ラグビーリパブリック

ラグビーワールドカップに挑む日本代表 全31人選手名鑑 その1 【PR・HO編】

2019.08.29

稲垣 啓太 (PR)
「タイトファイブのまとめ役」

生年月日:1990年6月2日生まれ 
年齢:29歳
出身地:新潟県出身
身長/体重:186㎝/116㎏
現所属クラブ:パナソニック ワイルドナイツ

 国際級の体格にスクラムの安定感とBK並みの機動力、ハンドリングスキルを兼ね備えた日本有数のルースヘッドPR。120kg近い巨漢にして均整のとれたシルエットはストイックな取り組みの賜物で、コンディショニングに対する意識の高さは、代表合宿に帯同する管理栄養士も感心するほど。体脂肪率は10%前後と、フロントローとしては驚異的な数字を誇る。
 最大の持ち味は、圧巻の運動量だ。スクラムで恐るべき重労働をこなしながら、ルースプレーでもタックルに、ボールキャリーに、オーバーにと、骨惜しみすることなく意欲的にプレーに絡む。倒れてから起き上がるスピード、次の局面へ向かう反応の早さは、近代型PRの理想像を体現していると言ってもいい。
 6月の宮崎合宿からは、ワールドカップで海外のパワフルな相手に対抗すべく、過酷なトレーニングをこなしながら116kgから3キロの増量に取り組んでいる。朝昼晩の3食に練習後の補食や夜食で栄養を補給し、練習中のわずかな合間にもすばやくエネルギーを摂取できるジェルを飲むという徹底ぶり。本番では、さらにスケールアップした肉体を披露してくれるだろう。
 25歳で臨んだ前回大会は全4試合に出場(うち3戦は先発)。現在の日本代表では9人のリーダーグループのひとりでもあり、タイトファイブのまとめ役を担う。充実期を迎えた稲垣啓太のチームにおける存在感は、ますます大きくなるばかりだ。

具 智元 (PR)
「日本の3番が似合う好漢」

生年月日:1994年7月20日生まれ 
年齢:24歳
出身地:韓国出身
身長/体重:183㎝/122㎏
現所属クラブ:Honda HEAT

 人柄を表すような純朴な風貌で、愛称は「ぐーくん」。ファンにも仲間にもかわいがられる好漢は、ジャパンのスクラムの鍵を握る男だ。元韓国代表のPR東春氏を父に持ち、日本文理大附高時代から「必ず日本代表になる逸材」と才能を評価されてきた。2014年には大学2年で代表合宿に練習生として召集されたほど。その後も順調に成長を続け、2017年秋のトンガ戦で待望の初キャップを獲得、たちまちジャパンの右PRに定着した。
 今春はケガで出遅れたものの、5月のウルフパックのゲームで復帰し、相変わらずのスクラムを披露した。「ロシア戦から全試合に3番を着て出たい」。来日した時からの夢だった舞台にかける思いは強い。

木津 悠輔 (PR)
「夢を現実にするシンデレラボーイ」

生年月日:1995年12月2日生まれ  
年齢:23歳
出身地:大分県出身
身長/体重:178㎝/113㎏
現所属クラブ:トヨタ自動車ヴェルブリッツ

 大分県の由布高校時代は主にNO8でプレー。天理大入学後、PRに転向して潜在力を大きく開花させた。バックロー出身らしくフィールドプレーに定評があり、今やスクラムの安定感でも国内屈指の右PRだ。
 8人選出された現日本代表のPR陣の中でただひとりのノンキャップ。今年2月のトップリーグ選抜対クレルモン・オーヴェルニュの親善試合でのプレーぶりが認められて代表候補合宿に招集され、春のウルフパックでもジョセフHCが名指しで「収穫」と称える活躍を見せ代表入りを果たした。高校時代は県大会で100点ゲームの敗戦を喫したこともある無名校の星がワールドカップの舞台に立てば、これ以上ないシンデレラストーリーだ。

中島 イシレリ (PR)
「破壊力抜群の特攻隊長」

生年月日:1989年7月9日生まれ 
年齢:29歳
出身地:トンガ出身(日本国籍)
身長/体重:186㎝/120㎏
現所属クラブ:神戸製鋼コベルコスティーラーズ

圧巻のパワーを誇るフィジカルの鬼。流経大、NEC、神戸製鋼とLOやNO8で突破役を務め、初キャップを獲得した昨秋のテストシリーズもバックファイブでの出場だったが、ジェイミー・ジョセフHCの「代表メンバーに入るには左PR」との勧めで今年1月からFW最前列へと持ち場を移した。PRでプレーするのは高校時代以来ながら、長谷川慎コーチの熱心な指導と適応力の高さで驚異的な成長を遂げた。
 昨季のトップリーグではNO8でベスト15に選ばれるなど、もとよりボールキャリーの破壊力は国内随一。スクラムの計算さえ立てば、ジャパンにとって強力なオプションとなりえる。29歳でチャレンジする新ポジションを、天職とできるか。

ヴァル アサエリ愛 (PR)
「インパクト抜群のボールキャリー」

生年月日:1989年5月7日生まれ 
年齢:30歳
出身地:トンガ出身(日本国籍)
身長/体重:187㎝/115㎏
現所属クラブ:パナソニック ワイルドナイツ

 トンガから留学生として来日し、正智深谷高、埼工大ではバックローでプレー。パナソニックでも当初は3列だったが、大胸筋断裂で1シーズンを棒に振ったことをきっかけに、一度は断ったPR転向を決意した。それからわずか2年後の2017年11月に初キャップを獲得できたのは、パナソニックの相馬朋和ヘッドコーチが太鼓判を押す恵まれた身体能力と、たゆまぬハードワークの成果だろう。
 2014年に日本国籍を取得。その際、妻の名前から「愛」の一文字をもらった。インパクト抜群のボールキャリーは、現在の代表PR陣の中でも際立つ破壊力を誇る。課題とされてきたスクラムの安定感を向上させ、ポジション争いを勝ち抜けるか。

堀江 翔太 (HO)
「ワールドクラスのマルチフッカー」

生年月日:1986年1月21日生まれ 
年齢:33歳
出身地:大阪府出身
身長/体重:180㎝/104㎏
現所属クラブ:パナソニック ワイルドナイツ

 2番を背負いながら、プレーの幅はフッカーというポジションの枠に収まらない。最前線でスクラムを牽引、ラインアウトのスローワーを務めつつ、切れ味鋭いステップで相手をかわし、多彩なパスを放って、時にはキックまで繰り出す。ワールドクラスのマルチプレーヤー、それが堀江翔太だ。
 2009年11月のカナダ戦で23歳にして初キャップを獲得。以来、日本代表の揺るがぬ主軸となった。最大の転機は、2011年のラグビーワールドカップニュージーランド大会。大きな期待を背負いながら3敗1分けの結果に終わり、海外挑戦を決意する。
 翌2012年、ニュージーランドの強豪、オタゴ州代表に選出されると、2013年にはオーストラリアのレベルズ入りを果たして日本人スーパーラグビープレーヤーの扉を開いた。厳しい競争を勝ち抜いて国際経験を重ね、一段とたくましさを増して臨んだ2015年ワールドカップでは、全4試合に先発。歴史的快進撃の原動力となり、見事に4年前の無念を晴らした。
 2016年はスーパーラグビー参戦1年目のサンウルブズでスキッパーを担い、荒海にこぎ出したチームを懸命に引っ張った。ライオンズとの開幕戦、記念すべきファーストトライを挙げたのは、きっと偶然ではない。7連敗で迎えた第9節のホーム秩父宮でのジャガーズ戦、初勝利を告げるホイッスルにあふれる涙をこらえきれなかったシーンは、サンウルブズの歴史におけるベスト・モーメントのひとつだ。
 2016年から2017年春までは代表のキャプテンも務め、バトンタッチした今も、FWのまとめ役として大切な役割を託される。一方、重責から解き放たれたことでプレーはさらに迫力を増した印象。昨春のイタリアとの第1テストではライン際でSO田村優のキックパスを呼び込み、ジャンプキャッチからそのままパスをつないでWTBレメキ ロマノ ラヴァのトライを導くスーパープレーを見せた。
 昨年9月に右足の舟状骨の疲労骨折が判明し、11月に手術。当初は復帰まで半年ほどかかる可能性もあると危ぶまれていたが、順調な回復ぶりでこの4月にはウルフパックで無事実戦復帰を果たした。その後サンウルブズでも3試合に出場(うち2試合に先発)して好パフォーマンスを披露しており、コンディションに不安はない。
「すべてをかけたい」と語ってきたワールドカップ日本大会の開幕まで、あと1か月弱。ジャパンに、頼もしい男が帰ってきた。

坂手 淳史 (HO)
「エネルギーあふれる元気者」

生年月日:1993年6月21日生まれ 
年齢:26歳
出身地:京都府出身
身長/体重:180㎝/104㎏
現所属クラブ:パナソニック ワイルドナイツ

 攻守に渡る意欲的なプレーでチームにエナジーをもたらす元気者だ。とりわけ目を引くのは、迷いのない弾丸タックル。トップスピードで突き刺さる勇敢なビッグヒットは、チームメイトを力強く奮い立たせる。昨季のトップリーグでは1試合平均9本弱のタックル数で、85%の成功率を残した。
 帝京大4年時は主将を務め、大学選手権7連覇を達成。パナソニックに加入した2016年春の韓国戦で代表初キャップを獲得した。2017年からはサンウルブズでもプレーし、これまでスーパーラグビー17試合に出場と、順調にキャリアを重ねている。
 昨秋はNZ戦、イングランド戦にも先発。その経験を糧に、大学、社会人の先輩である堀江翔太越えを期す。

北出 卓也 (HO)
「ラグビー頭脳優秀なタックラー」

生年月日:1992年9月14日生まれ 
年齢:26歳
出身地:京都府出身
身長/体重:180㎝/102㎏
現所属クラブ:サントリーサンゴリアス

 ジャパンおよびサンウルブズでの出場歴がない中、サントリーでのパフォーマンスを認められてRWCTS入り。合宿やウルフパックのゲームで実力を証明し、日本代表入りをつかんだ。
 セールスポイントはバックロー並みの運動量と堅実なタックル。昨季のトップリーグでは10試合で約93%という高いタックル成功率を残した。ストイックな自己管理で作り上げた180cm、102kgの引き締まった身体は、体脂肪率1桁台を維持する。
 ラグビーナレッジが高く、クレバーなプレーぶりにも周囲の評価は高い。布巻ら1992年生まれ世代の1人で、高校日本代表の正HOだったが、U20代表入りは逃した。満を辞して、桜のジャージーに袖を通す。

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