国内トップリーグのカップ戦は8月4日に準決勝があり、大阪・ヤンマーフィールド長居では前年度リーグ王者の神戸製鋼が同準優勝のサントリーに32-26で勝利。試合後の話題は、日本ラグビー協会が2021年の発足を目指す新プロリーグ構想にも及んだ。
ワールドカップ日本大会を9月に控え、カップ戦には下部リーグ加盟チームを含む計24チームが各国代表勢などを欠くなかで参加。4つあるプールの各1位がプレーオフに進み、大阪では神戸製鋼とサントリーが攻撃合戦を展開する。サントリーのインサイドCTBとして後半から登場の小野晃征は「ファイナルラグビーだからといって(手)堅くならず、お互いボールを動かすスタイルだったのはよかった」と話した。
神戸製鋼は飛び出す相手防御をいなしたり、敵陣ゴール前で得たラインアウトからモールを押し込んだりして前半を24-11とリードして終える。27-19と8点差に詰められていた後半36分には、敵陣22メートル線付近左の接点でターンオーバーを決めるや右に展開。陣形の最後尾から攻撃参加したFBの井関信介が大きく走った後、海外出身者が左右にパス交換。WTBのアンダーソン フレイザーのトライで32-19とリードを広げた。
対するサントリーは鋭いキックチェイスや速いテンポの揺さぶりを貫き試合終盤まで粘ったが、相手のシンビンで数的優位を作っていた時間帯に得点機を逸するなどし、及ばなかった。
「ファイナルラグビーではチャンス(でスコア)を取らないと勝てない。チャンスはいっぱいあったと思いますけど……残念です。努力は100パーセントでした。だからプレーの精度(が大事)。そこはサントリーのほうが5パーセント、足りないところだったかなと」
元日本代表でもある小野がこう悔やむかたわら、勝った神戸製鋼でSOに入ったアンドリュー・エリス主将は笑顔を浮かべた。
「先週は休息週でしたので何日かオフが設定されていました。選手たちはその間もクラブハウスに訪れ、必要とされる仕事をやりきってくれた。それが再集合時にも活きた。きょうプレーしたメンバーは、昨年の決勝でプレーしたメンバーと同じかと言ったら何人かは違います。若手が上がってきて、新しい波が生まれている。大事にしようとしているレガシーに新たな一歩が刻まれている。お互いに競争しながら、常に練習を楽しくやっています」
ラグビー界は大きく、変わりつつある。ヤマハ発動機前監督の清宮克幸・日本協会副会長は7月28日、都内シンポジウムでプロバスケットボール・Bリーグなどの運営をモデルに新しいプロリーグの設立を目指すと表明。「オリジン12」と名付けたワールドカップ開催都市などの各地で、地域密着を謳うラグビー専業法人の設立を募る。国内企業を母体としたトップリーグについては新リーグ開幕を前に「終了を考えている」とし、既存のトップリーグクラブ保有企業へも転換を求めている。
この件について、ニュージーランド暮らしの長い小野は「実際に動かすためのディテールは何もわからないですが」としながら「前向きなアイデアだと思います」と発言。「まずワールドカップを素晴らしい大会にしてプロリーグ……という流れになれば。世界のエリート選手がトップリーグに所属していて、材料は完璧。ビジネスモデル、ストラクチャーもレベルアップしなくてはいけないですが、どうなるか楽しみ。選手はいいラグビーをするのが仕事」と続けた。
一方、かつてSHとしてニュージーランド代表入りした35歳のエリスは「(新リーグでは)ベテラン選手でもサインをしてもらえるのですか?」とジョークを述べながら、こう応じた。
「いろいろな噂は聞いています。もし新リーグができればエキサイティングですね。トップリーグでも海外の選手やコーチ陣が入って競争率が上がっている。挑戦しなければならない状況になることで、強くなっています。私が思うに、日本人でも世界レベルの選手が増えているように感じます。力強いファンも後押ししてくれるはず」
いずれも所属先への敬意を示しながら、改革の方向性には前向きな反応を示す。親会社に雇用されてきたクラブスタッフからは戸惑う声が漏れるなか、行く末が注目される。