ラグビーリパブリック

W杯メンバー入りへ不退転の覚悟で臨む者も。日本代表、PNC最後のアメリカ戦に集中。

2019.08.08

フィジー遠征中の日本代表。アメリカ戦へ向け会見をおこなったリーチ マイケル主将(撮影:森本優子)

 フィジーでおこなわれるパシフィック・ネーションズカップ(PNC)最終節のアメリカ戦を2日後に控えた日本代表は8日、ナンディからバスで試合地のスヴァに移動。夕方にホテルでトニー・ブラウンHC(ヘッドコーチ)代行、FLリーチ マイケル主将、LOヘル ウヴェ、FLピーター・ラブスカフニ、NO8ツイ ヘンドリック、SH流大、CTBウィリアム・トゥポウが取材に応じた。

 カナダ、サモアを下して2連勝のアメリカは、神戸製鋼で1シーズン指揮を執った南アフリカ出身のギャリー・ゴールド氏がHCを務めている。ブラウンHC代行は相手を「身体が大きくてフィジカルで、ラインアウトからモールを組んで押してくるなど、南アに似たスタイル」と警戒。
 今大会初先発の4人(LOヘル、NO8ツイ、SH田中史朗、FB山中亮平)については、「ポジション争いにプレッシャーをかけるチャンス」と奮起を促した。昨年11月3日のオールブラックス(NZ)戦以来のテストマッチとなる山中に関しては「(オールブラックスの)ボーデン・バレットをFBで起用するようなもの」と表現する。「(トゥポウ、松島幸太朗とは)違うタイプのFB。ここ数年、10番、12番、15番でプレーするのを見てきたが、そこで培ったスキルを発揮して、田村(SO田村優)の力になってほしい」と期待を寄せた。

 トンプソン ルーク、ヴィンピー・ファンデルヴァルト、ジェームス・ムーアとLO陣がこれまでの試合で好パフォーマンスを見せる中、5番を背負うヘルは「先発に入って興奮している。ボールキャリーをしっかりすれば(ポジション争いに)生き残れる」。こちらも層の厚い3列でPNC初先発の機会を得たツイは、出番のなかった3週間、自らのフィジカルを上げていた。「宮崎合宿はエディー(ジョーンズ前HC)の時よりきつく、これまで自分が経験したことのないものだった」と振り返り、アメリカ戦を「ジェイミー(ジョセフHC)への最後のアピールだと思う」と、ワールドカップメンバー入りへ向け、不退転の覚悟で臨む。

 PNC初戦のフィジー戦で右膝を痛めて負傷退場したラブスカフニは先発に復帰。「負傷した時はまずいと思ったが、軽度で済んだ」。ブラウンHC代行と同様、ラインアウトモールをポイントに挙げた。フィジー戦ではラインアウトモールから2トライを喫している。「初めて露わになったことではない。取り組んできたけれど、成果が出なかったということ。今回はいいチャレンジになる」と自信をのぞかせた。

 最後に姿を見せたのはリーチ主将。試合の日は、現在の家があるナトゥアレヴと母の実家の村から、バスで50人ほどが応援に来るという。常々、次回以降のワールドカップについても意欲的な姿勢を見せてきたが、この日は「フィジーでプレーする(代表の)最後の試合になると思う」と発言。「今後は、(代表に)選ばれるかどうかわからないし」とセンシティブな一面をのぞかせた。

 ラインアウトが攻撃の起点となるアメリカ。今回、メンバー外の徳永祥尭が相手のラインアウトの全部のサインを分析。練習では、自ら仮想アメリカとして相手を務めた。「ライアンアウト対策はベストな準備ができた」とリーチ。「アメリカ戦はディフェンスがメインになってくる。スクラム、モールからの力強いランナーをどれだけ止められるか」。リーダーシップグループの間では、後半20分のゲームコントロールが課題として挙がったという。
 
 アメリカ戦に勝てば大会優勝が決まるが、どの選手からも「優勝を目指す」という言葉は聞かれず(8年前、PNCで優勝したものの、ワールドカップでは1分け3敗)。代わりに出てきたセリフは「相手どうこうより、まず自分たちにフォーカスする」。チームはPNC最後の試合でベストパフォーマンスをすることを、ワールドカップに向けてのベンチマークととらえる。

 母親の死去にともないトンガ戦前にNZに帰国していたジョセフHCは、9日夜に合流する。アメリカ戦は10日、日本時間13時35分キックオフ。

W杯に向けて日本国内だけでなく、参加国でもボルテージが上がってきた。
フィジーの首都スヴァの街中には、ハイネケンの看板が(撮影:森本優子)