あのときの出来事は、夜起きていた人も、翌朝起きた人も幸せにしてくれました。
2015年9月19日、日本34−32南ア は日本のラグビーファンにとって、永遠の記憶。
「府中12内(ふちゅう・じゅうに・うち)」という言葉を知っていますか。
2015年ワールドカップ、初戦の南アフリカ戦で、日本が後半に見せたBKムーブのコールです。
68分。スコアは22−29のビハインド。
過去、何度、この時間に突き放されて大差の敗北を味わってきたでしょう。強豪国とそれ以外を分ける境界線の時間帯、「あそこまでは、対等にやれたのに」と何度悔しい思いをしてきたことでしょう。
まさに勝負所のラインアウトで、BK陣は「府中12」というサインを選択。その細部に、4年間チームをビルドアップしてきたエディージャパンの真髄が表れました。
実は「府中12」には、「内」と「外」、ふた通りのバリエーションがあったのです。
現地取材のスポーツライター生島淳さんによれば、そのとき「ジャパンはエディーの手を離れていた」。
そして、4年間の軌跡を追ったNHKBSプレミアム「アナザーストーリーズ」で日本代表取材を行ったTVディレクター・中村裕さん曰く、この時間帯のレフリングにまで、日本代表の「準備」は行きとどいていた。
このシチュエーションでこのムーブを選択する。そうした意思統一の確かさはエディーならではの緻密さ。選手の自主性、主体性を煽ることはあっても、決して、選手に主導権を託すことはない。
選手たちは、そんなエディーの試合前までの意向から見事に脱皮し、自分たちのピッチ上の判断を生かしました。
その結果が、68分の五郎丸歩の追撃トライ(G決まって29−29に!)でした。
日本大会開幕まであと51日! 今回のジャパンは、どんな飛躍を見せてくれるでしょうか。
*エディーの「府中12」の意向と、選手たちの思考は下記MOOKに詳しく書かれています。
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[ラグビーワールドカップ]
激闘の軌跡 Vol.3 ジャパン!
目次************
Prologue
土、根、幹、 ◎藤島 大
ジャパン2015の深層
1 証言[9月19日に起きたこと]
内か、外か。
南ア戦勝利、ピッチ上の確信
◎生島 淳[スポーツライター]
2 エディーとジャパンの4年戦争
ラグビー発展途上国と世界トップコーチが、
南ア撃破を成し遂げるまで
◎中村 裕[テレビディレクター]
3 五郎丸歩の仕事
日本代表、ワールドカップ全59トライ
&各チームのことば
Interview 連続出場の戦士たち
1987▶︎91
朽木英次
「GOOD OLD DAYS」 第2回へ周到な準備。根本的な力の重要性も痛感
1987▶︎95▶︎99
桜庭吉彦
「ブランクの充実」 牧歌の第1回から、平尾監督率いる現代ラグビーまで
1991▶︎95▶︎99▶︎03
元木由記雄
「未踏の領域」 4大会出場。追い続けていた答えが見つかったのは、2015年大会
2003▶︎07
箕内拓郎
「ラスト20分の世界」 2大会を率いて感じた強国との差。「日常」を変える必要性
2003▶︎07▶︎11
小野澤宏時
「スーパー・ネガティブ」 プロラグビー選手として、4年サイクルで徹底的に生きた
2011▶︎15
畠山健介
「最高と普通」 トップコーチと、旧態の日本ラグビーとの葛藤。世界が驚いた「必然」へ
ワールドカップ・日本代表の記録
ワールドカップ日本代表
「私的ベストⅩⅤ」&「マイヒーロー」を聞いてみた。
谷口誠/小林深緑郎/藤島大
日本が「BRAVE BLOSSOMS」になった夜◎村上晃一
日本代表ジャージーの歴史
RUGBY WORLD CUP CHRONICLE
2011 ワールドカップ第7回大会
オールブラックス、母国でまた笑う。
2015 ワールドカップ第8回大会
INTERVIEW
パウリアシ・マヌ[2015年大会NZ代表スコッド/PR]
「驚きと誇りの金メダル」
2019 ワールドカップ第9回大会
全日程、会場
第1回大会監督・宮地克実の回想
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