驚いたことだろう。

 韓国北部にある公の施設内でフライドチキン店を経営する両親。南ア戦は来日中だが、仕事の関係で兄ジユンと一緒に鈴鹿でテレビ応援する。ワールドカップの試合は、もちろん来日して観戦予定。「常に周りの人たちに感謝の気持ちを伝えるように。良いことがあった時ほど電話をして」。父が子どもに言い続ける規律だ。具は中学、高校、大学でお世話になった方へ今も連絡することを守っている。「引退したら佐伯に住みたい」と漏らす。お世話になった方へプレーで感謝を届けたい。

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