ラグビーリパブリック

ロンドンから東京へ自転車で。2人のラグビーマンの、クレイジーでシリアスな挑戦

2019.08.27

ウズベキスタン



 2018年1月のある日。ナショナルリーグ・ワン(プレミアシップの2つ下。イングランドラグビーの3部リーグ)の、ビショップス・ストートフォードRFC所属の二人のラグビーマンが、ビールの勢いで、突拍子もない話を始めた。
「ロンドンから東京まで、自転車に乗ってワールドカップを観に行こう」
 ふたりの若者が酒の勢いで始めたこの話しは、あっという間に周囲の知人・友人に広がり、1か月もすると、もはや後戻りなど出来ない程に多くの人からの期待を背負ってしまった。

 2019年の3月にロンドンを発った。ワールドカップが始まる9月に日本に到着する予定。約9600キロの壮大な旅の計画だ。
 挑戦に挑むのは、それまでスポーツビジネス・マネジメント会社に勤めていた、ジョージ・カレンさんと、英国海軍で士官を勤めていたベンジャミン・クックさん。ポジションはそれぞれ、スタンドオフとフランカー。ともに26歳でこの旅に挑戦する。

 1年以上かけて入念に計画されたこの旅は、転職エージェント大手のロバート・ウォルターズをはじめ、複数のスポンサー企業のサポートを獲得した。
 同時にモーベンバー(男性のみの病気、前立腺がんの研究や患者の治療に資金が送られるチャリティ)と、ラグビーの練習中に心不全で亡くなったこの2人の友人への思いを込めた基金(若手スポーツ選手の心不全と、メンタルヘルス問題をサポート)への募金宣伝活動もおこなう。こうした活動は英国の大手メディアにも紹介され、2人はプレミアリーグ所属の、ハーレクインズ主催のチャリティイベントにも登場している。
(募金ページ:https://uk.virginmoneygiving.com/fundraiser-display/showROFundraiserPage?userUrl=TheHairyHandlebars&isTeam=true

キルギスタン。左がジョージ・カレン、右がベンジャミン・クック

タジキスタン



 この募金活動への宣伝も兼ねた日記の公開も本格的で、主要ソーシャルメディアプラットフォームに写真と動画をアップロードしながら、旅を続けている。突拍子もない挑戦ながらも、とにかく何もかも本格的におこなうこの2人。旅日記コンテンツを作成するためにドローンを持参し、撮影された映像はロンドンのスポンサー企業が編集と音楽の挿入を行ってからユーチューブ上で公開するほど本格的だ。

 8月下旬現在、18か国目である中国を走るふたり。ここに来るまでには当然、様々なエピソードがあったという。
 通過するはずだったウズベキスタンのブハラという街では、地元の人たちの誘いにより、見知らぬカップルの2日間におよぶ壮大な結婚式に出席することに。タジキスタンでは、標高4000メートルにあるパミール・ハイウェイを、キャンプをしながら4日間走り続けた。空気の薄い環境だけに、自転車に乗る時はあまり無理をしないように心がけていたが、キャンプ中の寝苦しさが辛かったと言う。
 道中の食事は自炊をする事こともあれば、街の大衆食堂で安く腹を満たすこともある。言葉の壁もあり、いったい何の肉だか分からないまま頬張ることも。地図はスマートフォンのアプリを使っている。しかし、中央アジア以降、何日間も一本道をひた走ることが多く、いつも地図が必要という訳ではないという。

 日本には、9月14日に大阪から入る予定で、そこから自転車で同22日に東京に到着する予定だ。その2日後にはスポンサーであるロバート・ウォルターズ社の東京オフィスでの歓迎会に出席し、その後は「普通の」日本観光を楽しむ。10月19日、20日に大分でおこなわれるワールドカップ準々決勝を観戦予定だ。
 ラグビーへの情熱と冒険心から始まり、募金への使命感と周囲の期待に押されて、準備段階から全力で取り組んだこの挑戦。東京へ到着したらゆっくりと観光を楽しみ、準々決勝に進出するであろうイングランド代表を応援するのを何よりも楽しみにしている。


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ウズベキスタンのサマルカンド

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