ラグビーリパブリック

名物指導者が認めた才能。明大・雲山弘貴に求められる「欲」。

2019.08.18

明治大学2年生の雲山弘貴。報徳学園出身(撮影:長岡洋幸)

 日本代表のコーチングコーディネーターとして2015年のワールドカップ・イングランド大会で3勝に貢献した沢木敬介・サントリー前監督に、「将来、ジャパンになりますよ」と期待される。

 雲山弘貴。明大2年のFBだ。身長186センチ、体重88キロと国際基準にも近いサイズを誇り、持ち前の走力で小さなスペースでも切り裂く。昨季大学日本一に輝いたクラブで、今春から定位置をつかんでいる。

 2016、17年度のトップリーグを制した沢木は、ファンにおなじみのからりとした口調で新星の凄みを語った。

「相手を抜く時のタイミング、感覚で、凄くいいものを持っています。案外、パスもできるんですよ。相手と接近した時にもどこにスペースが空いているかを見つけ、判断できる。この感覚があるのは凄い」

 2人の邂逅(かいこう)は今年、実現する。サントリーでチームディレクターだった田中澄憲監督のリクエストを受け、沢木が雲山に流れのなかでのキックの蹴り方を指導。雲山本人は「(蹴る直前は常に)同じ持ち方にすれば、ミスキックがなくなる(と教わった)」と感謝した。

「意識しているんですが、まだちょっとずれちゃう。練習していきたいです」

 8月11日、東京・明大八幡山グラウンド。流経大との練習試合で先発し、メンバーを大きく入れ替えるハーフタイムまでグラウンドに立った。自陣深い位置から防御の穴を突いたり、直線的な走りで対面のタックラーをひきつけながら鋭いパスを大外へ放ったり。

 フィジカリティに長けた味方とともに26-10のスコアで前半を終え、最後は61-20で快勝。当の本人は「相手のミスボールに反応してトライにつなげられたことはよかった」と自軍の戦いを振り返りながら、自身のレギュラー抜擢についてはこの調子だった。

「山沢さんが移った。ほんま、そのおかげやと思います」

 昨年まで主戦FBだった山沢京平は今季SOに転向。雲山が空席にはまったのは確か。しかし、周囲の評価が高いのもまた確かなのだ。

 就任2年目の田中監督は、高校ラグビー界の綺羅星が揃う明大での指針を「いい選手が揉まれることで、強い選手になる。これまで、いい選手なだけで終わってしまう人をいっぱい見てきましたので、(明大の選手が)そうならないよういろんな押し引きをしていきたいです」と述べたことがある。

 自身と同じ報徳学園高出身で元高校日本代表の雲山へも、「いいパフォーマンスはしてくれていると思いますが、もっとトップレベルでできるはず」と発破をかけている。沢木のような外部の指導者に会わせるのは、能力の高さを買ったうえでさらなる向上心を持たせようとしたためでもありそうだ。

「欲を持ってやって欲しい。もともと性格的なところ(が理由で)もありますが、まだ少し遠慮している部分もある。殻を破れるか……。破れないといい選手で終わっちゃうので、そうならないように少しずつ上げていきたいなと」

 当の本人は「ホンマですか? そこまでいい選手じゃないです」。指揮官から常に「強気なプレーをしてこい」と言われる20歳は、8月31日の関東大学対抗戦A初戦(長野・菅平サニアパーク/vs 筑波大)を見据える。

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